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第零章・浅葱と魂の浮浪録(プロローグ)
謁見と冗談と
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――扉が完全に開いた。
ホールに比べて小ぢんまりとした狭い部屋の奥に、浅葱よりは年端の行かない少女がのんびりと座っていた。
黒いキャスケットに青いジャージを着た茶髪の少女、それが閻魔だと思うと緊張感の欠片のなさに、今まで溜め込んだ自分の緊張が一気に吹き飛びそうでならない。
肩の荷が降りたところで脚はサクサクと前へと進み始める。
――そしてその時は訪れる。
「えーっと、浅葱さんね。」
少女は微笑んで名前を呼んでくれた。
まあ、閻魔なのだろうし嘘を見抜くほどだと考えると名前は見透かされて当たり前なためか、さほどそこには疑問は思いもしない。
「そうね。」
「えーっと、生前の行いをチェックするけど最期以外は特にないから、地獄行きってことはないから安心しなさい。」
別に地獄の宣告をされるような行いはしてないから当たり前と言えば当たり前なのだが、少女は机の上に商店街などでよく見かけるクランクのついたアレをドンッと置いた。
何を言おう、ガラポンである。
「出た玉の色に応じて来世の裕福度が決まるですよ。 銅と銀と金の玉があって、金は一生お金に困らないほどなのです。 もし、金が当たったら次に死んでここに来るときは少しは持ってくるです、愛ヰ悪が有効活用してあげるのです。」
「説明ご苦労様。 とまぁ、愛ヰ悪が言った通りだよ。」
「へぇー、案外アナログな選別方法だなぁ。」
浅葱はクランクに手を添えると軽く二回転ほど回すと、透明なビー玉のようなものがゴロンと受け皿に落っこちては転がって行くではないか。
静かな空間が数秒ほど続いたが、それを切り裂く悲劇のヒロインらしき浅葱。
「なっ、な……金じゃないのか、残念。」
すると愛ヰ悪がそれを拾い上げると少女に見せつける。
「こんな玉の色が入ってるなんて愛ヰ悪は説明を受けてないのです!」
困った表情はの愛ヰ悪に対して少女はニヤッと意味深い笑いを帽子の鍔の下から覗かせると、拍手を送りつける。
突然の拍手に浅葱はポカーンとした表情でしかない。
無論何の色の玉が出ても文句は無かったのだが、想定外だったようだ。
「これは珍しいね。 天国じゃなくて、神に転生できる権限だよ。 もちろん、天文学的な確率で排出されるんだけど、いやぁー……ここ二十年は誰も出さなかったからビックリしたよ。」
「いや、遠慮しておく。」
浅葱はキッパリと即答を投げつける。
「なっ!? 神様になれるんだよ? ステータスだよ?」
「めんどくさい。 天国でゆっくりしたいんだよ、私は。」
確かに神様になれるのは嬉しいかもしれないが、いろいろとめんどくさそうなことに巻き込まれると直感で感じたのか、それよりかだったら凡人でずっと天国で楽しくやっていった方が分なんだと浅葱は認識する。
しかし、少女は食らいつく。
「良い待遇させるからぁ! イケメンさんもたくさん用意するからぁ、ねぇ? 今、神業も人手不足なの!」
「から、次に来た死者にでもその権限あげたら? 私は普通に暮らしたいのだ。」
待遇もイケメンも惜しいが、秤にかけるならやっぱり神に縛られるより自由の方がまだ重い。
「誰でもって訳じゃないの! ほら、浅葱は素質とか資質があるし、清い心があるから……お願いだよ。」
「し、仕方ないな。」
誰でもと言うわけでもなければすなわち選ばれたものしか神になることができない。
ならば、やらなくては誰がやるのだと。
「私はなるよ。 ただし、待遇は忘れるなよっと!」
迷い無き瞳はまっすぐで、少し邪な心はあれど決意は本物だと少女に訴える。
天国でのんびりするのもいいけれど、やはり求める助けがあるなら放ってはおけない浅葱。
「よしっ、決まりだね! いきなりで悪いけど時間もないし送っちゃうよ!」
説明もなしに少女が腕を振るうと魔法陣が展開され、浅葱の頭の上でクルクルと静かに回転している。
「とりあえず目的地付近には転送するけど問題はないように幸運は付けておくよ。 なにも心配することはない、事は全てを運んでくれる。」
「愛ヰ悪も応援するのです。 いわゆるグッドラック。」
「まかせて!」
