幼女先生と不思議な課外授業

青衣

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11月6日【EX・スミレが風邪を引く】

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 身内が体調を壊すのが最近増え始めてきたこの頃、ついに従姉妹のスミレが風邪をこじらしてしまったらしい。
 インフルエンザじゃないのが幸いだが、毎日トレーニングを欠かさず……そして細菌にすら立ち向かうほどの蛮勇な女もついに破れたと言うわけか。
 確かに手荒いうがいは人一倍やってはいたが過剰すぎだったよな。

「くっ、私としたことが風邪菌に体内を蹂躙されるとは。 身体の節々と喉が主に痛い。 なぜだっ、手荒いうがいは念入りにしてたはずだ。」

「あくまで予防であって完全って訳じゃ無いわよ。 全くもう。」

 そういうとアイリは白衣の懐から薬を1包取り出してはベッドの横の机に置く。
 相変わらずどんな薬でも入れてると来るがメスや鉗子などもちらほら見える辺りアイリも違うベクトルでバカである。
 一応俺もバカだからな……人の事を言う前に自分を認めるのは大切だ。

「なんだこれは? 粉薬か? よ、読めない。」

「俺にも読めん。 ギンと最後のサンは読めるが真ん中の漢字はキモいな。」

「銀翹散と書いて【ぎんぎょうさん】って言うのよ。 漢方のひとつで喉の痛みに効くの。 インフルエンザにも効くってもっぱら噂よ。」

 さすが本物の医者はひと味違う。
 念には念を入れて俺も1包貰おうか迷う。
 現にスミレと喋ってるわけだし移されたらたまったものじゃないしな。

「やっぱり苦いのか?」

「甘くて苦くて後味はスースーで最悪よ。 まぁ良薬は口に苦しって言うから良くなりたいなら飲むことね。」

「飲む前に飯も食えよ。 っと、奮発してカニ雑炊作ってみたんだ。 風邪引いてなくても雑炊はうまいからな、アイリの分もあるからたくさん食えよな。」

 無論俺が看病すると言う口実で行くのは雑炊やお粥を食べさせてあげるのが目的だ。
 皆うまいって言ってくれるし、何よりも手軽で簡単。

「えっ? 私の分もあるの?」

「皆で食った方が美味しいし、スミレも退屈な部屋で独り寂しく寝てるのもガラじゃ無いんだろ?」

「ふっ……まぁな。」

 お玉に掬って茶碗にトローリと熱々の雑炊が注がれてさ。

 卵にカニとシンプルだけど最上級の看病飯といえば文句なしだ。

「心と身体が温まるな……これはなかなかだ。」

「えー、私これだったら毎日食っても良いわっ!! なかなか美味しいじゃない!!」

「旅館に来ればカニ雑炊なんて食えるからな。 ちょっと値は張るんだがよ。」

 スミレが住んでいる町はもう雪景色で氷点下の世界だ。
 雪降る窓の景色に俺とアイリとスミレの3人の笑い声は夜に静かにこだまして……。
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