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十月
十月五日
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十月五日。
現実との区別。
恋は自分自身でゲームを開発したりするのがお仕事で、何十や何百をも越えるタイトルのゲームを製作してきた。
アーケードの音ゲーやパソコンなどのオンラインゲームだってタイトルを上げたらキリがない。
そんな彼女は目を見張らせていたものがある。
この大陸で流行っているオンラインゲームの【アナザーライフ・オンライン】。
王道であるが自分のアバターを製作してはモンスターを倒してお金や素材などを入手したり、自分だけの家や敷地を改造しては農園やモンスターを育成したりと楽しいこのゲームだが、最近不審なプレイヤーが居ると情報が入っている。
「うーん、通りでそういうわけね。 お二人さん、さようならね。」
恋はデーターメールをその二人のアカウントに送らせると、そのデーターを凍結しては高笑いする。
「ちょっと、何したのよ?」
ゲームに疎い結愛だが、恋のその豹変っぷにり逆に不審に思ってはドン引きしながらも恐る恐る声をかける。
しかし……。
「んー? 今ね、ズルをした人をこらしめていたのよっ!」
「わぁあっ!?」
グリンと首が急転換しては恋は嬉しそうに、けど病んだような表情で結愛を見つめるもカタカタと震えてしまう。
「まぁ、当然の報いでしょうね。」
腕組をしながら頷く恋だが、結愛にとってはやはり何が何だかさっぱりわからない状態。
何に対してこらしめていたのか聞いてみることに。
「今は何をした人に罰を与えたわけ?」
「あー、【RTM】ね。」
恋の口から飛び出した英単語なのだが今度は逆に結愛が腕組をしては、数秒ほど無心に考えるも、無心なので何も答えは導き出せない。
専門用語は本当に無知としては未知なる語源としか思えないのだから。
「【RTM】? 何よそれ? お金を引き出す機械……じゃないわよね?」
「惜しいわね、【RTM】って言うのは、【リアルトレードマネー】と言うのよ! 現実のお金と取引する行為で、とても悪質だから結愛はしちゃダメよ?」
キッパリとドヤ顔されても結愛はそもそもオンラインゲームなどやっていないのだからどうでも良いことなのだが、聞いてしまったが最後、校長先生のお話のような時間が待っている。
結愛はその知的に溢れた恋の表情を見て、即座に興味のない長話が始まることを理解したが、時は既に遅かった。
「まず、このゲーム内で使われている普通の剣があるとするわ?」
恋はゲームの紹介のブースで使用した実物の剣を持ってきている。
余談だが、なぜ展示用にもっとカッコいいのではなく普通の剣なのかと言うと、制作費がバカにならなかったのもあるが、これでも相当制作費は高く、刀身の鋼は夜朧の刀の製造技術で造られた職人技の本物の逸品である。
「あるわね……。 って、本当にあるのね。」
――何で持ってきちゃったのよ……。
結愛は心の中で十割の確率でそう思ってるだろうが、構わず話は進む。
「この剣はゲーム内の通貨の【ゴールド】を使って……えぇーと、十四億三千万ゴールド使用して製作するの。」
「十四お……ちょちょ、普通の剣で……アホ臭いわよ!?」
実物で見るその業物の刀身はいかにも高いものだが、ゲーム内ではもっと高額に設定されている逸品に結愛はツッコまざるを得なかった。
それに普通なのに、その値段に設定した人の顔が見てみたいと思うも悲しいかな、金銭感覚のズレた目の前に居る。
さすが金だけに金曜神。
「確かに高いと思うわね、高すぎると思うわね……だからこそ手が届かないから欲しさに不正で取引する人も出てくるのでしょうね。」
「自覚あったのね……。 まぁ、欲しいと思ったら目の前が見えなくなるわね。」
すると恋は机の棚からオレンジ色のカードを取り出しては結愛に見せるも、こればかりは結愛は見覚えがあるし用途もわかる。
