遠空に駈ける女神の浮浪録・神様project2

青衣

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第零点九十九章・まみれまみれの不時着

やっぱり後悔

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   ――強い浮遊感が襲いかかる。

   浅葱は今もなお後悔している真っ最中であった。
   あの少女に転送して移動されたところがはるか上空であり、なんの対処もできない自由落下を楽しんでいる真っ最中であることに変わりはない。

 「いぃぃいいやぁああぁぁっ! 落ちるぅぅううううううううっ!!」

   幸運も待遇もへったくれすらない門出に後悔しながらも、ちょっとでも信用したおろかな自分を悔いては直撃までの数十秒間は空中をグルグルと回転しながら落下してゆく。

   首が風圧でへし折れそうながらも下を確認すると道路が見えるが、その下は広大な川と畑が存在するのがわかる。
   せめて川に落下しなくては悲惨な最期をもう一度体験するのはごめんだと。














   ――道路もとい、橋の下にて。

   若いお兄さんとオッサンが畑でせっせこと作物を収穫しては汗水を垂らしている真っ最中、異様に風を切る音がどこからともなく聞こえたような気がした。
   それに気がついたのは若いお兄さんだ。

 「んぁっ? なぁ土方、空からなんか女の子が降ってきてるんだが。」

   お兄さんは汗を拭き取るついでに空を見上げた瞬間、キラッと光るものが見えたようでじっくり観察するとうっすらだった女性の悲鳴がハッキリと聞こえてくるのがわかったみたいだ。
   
 「あ~っ、スカイダイビングなんてたまらねぇぜ! ワシも若かったらやってみたいが、機会があったらやろうや。」

   オッサンはサングラス越しに徐々に大きくなってくる点を見続けては呑気に座り込む。

 「マジでやばくねぇか? もしかして飛べないのに誰かに突き落とされたんじゃ? 最近のイジメって過激だよな。」

 「イジメっていうのは社会の縮図だぜ。 悲しいぜ。」

   オッサンはしばらく見つめてると半分立ち上がっては呻き声をあげる。

 「ぬぅんっ!!」

   すると徐々に周囲の土が集まったかと思うと大きな大きなひとつのクッションのようなものに変化をさせ、受け止める準備をしたのだ。
   ただし形はどうあれである。

 「巻糞じゃねぇかよ!」

 「衝撃吸収アブゾーバースプリングだぜ! 見ているだけで酒とツマミが二回もおかわりできるほどの芸術だ。」

   オッサン自画自賛の衝撃吸収のアートに女性の身体が迫っている。

 「ひえぇええええええええっ!!」




 【ボッフウゥゥゥゥンッ!!】




   三十秒もしただろうか、浅葱は土のクッションのお陰で傷ひとつなく落っこちては来たのだが気を失いながら土の中からオッサンとお兄さんに救出された。

 「あ~っ、もう全身土まみれや。」

 「土方がやったんだろうが。」

   全身土や泥だらけで気絶した浅葱を見つめては二人は何をすることもできるわけもなく、再び畑仕事に没頭しては、目覚めるまでは存在を忘れることとなったそうな。
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