浅葱はそう言うと魔法陣がブワッと体を潜り抜ける感覚とまばゆい光が視覚を襲い、生身の人間じゃ決して味わえないような感覚を感じながら静かに転送されていった。
ホールに比べて小ぢんまりとした狭い部屋の奥に、浅葱よりは年端の行かない少女がのんびりと座っていた。
黒いキャスケットに青いジャージを着た茶髪の少女、それが閻魔だと思うと緊張感の欠片のなさに、今まで溜め込んだ自分の緊張が一気に吹き飛びそうでならない。
肩の荷が降りたところで脚はサクサクと前へと進み始める。
――そしてその時は訪れる。
「えーっと、浅葱さんね。」
少女は微笑んで名前を呼んでくれた。
まあ、閻魔なのだろうし嘘を見抜くほどだと考えると名前は見透かされて当たり前なためか、さほどそこには疑問は思いもしない。
「そうね。」
「えーっと、生前の行いをチェックするけど最期以外は特にないから、地獄行きってことはないから安心しなさい。」
別に地獄の宣告をされるような行いはしてないから当たり前と言えば当たり前なのだが、少女は机の上に商店街などでよく見かけるクランクのついたアレをドンッと置いた。
何を言おう、ガラポンである。
「出た玉の色に応じて来世の裕福度が決まるですよ。 銅と銀と金の玉があって、金は一生お金に困らないほどなのです。 もし、金が当たったら次に死んでここに来るときは少しは持ってくるです、愛ヰ悪が有効活用してあげるのです。」
「説明ご苦労様。 とまぁ、愛ヰ悪が言った通りだよ。」
「へぇー、案外アナログな選別方法だなぁ。」
浅葱はクランクに手を添えると軽く二回転ほど回すと、透明なビー玉のようなものがゴロンと受け皿に落っこちては転がって行くではないか。
静かな空間が数秒ほど続いたが、それを切り裂く悲劇のヒロインらしき浅葱。
「なっ、な……金じゃないのか、残念。」
すると愛ヰ悪がそれを拾い上げると少女に見せつける。
「こんな玉の色が入ってるなんて愛ヰ悪は説明を受けてないのです!」
困った表情はの愛ヰ悪に対して少女はニヤッと意味深い笑いを帽子の鍔の下から覗かせると、拍手を送りつける。
突然の拍手に浅葱はポカーンとした表情でしかない。
無論何の色の玉が出ても文句は無かったのだが、想定外だったようだ。
「これは珍しいね。 天国じゃなくて、神に転生できる権限だよ。 もちろん、天文学的な確率で排出されるんだけど、いやぁー……ここ二十年は誰も出さなかったからビックリしたよ。」
「いや、遠慮しておく。」
浅葱はキッパリと即答を投げつける。
「なっ!? 神様になれるんだよ? ステータスだよ?」
「めんどくさい。 天国でゆっくりしたいんだよ、私は。」
確かに神様になれるのは嬉しいかもしれないが、いろいろとめんどくさそうなことに巻き込まれると直感で感じたのか、それよりかだったら凡人でずっと天国で楽しくやっていった方が分なんだと浅葱は認識する。
しかし、少女は食らいつく。
「良い待遇させるからぁ! イケメンさんもたくさん用意するからぁ、ねぇ? 今、神業も人手不足なの!」
「から、次に来た死者にでもその権限あげたら? 私は普通に暮らしたいのだ。」
待遇もイケメンも惜しいが、秤にかけるならやっぱり神に縛られるより自由の方がまだ重い。
「誰でもって訳じゃないの! ほら、浅葱は素質とか資質があるし、清い心があるから……お願いだよ。」
「し、仕方ないな。」
誰でもと言うわけでもなければすなわち選ばれたものしか神になることができない。
ならば、やらなくては誰がやるのだと。
「私はなるよ。 ただし、待遇は忘れるなよっと!」
迷い無き瞳はまっすぐで、少し邪な心はあれど決意は本物だと少女に訴える。
天国でのんびりするのもいいけれど、やはり求める助けがあるなら放ってはおけない浅葱。
「よしっ、決まりだね! いきなりで悪いけど時間もないし送っちゃうよ!」
説明もなしに少女が腕を振るうと魔法陣が展開され、浅葱の頭の上でクルクルと静かに回転している。
「とりあえず目的地付近には転送するけど問題はないように幸運は付けておくよ。 なにも心配することはない、事は全てを運んでくれる。」
「愛ヰ悪も応援するのです。 いわゆるグッドラック。」
「まかせて!」
浅葱はそう言うと魔法陣がブワッと体を潜り抜ける感覚とまばゆい光が視覚を襲い、生身の人間じゃ決して味わえないような感覚を感じながら静かに転送されていった。
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