遠空に駈ける女神の浮浪録・神様project2

青衣

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第零章・浅葱と魂の浮浪録(プロローグ)

裁きの誰か

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   ――微睡みの中から……。

   浅葱はムックリと立ち上がり回りを見渡すと、豪華な建物の室内に寝そべっていたのが理解できる。
   ほのかな木製の室内に敷かれた赤いカーペットはまるで、浅葱を奥へ奥へと誘導するかのようにはるか彼方まで延び続けている。

   視界にしておよそ五百メートル程度だろうか、大きな開けたホールに出てきた。
   見たくれ千人ほどの老若男女が集まっており、ソファーに座っていたり立っていたりと賑わっている様子が見てとれる。

   ホールの入り口には駅の改札のようなゲートが存在し、潜り抜けると機械から数字の描かれた切符らしきものがニュッと出てきた。
   裏面を見るとどうやら生前の行いの審判を行うための為の整理券であり、大切そうなものらしいため制服のポケットに入れておく。

 「へぇー、これ全員死んだ人間なのかぁ。 まぁ、私もなんだけどなぁ。」

   眺めていると年端も行かない幼稚園児程度の子供までいて、死因が気になるのも無理はないが今はひたすら呼ばれるまで待つしかない。
   暇潰しに端末のアプリで遊ぼうとポケットに手を突っ込もうとするのだが、何も入ってない。

 「あーぁ、つまらないなぁ。」

   天井上から差し込む柔らかな光を見つめては清々しいほどの伸びをかますと、暖かな部屋のためかまた眠りについてしまった。














   ――肩をトントン。

   肩に伝わる衝撃でハッと我に帰る浅葱は回りを見渡すと、一人の少女が顔を覗き混んでいた。

 「わぁっ!? な、なんだ?」

 「さぁ、起きるです……。」

   柔らかな光を浴びていた為か体は本当の休息というものを摂っていたのか、思うように動かない。

 「あれ、たくさん居たのに……私だけか?」

   力を振り絞って起き上がり、辺りをキョロキョロと見渡すと人っ子一人も居ないことに気がつく。
   厳密には二人だが。

 「お前で今日の審判は最後なのです。 何度もお呼びしたのに反応がないから受付の順番を飛ばさせてもらったですよ。」

 「わ、悪いね……、心地よくて眠くて。」

   抗えない眠気を正当な言い訳に巨大な扉を前にするも、この奥に何が待ち受けているのかなんて言わなくても誰だってわかるはず。
   かなり緊張するのも無理はない。

 「この奥に閻魔がいるんだよね?」

   死者の生前の行いに応じて天国や地獄に行く判決を下す絶対的な裁定者。
   嘘をつこうならペンチで舌を引っこ抜かれ、問答無用で地獄に叩き落とす……、そんな架空の権力者が本当にいるとなると驚きだがあいにくここは誰しもが知ることのない死後の世界。
   浅葱は心の準備もできぬまま、重圧そうな音を響かせて開く扉に唾を飲み込むことしかできなかった。
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