遠空に駈ける女神の浮浪録・神様project2

青衣

文字の大きさ
17 / 20
第一章・臼箕電工

完成度高くない?

しおりを挟む
   ――何だかんだありましたが……。

   紆余曲折とハプニング続きでいろいろ苦難はあったがどうにかカレーを完成させた二人は、食べるどころじゃない様子の表情で、疲れのご様子。
   美味しそうだけど、ノロノロとしたスピードでご飯をよそってカレーを乗せる。

 「なんとか完成したわ。 ふぃー、疲れたわぁ。」

 「おおっ、スゴいぞコレ。」

   たかがカレー、されどカレー……苦労して作った一品は絶対に美味しいもの。

 「よっし、机に運んで食べようぜ。」

 「私は水を運ぶわ。」

   疲れてても最後の役割が残っている。
   揃物はカレーを運び、浅葱は水を。

   机に運ぶ頃には疲れなんてもう忘れてしまったのか、興奮を隠せないご様子。
   浅葱にとってはカレーは久々であり、揃物に至っては手作りカレーなど初めてなのだから無理もない。

 「いやぁー、なんか成長って感じだ。 俺はアシストしかしてないけど、なんやかんやでカレーを完成させるなんてな。」

 「私もまさか作るなんて思ってもなかったけど、なんとかなるものね。」

   初めての本格的な自炊に酔いしれながらも、いただきますの合図は古ぼけた商店の空間に響き、スプーンの音と供に美味しい食事が始まった。














   ――疲労とカレーと。

   中辛言えども暑くて辛くなければカレーではないと、そんな醍醐味の一つとなれば服をパタパタさせること。
   揃物は食べ終わって食器を片付けたときには、汗でびっしょり。

 「旨かったなぁ、それにしても暑いわ。」

   季節外れなのに団扇でパタパタと扇いでは涼みを求めているのだが、いかんせん上も下もパタパタ状態。

 「カレーって香辛料使ってるからね、辛いし発汗作用あるみたい。 それにしても私も暑くなってきた。」

   少しだけ涼もうと商店の外に出てみると、鬱蒼と繁る闇の森に肌寒い風が、火照った身体に突き刺さる。
   寒いけど心地よく感じられるのはカレーのお陰だろうか。

 「あまり無理すんなよ、風邪引いたら元も子もないからな。」

   窓から揃物の声が聞こえてくる。

 「わかったよ。」

   振り向きもせず浅葱は星空を見つめる。
   いく億の星空はとても冷たい空気で清んでいて、明日も晴れるだろうと伝えてくれる。
   吐き出す白い息も、ゆっくりと昇っていくのを見届けると、また家の中に戻っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...