吾輩は魔王である

鬼武蔵

文字の大きさ
9 / 18

08

しおりを挟む
08

・・・・・数時間後。

「ある程度予想はしていたがまさか、こんな結果になろうとは予想もできなんだ」

「・・だね。私が二日酔いじゃなくても結果はどうなってたか・・・」

今年も夜烏のメンバーが上位陣に羅列されると会場の全員が思っていた、だが、それに反して無名の男女が準決勝の舞台まで登り詰めていた。

準決勝の相手は速水リョウVSセイラン。帝霊山VS夜烏のメンバーの1人だった。

「まさか、転移者同士の戦いになるなんてなぁ」

「同胞同士、手加減なしでいきましょう」

舞台に上がったリョウとセイランはそれだけ言葉を交わすと戦闘態勢に入る。
戦闘開始の鐘が鳴り響くと、両者動き出す。

リョウの能力は加速。自分、又は目に見える無機物や生物に加速を付与させることができる。開始の鐘と同時に、自身に加速を付与してセイランとの距離を一気に詰める。
一方、セイランの能力は神の寵愛。自他共に癒す力を有している。更には、自身の幸運値を最大まで引き上げ、物理的な攻撃を防ぐバリアを張る。
リョウはバリアが展開される前に突撃するがセイランに難なく躱され投げ飛ばされる。

「リョウさん、神々の恩恵にばかり頼るようでは私には勝てませんよ?」

「お前、女のくせに強ぇな。やりがいがあるってもんだ!」

「あら、今時男だ女だなんて、些末な事ですよ?この程度なら私の力を使わずともあなたを完封してみせます」

「あぁそうかよ!」

投げ飛ばされた位置からすぐに距離を詰め、そのままの勢いで膝蹴りを繰り出すが、またも投げ飛ばされる。

「感情のままの雑な突進ですね」

「まだまだぁぁ!」

「次は、ないですよ」

投げた先に距離を詰めていたのはセイランの方だった。着地する前に回し蹴りを繰り出す。

「ガッ・・・‼︎」

闘技場の壁に激突し、背中を強打する。

「・・・女だからですか?私が女だから本気を出さないんですか?」

「・・・本気を出していないのはあんたも同じだろ?互いに探り合いはやめようや」

「・・・・いいでしょう。私が本気を出さないとあなたが本気になれないのなら、私は全力を持って戦わせて頂きます」

スキル発動。神の寵愛を発動すると、セイランの周りに神々しいオーラが纏い付く。

「・・・これは・・・俺もやべぇかもな。加速限界突破、もってくれよ俺の体」

リョウの体から蒸気が発せられ、皮膚が赤黒く変色する。

「・・・まるで獣ね」

「・・・さぁお前のバリアと俺の体、どちらが壊れるか勝負といこうか‼︎」

立ち止まっていたリョウは瞬きする間に距離を詰めていた。走り去った後には衝撃波が発生し、舞台を破壊していた。

「速度=力!」

光速に届くほどの一撃、しかしセイランの展開しているバリアによって、それは阻まれた。

「なんと凄まじい一撃。並の人間なら塵も残さず消滅していたでしょう」

「・・・つまり、あんたは並じゃないって事だ」

連打連打連打と拳でバリアを殴り続けるが一向に割れる気配はない。だが、セイランもまたリョウを目で捉えることはできなかった。

(攻撃されているのは分かる。でも、どこから?)

「なんて硬いんだお前のバリアは」

「あなたこそ、速すぎですよ」

暫くの攻防が続くと、リョウのスピードが次第に遅くなっていく。セイランはそれを見逃さなかった。顔面に向けられた拳を掴み、空高く投げ飛ばした。

「どうやら、我慢対決は私の勝ちみたいですね!」

着地地点に構えるセイランは勝利を確信し、笑みを浮かべる。セイランの大振りの一撃が顔面に直撃する。その寸前、自身が落ちていく速度を加速させる。

「・・・これを待ってたんだ」

リョウは光速に届くほどの一撃を放ち、セイランを吹き飛ばす。更には吹き飛ぶ速度を加速させ、壁に衝突した時のダメージを倍加させる。

「・・・くっ、私を守って!」

すかさず後方にバリアを展開する。しかし、その衝撃までは吸収できずにダメージを負った。セイランは視界がぼやけ、次第に意識を手放してしまった。

「最後の最後じゃないと、あんたに隙は生まれない。あんたの耐久力を信じたからこそ、耐久戦で隙を作ったんだ」

かろうじて保っていたリョウの意識も、勝利の安堵とともに失っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

処理中です...