「あっ、これはコンビニなどで買えるヤツね! たしか決済の上限に達した玄弥がレア度最高のアイテム欲しさに買い込んでたプリペイドカード! まぁ、三十六万四千円注ぎ込んでも欲しいの出なくてスゴく白くなってたわ。」
「なっ、何よ……生々しいわね。 それはさておき、これは千円のプリペイドカード!」
手元に収まるキラリと光るそのカードは千円でもコンテンツをよりいっそう楽しめる逸品。
「このカードの番号を教えてくれたら、さっきの剣をゲーム内でタダで譲ってくれる人が居ると仮定するわ? もちろん結愛だって欲しいわよね?」
「要らない。」
キッパリと言い放つ。
「欲しがりなさいよ! ほーら、強いのよ……これさえ持てばステータスなんてほら、攻撃力は【不可説不可説転】の桁まで上がったわ!」
「何で普通のでそこまで上がるわけ!? ……なら一番強い武器の攻撃力教えなさいよ!」
相変わらず恋のゲームはすぐインフレしたがるもので、この有り様。
零がいくつあっても満足しない彼女の性癖がこんなところまで侵食してしまっているのだから、打つ手はない。
「でも、金銭のやり取りはトラブルになるわ?」
「そうよ? それにね、周りの人にも迷惑がかかるし……バランスだって崩れちゃうから、とても悪質なのよ。」
悪質なのはこの際どちらなのかはツッコみを入れようにも、リアクションしても無意味だと悟った結愛はあえてもう何もしない。
――剣の攻撃力の桁を何とかしなさいよ……バランス崩れてるでしょ。
「だから、こういう迷惑をした人にはデーターを凍結。 アカウント永久停止。」
それは今後一切ゲームで遊べなくなる、正真正銘のゲームオーバーを意味する言葉。
大切に育ててきたオリジナルのキャラも、アイテムも……フレンド、それから課金してたなら注ぎ込んできた金額だって泡のように消えてしまう。
だからこそルールはきちんと守って楽しく遊ぶべきだと、ゲームをプレイしてない結愛に説明してはニコやかな恋であったとさ。
不正な取引はどんなものであれ許されない。
そんな取引など元から無かった事にしてしまえば万事解決。
現実との区別。
恋は自分自身でゲームを開発したりするのがお仕事で、何十や何百をも越えるタイトルのゲームを製作してきた。
アーケードの音ゲーやパソコンなどのオンラインゲームだってタイトルを上げたらキリがない。
そんな彼女は目を見張らせていたものがある。
この大陸で流行っているオンラインゲームの【アナザーライフ・オンライン】。
王道であるが自分のアバターを製作してはモンスターを倒してお金や素材などを入手したり、自分だけの家や敷地を改造しては農園やモンスターを育成したりと楽しいこのゲームだが、最近不審なプレイヤーが居ると情報が入っている。
「うーん、通りでそういうわけね。 お二人さん、さようならね。」
恋はデーターメールをその二人のアカウントに送らせると、そのデーターを凍結しては高笑いする。
「ちょっと、何したのよ?」
ゲームに疎い結愛だが、恋のその豹変っぷにり逆に不審に思ってはドン引きしながらも恐る恐る声をかける。
しかし……。
「んー? 今ね、ズルをした人をこらしめていたのよっ!」
「わぁあっ!?」
グリンと首が急転換しては恋は嬉しそうに、けど病んだような表情で結愛を見つめるもカタカタと震えてしまう。
「まぁ、当然の報いでしょうね。」
腕組をしながら頷く恋だが、結愛にとってはやはり何が何だかさっぱりわからない状態。
何に対してこらしめていたのか聞いてみることに。
「今は何をした人に罰を与えたわけ?」
「あー、【RTM】ね。」
恋の口から飛び出した英単語なのだが今度は逆に結愛が腕組をしては、数秒ほど無心に考えるも、無心なので何も答えは導き出せない。
専門用語は本当に無知としては未知なる語源としか思えないのだから。
「【RTM】? 何よそれ? お金を引き出す機械……じゃないわよね?」
