神様project【七曜の女神と幾億の旅跡】

青衣

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第4章【水曜の湖畔《時雨》】

すきま風のような寒さと切なさ

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 智美特製アツアツのラーメンを美味しく完食したと言うのに、お腹は満たされていても私達の心はなぜか満たされず気分がイマイチ晴れぬまま午後の仕事に取り掛からなくてはならなくなった。
 泣きながらでも完食した軍曹はあのあと説得された智美に抱き抱えられて一旦リタイア宣言を彼女から告知されたあと離脱し、結愛との2人でまたしても砦作りに励むもののどうしても気になって作業どころの話じゃない。

 だって軍曹も私達の仲間だから、出来ることなら寄り添って元気を分け与えて笑顔にしたい……そんな気持ちでいっぱいなのに、どうしてこうなったのか考えても答えは出てこずこっちまでモヤモヤが引きずりそう。



 ……もしかして魔法が使えなくて劣等感を抱いてしまったから?



 むろんそれもあるだろう、けれども誰しも初めからできる人はほぼ居ないしここの人達は元より本能で出来るから例外だとしても軍曹にとってはこの島の部外者……いきなり魔法が使えたならアッと驚いてド肝抜かすだろう。
 けど考えるだけ事態は深刻なのに変わりはなく、きっとおにーさんとやらの役に立ちたくて……褒めて欲しくて頑張ってるのに突如として無能を実感させられたらそりゃ純粋な子供は泣くわ。
 努力や理想が報われないのを実感するにはまだ速い、子供にそんなの見せつけたら夢がぶっ壊れるってね。

「軍曹はきっと操れるようになるわ!! 昨日の今日よ、だから私信じてる……ううん、なぜか確信がわいてきちゃってね。」

 おっと……言うのが恥ずかしくて頬を染めつつ視線をそらしてくれた結愛だが、実は常に自分が1番じゃないと気が済まないタイプだからか他人をそうやって褒めたり観察したりするのは非常に珍しい。
 でも軍曹が来てからなのか妹分ができて嬉しかったんだろうな、気配りやら何やら少しずつ大切で温かな感情が育ってきた証拠なんだと私は私の方で信じたい。

「私もなぜか信じてみたくなってね。 今は心が不安定なんだろうけど落ち着いたらなんとかなる。 ……うん、なんとかしか言えないが直感がそう呼び掛けてくれるのさ。」

 私らしからぬことを言いながらアイスキューブを積み重ねていた砦の壁に腰掛け太陽を見つめる。
 悔しいけど智美は人を育てる……または心を育てたりするのが非常に上手く、あんな過酷な燎煉の発電所でも従業員を引っ張っていくカリスマを持ち合わせてる、となると預けて正解だったんじゃないかって少しばかり思え無い胸を今は撫で下ろして安堵、私も少しばかり気が晴れてきた。
 それにしても連行されてしまったがどんなことをされるのか考えるとすれば【いつまでもメソメソするなっ!!】なんて活力を入れられるか【初めからできるヤツなんて居ないっ!!】とか言って元気付けるのかは定かじゃないけどどちらのシチュエーションもリアルに想像できる辺りたぶんすぐに軍曹の事を立ち直らせてくれるに違いない。
 ごもっとも智美がたとえ冷たい時雨の水曜力に切り替わっても心までは冷えきった訳じゃない、私も見習わないとな。















 アイスキューブを積み重ねては最後の1つのスペースにさしあたったところで、私が設置しようとした時だった……【なるほど】とつい頷きたくなる言葉が結愛の口から飛び出てきた。

「最後のそこは軍曹にやらせたいから、取っておいて欲しいのっ!! じゃなきゃ意味ないじゃない。」

「ふふっ、結愛もすっかりお姉さんだねぇ。 わかった、ここは保留と行こうじゃないか。」

 作ったアイスキューブを踏みつけては元の雪に還元するが、改めて見ればほぼ砦は完成形に近くなったからこれ以上はやるべき事も無ければ陽も傾いてきたことだから撤収を決める込むも、少し後ろを振り返っては密度の濃い1日だったとフッとそんなことを思っていたら右手が突然ニギニギと温かな触感があたっているのに気がついた。

 無意識だろうか、結愛が手を繋いでくれている。

 思い返せばここに来る時に軍曹と手を繋いでいたから少しまだ寂しいんだろう……けどそれで良いんだよ。
 少しの間友達を失って大切なものに気がつく経験というのも今の結愛には必要なのかもと、皮肉めいた思考が一瞬だが脳裏をよぎった。
 こんなことを今さらになって考える私はどうにかしていると思うかい?
 まぁ、思ってくれても構わない。

 なぜなら私には思い浮かべる友なんて居ないから結愛に先を越され嫉妬してあんなことを考えてしまったのかもしれないって思っただけさ。
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