日々是成長×神様project・ＨDリマスター

十月

十月八日

十月八日。
たまにはゆっくりと。














   岩動の温泉でゆっくりとお湯に浸かっている玄弥は、甘酒を飲みながら顔を赤くしては酔いしれている。

 「あー、うまい。」

   先程和食の料亭で懐石料理を堪能して御機嫌で、さらに大好きなお風呂のコンボと来れば岩動の温泉旅館は天国へと早変わり。

 「懐石も酒もうまいっ！ もう岩動に永住しようかな？」

 「え……っ？」

   桃子も長湯に浸かった肌の頬はさらに赤みを増して玄弥を見つめる。

 「ははは、冗談だよ……んな金は無いしな。」

   玄弥にとって冗談でも桃子は食い付いてくる。

 「お金なんてとらないわ……永住するなら、良いのよ、え……遠慮要らないわ。」

 「俺は甘えると堕落するからな、とことん。」

   確かに玄弥は人に依存しては何かとダラダラしたがる性格だが、やるときはきちっとする。
   だからそれをわきまえては行動し、普段から怠惰にならないように心がけているのだ。

 「それに、俺には風見がある。 仕事が疲れたら寄らせてもらうかな。」

 「それでも良いの……いつでも来てね。 歓迎するわ。」

   正直にいうと風見と岩動はとんでもなく仲が悪く、桃子達は静かでおとなしいのに対しては、玄弥や菊花は活発であるために気が合わない。
   お互いに気が合わないだろう。

 「俺と一緒にいると疲れるだろ？」

 「疲れる。」

   桃子は今日は野菜の収穫を手伝いに風見までアルバイトしにいったのだが、次から次へと収穫した野菜を段ボールに詰め込んではあちこちに運んだために、疲れて倒れるかと思ったほどである。
   三往復、距離にして重さ五キロの段ボールを距離にして五百メートルほどやっただけであの有り様なのだから。

 「まぁ、桃子は桃子だ、気にすんな。」

 「玄弥も玄弥よ。」

   玄弥は一俵の米俵、つまり六十キロを担いでは走ってあちこちに移動し、総移動距離は十五キロメートルにも及ぶという。

 「まぁ、俺は鍛えてるからな。 ほらよ？」

 「わ……わぁ、固くてたくましい。」

   桃子は腕の力コブをじっくり眺めては食い入るように見つめる。
   なぜだか目を放せずそのまま三分は力コブを要求された玄弥は、後日筋肉痛に悩まされてはここの温泉にまた浸かりに来ることだろう。

   岩動はある意味で七刻の宝なのだから、繁栄はいつまでも続くことを願って今日も玄弥は一人酒で盃を掲げ、桃子はそれをボーッと眺めていた。














七刻の人は温泉大好きみたいです。
玄弥などは異常で週十で来るそうな。