「惜しいわね、【RTM】って言うのは、【リアルトレードマネー】と言うのよ! 現実のお金と取引する行為で、とても悪質だから結愛はしちゃダメよ?」
キッパリとドヤ顔されても結愛はそもそもオンラインゲームなどやっていないのだからどうでも良いことなのだが、聞いてしまったが最後、校長先生のお話のような時間が待っている。
結愛はその知的に溢れた恋の表情を見て、即座に興味のない長話が始まることを理解したが、時は既に遅かった。
「まず、このゲーム内で使われている普通の剣があるとするわ?」
恋はゲームの紹介のブースで使用した実物の剣を持ってきている。
余談だが、なぜ展示用にもっとカッコいいのではなく普通の剣なのかと言うと、制作費がバカにならなかったのもあるが、これでも相当制作費は高く、刀身の鋼は夜朧の刀の製造技術で造られた職人技の本物の逸品である。
「あるわね……。 って、本当にあるのね。」
――何で持ってきちゃったのよ……。
結愛は心の中で十割の確率でそう思ってるだろうが、構わず話は進む。
「この剣はゲーム内の通貨の【ゴールド】を使って……えぇーと、十四億三千万ゴールド使用して製作するの。」
「十四お……ちょちょ、普通の剣で……アホ臭いわよ!?」
実物で見るその業物の刀身はいかにも高いものだが、ゲーム内ではもっと高額に設定されている逸品に結愛はツッコまざるを得なかった。
それに普通なのに、その値段に設定した人の顔が見てみたいと思うも悲しいかな、金銭感覚のズレた目の前に居る。
さすが金だけに金曜神。
「確かに高いと思うわね、高すぎると思うわね……だからこそ手が届かないから欲しさに不正で取引する人も出てくるのでしょうね。」
「自覚あったのね……。 まぁ、欲しいと思ったら目の前が見えなくなるわね。」
すると恋は机の棚からオレンジ色のカードを取り出しては結愛に見せるも、こればかりは結愛は見覚えがあるし用途もわかる。
「あっ、これはコンビニなどで買えるヤツね! たしか決済の上限に達した玄弥がレア度最高のアイテム欲しさに買い込んでたプリペイドカード! まぁ、三十六万四千円注ぎ込んでも欲しいの出なくてスゴく白くなってたわ。」
「なっ、何よ……生々しいわね。 それはさておき、これは千円のプリペイドカード!」
手元に収まるキラリと光るそのカードは千円でもコンテンツをよりいっそう楽しめる逸品。
「このカードの番号を教えてくれたら、さっきの剣をゲーム内でタダで譲ってくれる人が居ると仮定するわ? もちろん結愛だって欲しいわよね?」
「要らない。」
キッパリと言い放つ。
「欲しがりなさいよ! ほーら、強いのよ……これさえ持てばステータスなんてほら、攻撃力は【不可説不可説転】の桁まで上がったわ!」
「何で普通のでそこまで上がるわけ!? ……なら一番強い武器の攻撃力教えなさいよ!」
相変わらず恋のゲームはすぐインフレしたがるもので、この有り様。
零がいくつあっても満足しない彼女の性癖がこんなところまで侵食してしまっているのだから、打つ手はない。
「でも、金銭のやり取りはトラブルになるわ?」
「そうよ? それにね、周りの人にも迷惑がかかるし……バランスだって崩れちゃうから、とても悪質なのよ。」
悪質なのはこの際どちらなのかはツッコみを入れようにも、リアクションしても無意味だと悟った結愛はあえてもう何もしない。
――剣の攻撃力の桁を何とかしなさいよ……バランス崩れてるでしょ。
「だから、こういう迷惑をした人にはデーターを凍結。 アカウント永久停止。」
それは今後一切ゲームで遊べなくなる、正真正銘のゲームオーバーを意味する言葉。
大切に育ててきたオリジナルのキャラも、アイテムも……フレンド、それから課金してたなら注ぎ込んできた金額だって泡のように消えてしまう。
だからこそルールはきちんと守って楽しく遊ぶべきだと、ゲームをプレイしてない結愛に説明してはニコやかな恋であったとさ。
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