吾輩は魔王である

鬼武蔵

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ーhero side ー

世界ナンバー04。そこは魔法と剣によって、王国に統治された独裁政治国家である。故に、王に歯向かう者はおらず、王を崇めぬ者には国家反逆罪として、厳しい罰を受けることが課せられている。
 王都では年に一度、大掛かりな祭事が催される。それは、武道大会だ。各地から腕に自信がある者が集い、己の力を信じ限界まで鍛え上げた者だけが参加する事ができる。

ー魔王討伐より3ヶ月前ー

「今年も始まったなぁ」

「そうだな、去年なんて死人が出たのに物好きだなぁ」

酒場で呑み交わす2人の男、国を挙げての祭事だが、よく思わない者達も数多く存在するのだ。

「なぁ、あんたら」

「あぁ?なんだよ兄ちゃん」

話に割って入ってきた男は、笑顔を振りまいて男2人を机に叩き伏せる。短髪赤髪の若い少年はなおも笑顔を絶やさなかった。

「ガッ・・!お前、何をっ‼︎」

「この世界はさぁ、力が全てなんだよ。弱者には抗う術なんてない。愚痴を零す事すらおこがましい」

赤髪の少年は会計も済ませずその場を去っていく。そして、それに合わせるように酒場にいる複数の男女が立ち上がり同じように会計もせずに出ていく。

「あ、ありがとうございました」

店主は怯えながら頭を下げる。

「な・・・なんだったんだあいつら」

「バッカ!お前、知らないのか‼︎あの方達は王族直属のギルド。夜烏のメンバーだ!」

「あ・・・あの!王族の護衛や殺人なんかも請け負う世界最強の・・・」

「あぁ、連中は殺人の許可証を持っている。今命があるのは儲けもんだぞ!」

「じゃあ、あの赤髪のガキが隊長の?」

「声がでけぇ!そうだよ!あの方が夜烏の隊長「帝 霊山」様だ!」

酔いが覚めた男達は会計を済ませると、逃げるように酒場を後にした。

一方、先に酒場を出た夜烏のメンバーは・・

「ねぇ隊長~。私まだ呑み足りないんですけどぉ~」

帝に擦り寄ってくるのは夜烏ナンバー2のヨミアだった。

「・・・・・明日は武道大会だ。呑みすぎで勝てませんでした、なんて笑い者だからな」

「しかし、この量では眠る事すらできますまい」

ヨミアとは逆サイドで一歩後ろを下がっているのは、夜烏のナンバー3でカシューという高身長でメガネをかけた知的な青年だ。

「そうよぉ~それに、今年も参加者はほとんど私たちだけでしょ~」

「・・やれやれ。あと一件だけだぞ」

「はーい!折角、ただ酒飲める大会なんだから楽しまなきゃね~」

はしゃぐヨミアに頭を抱えるリーダーは、仲間を連れ、またも夜の街に消えていった。

翌日、夜烏のメンバーは闘技場の前に集まって、対戦表を眺めていた。ヨミアを除いて。

「う~二日酔いだよぅ~」

「呑みすぎだ阿呆め」

一喝するカシューはヨミアに目もくれず、対戦表をじっと眺める。

「今回は10人も外部からの参加者がいるのか」

「どれも顔馴染みがあるが・・・速見リョウとセイラン。聞いた事がない名前だ」

「なんにせよ、我々に勝てる者はそうは居ますまい」

「・・世間は広い。油断は禁物だ」

ー数時間後ー

いよいよ、第一回戦の対戦者同士が闘技場の舞台に登る。対戦形式は1vs1の個人戦で、対戦相手が負けを認めるか気絶するまで終わらない。また、この大会で人を殺めてしまっても罪にはならない。観客はギリギリの生死を分けた戦いに胸を高ならせる。

闘技場の視線は、舞台の一点を凝視していた。一番高い位置で高価な革製の椅子に腰掛けている王は立ち上がり右手を青空に掲げる。

「天候に恵まれたこの良き日、この地で再び今大会を開ける事、とても嬉しく思う。多くの言葉は語るまい。ツワモノよ、その武力をここで存分に示すがいい!」

「ワァァァァァァ‼︎‼︎」

空気が割れるほどの歓声に、舞台の2人は包まれる。
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