日々是成長×神様project・ＨDリマスター

プロローグ&人物紹介？

十月一日その六

十月一日その六。
寒気にもてあそばれ。














   霙がボタボタと降りしきるこの大陸の北部にて、また一人の少女が目を覚ましたようだ。
   窓辺に張り付く雪や雨混じりの霙はこの地方特有の寒気に影響され、十月の月初めでもこの有り様である。

   ここは水曜の湿原の時雨地方であり、一年を通して平均的な気温は一桁とこの大陸でも風変わりな場所だと言われている。
   遠くを見渡すと雪の冠を被った山が見据えており、溶けるわけでもないため年中無休でスキーが楽しめるという利点も持つ。

 「今日はちょっと暑いですね……一度ですか。」

   外に出ては落ちてくる霙を両手で掬っては丸めてポイっと投げ捨てては、その肌身の暑さにパタパタと手で団扇を仰ぐような仕草で涼みを求める少女。
   彼女こそここの一番のお偉い様であり、水曜神の棟方 恵麻むなかた えまである。

 「こんな日はどうしましょう？ あぁ、やりたいことがありすぎて手が付けられませんね。」

   ちょっと優柔不断な困ったさんであるがこう見えてこの地方の要の、時雨浄水場の場長さんであるためいざとなればオドオドしながらも答えは出してくれるに違いない。
   そんな力量があるからこそ彼女はここの長を勤めなくてはいけないものであり、任されたのなら彼女もそれに応えなくてはいけないのだ。

 「さて、それでは今日はタンク内の水を綺麗にしてしまいましょうね。」

   恵麻は作業着に着替えると浄水場へと向かう。

   浄水場は無菌でありマイナス何十度の凍てつく世界であるが、そんな中でも彼女はニコヤカに歩き回っては機械を操作したり忙しい。
   他の従業員も半袖の作業着を着ているものもいるが、時雨の民にとって寒さなど感じるものではないため、不自由など決してしていないのだ。

   ここの浄水場では大陸の十割の飲み水の処理など行っているために、手はぬけないしそれを誇りに思うと彼女だってやる気に満ちた表情ではいられないだろう。
   水は生きる上で大切なものである、例え無味無臭であれ無個性であれど必ず誰かに必要とされていることを忘れるなかれと。

 「今日も頑張っちゃいますよ！」

   恵麻は天井のつららを見上げてはもう一度気を引き閉めて、ほかの貯水タンクの部屋へと急ぐ。
   終わりなきその日まで、清らかな水の流れを決して止めることなく。














水曜の湿原、時雨地方。
水曜神の棟方恵麻、出陣！