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第一章・臼箕電工

機械はびこる

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   ――正面玄関を抜ける。

   眼前にはフロントらしきものが存在するが、パソコンに写し出されたバーチャルなお姉さんが案内をしているようだ。

   辺りを見渡すとパソコンが何台もあって、一人一人違うバーチャルな人達がディスプレイの中ではせっせこせっせこ働いている。
   慣れない光景からか浅葱は不気味に思ってしまうのも無理はない。

   浅葱が生前生きてた時代にはそんな技術などなかったからだ。

 「えぇ、なにこれ……全部機械が処理してるから、人間の従業員は居ないの?」

   生身の体を持つのは今のところここでは揃物と浅葱、そしてここの社長だけだろう。

 「不気味に思えても慣れだよ、慣れ。」

   怖がっている浅葱はスルーしては、揃物は壁に添えつけられているディスプレイに暗証番号を入力すると、ボタンのないエレベーターが開きだす。
   浅葱は何やら不思議に思う。

 「このエレベーターはボタンないの?」

   上に行くボタンも下に行くためのボタンもない、ただのドアだけのエレベーターがあればそれは不思議に思うのも無理はないだろう。
   揃物は笑いながら説明してくれた。

 「ハッハッハ、ここの社長は用心深いからな! 特定のヤツにしか会えないようにパスワードを設けてるのさ。」

 「ま、まあ勝手に社長の部屋に入られても困るよね。」

   浅葱は開いたエレベーターに乗り込むとその豪華さについうっとりしている。
   モダンな内装のエレベーターは建築がわからない浅葱だって口を半開きにさせて魅了させてしまうほどのレベルで、最早魔法の要領に近い。

   エレベーターはゆっくりと閉じては昇始める。
   階層のボタンも何もなければ、社長の部屋に行くのだとわかっていても道なる場所に誘われるようで少し怖かった。














   ――一分ほどして。

   空を見上げたときのあの高さは忘れもしないほど。
   最上階だというならば、ここは推定百メートルはあるだろうと浅葱は考えながらエレベーターを降りた。

   しばらく歩いてふと思うのだがこんなに高いところなら景色を見たいものだと思うが、不気味なほどに薄暗い廊下には窓ひとつないようだが、その廊下はすぐに社長室に直面する。
   黒樫の木材で作られた物々しい雰囲気の扉を前に揃物は天井の角を見上げて独り言を呟く。

 「善人ぉ、監視カメラで見てんだろ?」

   【「さぁな」】

   扉の奥から男の声が響いてるも、見えてるなら素直に見てると言えば良いのに遠回しに言うのに滑稽に思いちょっと笑ってしまう浅葱だが、揃物は問答無用で扉のノブに手をかけた。

   パチッと響く静電気を物とせず揃物はその扉を今、ゆっくりと。
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