吾輩は魔王である

鬼武蔵

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02 side勇者アレン

ー魔王城1Fー

堅牢な門、それを初めて見たものは大概同じような感想になる。それもそのはず、魔王城入口の門は10メートルを超えている。こんな門を見て怖気付かない者など、果たしてどれだけいるだろうか。

勇者アレン一行はゴクリと唾を飲み込み、1歩、また1歩と歩みを進める。

「この先は敵の総本山だ。気を抜くなよ」

「なーにビビってんのさアレン。アタシの無影流に勝てるやつなんかいないって!」

「後方の支援も抜かりありませんわ」

「2人とも本当に頼もしいな」

「べ、別に。アタシもあんたの事も頼りにしてるんだからね」

「光拳の御身に頼られるのは光栄の至りにございます」

「これが終わったらみんなでパーっと祝杯を挙げよう!」

「フラグ、ですわね」

賢者のユリアは口を手で隠し、クスリと笑いながら勇者にツッコミを入れる。

「だな。・・・それじゃあ、開けるぞ」

ゴゴゴッと重い扉が開き、魔王城の内部が露わになる。
魔王城の内部は思いのほか綺麗で、甲冑騎士の像がずらりと並べられていたり、手すりなどは埃ひとつない。まるで出迎えているような、そんな不気味さがあった。

「ユリア、索敵魔法を頼む」

「はい、"精霊よ 理に従い マナを以って 我が敵を暴き出せ サーチ"」

サーチの魔法を使うと、周囲の敵意を察知し、おおよその地理を把握することができる。

「おかしいですね、索敵に誰も引っかかりません」

「招いてるってことか、舐められたもんだぜ。」

「大丈夫だよアレン、敵が油断してるならその隙を利用すればいい一気に本丸、魔王の玉座に殴り込みさ!」

舐められる事に1番不快感を覚えているのは無影流継承者のカレンだった。武道家にとって侮られる事は、誇りを汚されるに等しかった。

「それなら、一気に行くぞ!」

魔王城を1階2階と駆け上がり、あっという間に本丸直前に辿り着いた。しかし、道を阻むうごく騎士像が立ち塞がる。

「試練、てことか。みんな、準備は良いか?」

「ああ!」「はい!」

先に仕掛けたのはモンクのカレンだ。神速で特攻し、拳を一突きする。

「無影流 四の型 打突」

しかし、騎士の鎧はびくともしなかった。
打突を繰り出したあと、流れるように回転蹴りを浴びせた。

「 二の型 空蝉」

これも無傷。今度は騎士像が抜刀し、そのままなぎ払う。カレンはバク宙でこれを難なく回避するとそのまま後退する。すかさずアレンが光拳の力を発動する。

「いくぞ、ライトニング スピアー!」

「合わせます!"精霊王よ 我が問いに答えよ 古のマナを代償に かの者を打ち倒す 炎の蛇とならん ヘルフレイム"」

直線の光線の周囲を炎が渦巻き合わさる。騎士は剣でそれを防ぐが後方に吹き飛び魔王の玉座がある部屋にもたれかかる。

「とどめ!"奥義 無影波紋突き"」

掌底を頭蓋にあてがい、衝撃波を与える無影流の奥義。通常の人間なら頭蓋は砕け、首から上は100メートルほど吹き飛ぶほどの威力を発揮する。あまりの衝撃に、騎士像の背後の扉が破壊され魔王の玉座が露わになる。

「来てやったぜ、魔王さんよぉ!」

ずしりと玉座に鎮座する魔王と、張り詰めた重圧を感じた勇者一行は引き下がるでもなくただ立ちすくんだ。

「よく来たな・・・人間共」
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