吾輩は魔王である

鬼武蔵

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帝 霊山との闘いから数ヶ月が過ぎ、セイランとリョウは訓練に明け暮れている。

「あのさー、なんで俺たちここでこんな事してるんだ?」

重りのついた剣で素振りしながら文句を言うリョウにセイランは深くため息をついて返答する。

「その話、あの日から毎日聞かされる身にもなってみてください。軽く地獄ですよ」

「だって、ぜってぇおかしいよ。魔王が復活する日を詳しく教えてくれねぇんだもん」

「それは一理ありますね。ですが、この世界のルールで私たちは強者に従わなくてはいけない」

「教えてやるよ」

姿を現したのは帝であった。ツカツカと近寄り、2人の目の前に来る。

「魔王が復活日は3日後だ」

「・・・ソレってマジ?」

「ああ、おおマジだ」

「なぜ、今まで黙っていたのに今更?」

「その方が全力で鍛錬するだろう?これは一種の教育法なんだ。だから、最後に俺と闘って強くなった君たちを見せてくれるか?」

「帝さんよぉ、あんま俺たち舐めてると痛い目見るぜ?」

「別に舐めてはいない、君達に期待した。だからここへ連れてきたんだ」

「そうかよ!なら、俺から相手してもらうぜ!」

帝から一瞬で距離を離し、身構える。そして、以前同様全力で距離を詰める。

「そんなんじゃ前と変わんねぇぞ?」

帝はテレポートして距離をとる。

「人間ってのは思考回路に限界ってもんがあるんだよ。俺はそれすらも加速させる事で限界を越えることに成功した」

テレポートした場所に先回りしたかのように帝の背後をとるリョウ。そのまま拳を振り下ろし、地面に叩きつける。

「ふぅ、やるねぇ」

しかし、殴りつけたのは帝の形をした人形だった。

「なんだこれ?」

「こんな事もあるかもしれない。予測した上で魔道具を持ってきた。この魔道具は身代わり人形。その名の通り、ダメージを肩代わりしてくれる優れものだ」

「道具に頼るなんて卑怯な奴だな」

そう吐き捨て、またも一瞬で距離を詰め、蹴り上げる。しかし、それもまた、人形であった。

「卑怯で結構。それで世界が守れるのならそれは最高の褒め言葉だ」

「くっ・・・」

慣れていない能力には限界がある。リョウの思考回路を加速させる能力は一見強く見られるがデメリットも確かに存在する。肉体を酷使する加速限界突破と同様に、脳を酷使する為、5秒使えば頭痛や眩暈が、10秒も使えば鼻から血が出始め、20秒後には昏倒する。まさに諸刃の剣である。

「分かるか?これが準備の差だ。普通に戦えば俺は2度お前に殺されただろう。だが、この差が俺を勝利へと導いてくれる。逆に言えば、お前がそれだけ強くなったって事だけどな」

「ぐっ・・・」

「次は私です」

セイランはリョウをスキルで治癒させ、戦闘態勢に入る。
「私も能力を開花する事が出来ました。名前はありませんが、そうですね。リョウと同じで身体機能を上げるものの類です。実際にお見せしますね」

セイランは拳を固め、深く息を吐き始める。

「ふぅぅぅぅぅ・・・」

空気を全て吐き出し、息を止める。

「身体解放50%!!」

人間の身体機能は脳が勝手にセーブする為、20~30パーセントの力しか発揮できていない。ならば、筋肉が壊れないよう能力で自動治癒する事が出来れば、リミッターを外せるかもしれない。そんな考えに至ったセイランはこの3ヶ月その訓練ばかりを行なってきた。

「へぇ・・・身体機能の向上。そんな能力が隠されていたなんてね君はうちのギルドヒーラー後方支援隊に移そうと思っていたが明らかに前衛主体だね。いいね、凄くいい。君は俺と同じ中衛で攻撃と支援の両翼を担ってもらう」

「・・・私と手合わせしなくて良いのですか?」

「俺も武人、俺と君の能力では俺が圧倒的に分がある。だけど能力を使わなかったら俺は一撃で死ぬだろう。それくらい、対面しただけで感じた。これ以上戦う意味なんてなかったんだ」

「・・・・そう、ですか」

「そういう事。それじゃ、3日後に王城の正門に集まってくれ。一気に魔界門を目指す!」

「「はい」」

いよいよ、魔王への報復をする事ができる。街を焼き、津波で攫ったあの忌々しい魔王を。自信に満ちたリョウとセイランは、軽く武者震いしその場を後にした。
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