吾輩は魔王である

鬼武蔵

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吾輩は魔王である。名前はまだない。
どこで生まれ、育ち、誰が親なのか、とんと見当もつかぬ。

「・・・・魔王様、一々この始まりでは皆様飽きてしまいますよ?」

「飽きっ!そ、そんなはずないだろう!吾輩の魅力はすでに拝読している者ならば周知のはずだ!」

「いやいや、その自信過剰っぷりには流石の私も鳥肌モンですわ。いや、肌ないですけど」

咳払いを1つして、無理やり話題を切り替える魔王。

「さて、スケルトンよ今日の予定を教えてくれ」

「はい、本日はレイド戦となっております」

「と、言うことは世界ナンバー04か・・・」

「ですね、人数は52人で参加者の中には5名の神級スキルホルダーがいます。
『エレメンタルマジック』所有者 カシュー 『テレポート』所有者 帝 霊山 『影縫』所有者 ヨミア。
『加速』所有者 速見 リョウ。そして、『寵愛』所有者 セイラン。
そのほかにも中級、上級の治癒魔法、支援魔法、攻撃魔法を扱える魔導師が合計15名、屈強な戦士達が残りのメンバーです」

「・・・寵愛・・・・・。そうか、これでもう何度目か・・・・・・・・・」

「・・魔王様?」

「あ、あぁすまん。そうかレイド戦なら巨大なボスを演出しないとな。・・・あれ、04の世界ではどんな魔王像だっけ?」

「はぁ・・・しっかりしてください。世界ナンバー04の魔王像は人型で、巨龍に変身すると言われています」

「ふむ・・ならば、魔王城はこれより一時的に刻限の塔に姿を変える。レイドタイムアタックだ!」

手を振りかざすと、ゴゴゴと地面が揺れ、魔王城の壁が形を変え、ゆっくりと動く壁は、次第に円柱状の塔へと姿形を変化させていった。およそ100mにも及ぶその塔は禍々しさを放っていた。

「1階はゴーレム、2階はサラマンダー、3階はダークエルフ、4階はオーク、5階は私が行こう。階層の途中には、私が魔導兵や土塊兵を作って応戦させよう。各階100もいればいいかな。よし、みんなに召集をかけてくれ。」

「仰せのままに・・」

ー魔王城兼刻限の塔F5ー

「みんな、今日は来てくれてありがとう。心から礼を言うよ」

頭を垂れてつくばう魔王傘下のゴーレム、サラマンダー、ダークエルフ、オークを労い寛ぐよう命じた。

「とんでもございません、魔王様。私共はあなたの駒。いくらでもお申し付けください」

「我もオークの長として、魔王様のお役に立てること、一族の誇りであります」

「・・・・・・」

「ゴーレムは、僕もお呼ばれされて嬉しい、と申しております」

「通訳ありがとうサラマンダー。さて、今回君たちを呼んだのは他でもない、これから世界ナンバー04の人達がこの城を攻めてくるんだ」

それを聞いて怒りを露わにしたのはダークエルフとオークだった。

「・・・脆弱な人間の分際で‼︎」

「我も、同意見だ。魔王様、何故人を殺してはならないのですか!人の命など虫けらも同然!我1人向かえば直ぐにでもナンバーワールドを消す事ができます!」

オークが言ったその瞬間、魔王は刻限の塔を包むほどの殺気を放つ。

「皆さん、ここは魔王様の御前ですよ?」

魔王の横にいる従者のスケルトンは淡々と話している。殺気を真横で受けているのに効果はないようだ。
直に殺気を受けたオークは息が詰まり呼吸もままならない。魔王が殺気を消してオークの肩にポンと手を置く。

「すまない、吾輩も歳を取りすぎた。殺気を放つつもりは無かったんだ」

「・・・・い、いえ、出過ぎた真似を」

「君の誠意も忠誠心も吾輩は感謝しているし、信頼している。・・・吾輩も君たちに習って誠意を見せないとな」

そう言って、魔王は膝をつき、両手も地面につける。そして・・頭を垂れる。

「不平不満があるのは重々承知の上でのお願いだ。頼む、人間を殺さないでくれ」

一同唖然とした。全魔族が相手にしても勝つことはできないであろう唯一王。その王が頭を地面につけてお願いしているのだ。その光景は異様でしかなかった。

「あ、頭をお上げください魔王様‼︎」

「そうです‼︎我々のような者に頭を下げるなど、必要ありません‼︎」

尚も土下座を続けながら話す魔王。

「俺は、この世界が好きだ、そしてそれはナンバーワールドも同じ事。あの子らを誰1人とて殺したいとは思わない。すまない、君達にとっては俺の私情でしかない。だが、頼む。どうか、俺の願いを聞き入れてくれ!」

「・・・・・お顔を上げてください魔王様。元来、王とは民の道標となる者」

「王の道こそ、我らの道であります。その道に反する者などどこにいましょう。」

「・・・・・・・・・」

「あなたの道は我らの道です。と、申しております」

「お前達、ありがとう。誓うよ、俺は人間の味方だが、一番に想っているのはこの魔界に生きとし生ける者全てだ」

「「「ありがたきお言葉」」」

その言葉を聞いて、早足で持ち場に向かう魔族達。その時の表情は歓喜の笑みだった。

「はぁ、魔王様。何故あんなにも殺気を放ったんですか?恐怖での支配は嫌がってたじゃないですか」

「・・・・言った通りだ。吾輩は歳を取りすぎた。」

スケルトンは、魔王のその眼から生気が薄れていくのを感じた気がした。その時はまだ、知る由もなかった・・・・。魔王の最後が刻一刻と迫っていることに。
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