吾輩は魔王である

鬼武蔵

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温泉から出た後、豪華な食事がもてなし、なに不自由なく時は流れ、決断の刻は来た。

「さぁ、カレン。君の選択を教えてくれ」

「・・・私の望みは、第3の選択肢だ」

「???吾輩は2つの選択肢しか与えてなかったと思うが?」

「それはアタシが考えた。私は元いた世界に戻る」

「・・・それから?」

「ここでの記憶をなくさないで欲しい」

「・・・理由を聞こうか」

「アタシはたった1日でこの世界が好きになった。緑は豊かだし、ご飯は美味しいし、この城から見た魔界はすごく綺麗だった。そして、アンタはバカみたいに優しい。アタシはこんな世界を人間の手で汚したくなvい。魔物達も人間と共存できると思うんだ。何より、私がこの世界を好きになっちゃったんだ」

「・・・・そうか」

あぁ・・やはりこの娘はいい子だ。純粋で、少女のように無垢な心を持っている。

「だから、アタシはこの世界を忘れたくない共存できる道を探すんだ!」

だから、吾輩も決断しなくてはいけない。

「・・・分かった。・・・ありがどう。君みたいな娘に喜んでもらえて、魔族のみんなも私も、とても嬉しく思う」

「・・・やっぱり、吾輩って呼び方、キャラ作りだったんだね。そっちのがいいと思うよ」

娘の笑みは、ここに来て1番の輝きを見せていた。それは、どのような国宝にも勝る純真無垢な笑顔。魔王もつられて笑みを零す。

「さぁ、君の世界に帰る時間だ」

「もうそんな時間か、ねぇ・・・今度私が魔界に来たら、もっとここの事教えてよね」

「・・・・・・・ありがとう」

カレンの体がみるみると光だし、やがてその姿を消した。

「・・・スケルトンよ」

「はい、魔王様」

「あの最高級のお茶を飲みたい」

「・・・かしこまりました」

ー数分後 魔王城庭園ー

「お待たせ致しました。こちら、先日と同様の茶葉を使用しております」

「・・・あぁすまない」

「・・・・・本当によろしかったのですか?」

「・・お前にしてはめずらしいな、主語が抜けているぞ」

「分かるでしょう?カレン殿の魔界の記憶を消して良かったのか聞いているんですよ」

「・・・・・人間は信用できないからなぁ、それに、理由は知ってるだろ?」

「人間の敵は我々でないと人間同士が争い合う、ですか」

「その通りだ」

「ですが、カレン殿は信用に値すると私は思うのですが、正直に話したらあの方は手伝ってくれるのではないですか?魔王様も分かってると思いますが」

「あんないい娘を巻き込むわけにはいかないだろ?それに吾輩の未来視によれば、これからあの娘には幸せな人生が待っている。邪魔はできないさ」

「・・・はぁ~。どこまでも甘いんですから。私には記憶操作しないでくださいね」

「・・なぜだ?」

「あなたのそんな一面を、私だけでも覚えておけば慰めにもなるでしょう?」

「・・・ぷっ、あははっ。君が従者で本当に良かったよ。・・・ありがとう」

「どういたしまして」
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