日々是成長×神様project・HDリマスター

青衣

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十月

十月二十三日

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十月二十三日。
デジタルほど残酷なものはない。














   隣からは常に脳汁が溢れ返りそうな程の快音がなっているのだが、いつも通りだと玄弥は苦い表情をしながらそんな感情をビールと一緒に流し込み、ハンドルを絶妙に回しては当たりが出るまで待ち続ける。
   何百と言う回転、千数百と言う途方もない抽選数は不運の積み重ねの象徴とも言えるべきか、大当たりはいまだに来ず。

   わかってはいるけど止められないのは依存症の証だと言えるが、お金が無いなら無いでキッパリ止めるし、パチンコやスロットをやりたいがために借金をしたことも無い。

 「今日も出ねぇか。」

   一見不運にも見える玄弥だが、全く当たらないと言うわけでもなく、時たま大当たりを連発するが深追いするとかなりの確率で負けてくる。
   勝ちの報告を聞かないのは大抵ストレートに負けるか、深追いのしすぎで当てた出玉をオジャンにしてしまうかである。

   男は度胸のポリシーの玄弥には、勝ったら引き下がらないと言う謎のポリシーが負けを導いてるに違いはないが、これは誰しもあるものではないだろうかと思うかもし、当たり前な感情なのだと思うも、隣の彼女こと菊花にはデタラメに通用しない理である。

 「やったね! 大当たり!」

   菊花の大の大当たりの数値は異常で三桁を叩き出しているのに対して、玄弥は零のまま。
   決して悔しいわけではない……と言えば嘘にはなるが、菊花の笑顔を見れば負けているイライラなんて吹き飛ぶのだから。

    その暖かな手は菊花にグッドマークを送りつける。

 「良かったな。」

   羨ましいわけでも何でもないが、嬉しい気持ちはある。
   大量のお菓子は、幸せの証拠の戦利品なのだから。

 「打ち止めするよー! おしまいにするよー!」

   やがて大当たりのラウンドを消化しては、どっさりと貯まった出玉のカードを交換所に持ってゆく彼女の後ろ姿を見ながら、パチンコ屋の店の裏手に回って玄弥は待つことに。

   いつも通りの風景にいつも通りの出来事に、少しだけため息をつきながら、菊花の足音を待つ。
   少しは玄弥も戦利品を持ちたいものだと思うも、これでいいのだと自信に言い聞かせては納得し、微笑む。

   冷たい風は財布に響くが、幸せの足音はすぐそこまで迫っているのに気づかされるのは、三秒後の出来事であった。














勝っても負けても恨みっこなし。
これが全てなのだから。
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