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「憲二くん!」
宗介が憲二の体を支えた。
「やったあ!」
紗和がグローブをしたままの両手を突き上げ、おっぱいがぽよんと揺れた。
〝あんた、ちょっと自重しなさいよ〟
──だって勝ったし。
〝そういうアレじゃないみたいだぞ〟
シャークが言った。
「驚いたな」
間宮がリングに入ってきた。
「宗介さん、あんた、なに者だい?」
膝をつき、憲二の様子を見る。
「えーと、なんというか、すみません」
「謝ることはありません。ちょっと寝かせましょう。すぐ気がつきますよ」
ふたりは憲二をリングに寝かせた。
いつの間にか紗和が近くにきていて、憲二を上からのぞいている。
「なに者でもいっか。あんたは充分強いと思うが、もしボクシングの技術を身につけたいなら、うちはきっとお役に立てますよ」
間宮がまっすぐ宗介を見つめた。
「あー、そうですね。あはは」
「おい、おっさん」
憲二が寝たまま言った。
「気がついたか」
憲二がむくりと上体を起こした。
「いや、宗介さんか。あんた、すごいな」
「あ、いや、たまたまだよ」
無理があった。
「これじゃあ笑われても仕方がないな」
憲二が唇の片端を上げた。
「いや、違うって! あれは君たちを笑ったんじゃなくて、紗和ちゃんが笑わせるから、って、僕、笑ってました?」
「笑わせてないし!」
「まあ、なんでもいいや。これからよろしく」
憲二がグローブを出して、宗介はおそるおそるグローブを合わせた。
「あ、いや、僕たちはこれからちょっと用事があって」
「ん? うちじゃ不足かい?」
間宮が言った。
「いえ、そういうわけでは」
「ふーん、まあ、無理には引き留められないな。お前ら、グローブを外してやれ」
間宮が言って、宗介と紗和は素手になった。
紗和が両手をくんくんと嗅いで、顔をしかめた。
「じゃあお世話になりました」
宗介が玄関口で頭を下げた。
「またいつでも来て下さい。紗和ちゃんも」
紗和は曖昧にうなずいた。
憲二や練習生たちにも見送られて、ふたりはジムを出た。
「ふう、やれやれ」
宗介は紗和と並んで歩きながら、息をついた。
「強かったですね、宗介さん!」
「なに言ってんだい、シャークたちのおかげじゃないか。それに紗和ちゃんだってすごかったよ」
「うふふ」
「で、シャーク、ボクシングはどうだい?」
〝うむ、なかなか面白いね。パンチの技術や足さばきは得るものが多そうだ。しかし、パンチだけというのはね。足を使った攻撃も習ってほしいな〟
「じゃあ空手かキックボクシングかな?」
「カポエラは?」
「ず、ずいぶんマニアックなものを知ってるね」
「そうかな? でも、空手がいいな。なんかかっこよさそう。アチョー」
「それは空手じゃないけどね。紗和ちゃんは体、柔らかいの?」
キックを使うなら、足は高く上がる方がいいだろう。
そう思って宗介は尋ねたが、紗和は顔を赤くした。
「え、えーと、柔らかいと思います。さ、触りますか?」
「え?」
「お尻かな? んん、でも、宗介さんなら、お、おっぱいでもいいですよ?」
紗和は立ち止まると、赤い顔で眼を瞑って胸を反らせた。
でかい。
「え、えーと、あっ、ち、違うよ、そうじゃない!」
今度は宗介が顔を赤くした。
「え?」
「体の、ほら、関節が柔らかいかってことだよ!」
「あ、あー! そ、そうですよね! やだ、あたしったら」
〝言葉というのは難しいな〟
〝そうね〟
「そっちなら、あたしは体が固いです。運動不足ですかね?」
紗和は立ったまま、つま先に手を伸ばした。
くにゃりと体が折れて、手のひらが地面につく。
「おろ?」
上半身はぺったりと脚につき、胸の膨らみがつぶれた。
「おかしいな? あっ、これもあなたたちの仕業っ⁉︎」
〝仕業ってことはないだろう〟
紗和は体を起こした。
「あ、ちょっとごめん」
紗和は宗介に背中を向けた。
「ブラがずれちゃった」
〝言わなくていいと思うけど?〟
宗介には見えなかったが、胸を直す紗和を見て、通行人が眼を丸くした。
〝筋肉の質が変わったので、関節の可動域が広がったんだな〟
「そんなことしてたの⁉︎」
〝怪獣と闘うには必要なことだ〟
「じゃあ僕もか」
宗介も紗和と同じように体を折り曲げた。
痛みも突っ張る感じもない。
「変な気分だ」
宗介は体を起こした。
〝すぐに慣れるさ〟
「そういうものかね」
宗介と紗和は歩きだした。
宗介が憲二の体を支えた。
「やったあ!」
紗和がグローブをしたままの両手を突き上げ、おっぱいがぽよんと揺れた。
〝あんた、ちょっと自重しなさいよ〟
──だって勝ったし。
〝そういうアレじゃないみたいだぞ〟
シャークが言った。
「驚いたな」
間宮がリングに入ってきた。
「宗介さん、あんた、なに者だい?」
膝をつき、憲二の様子を見る。
「えーと、なんというか、すみません」
「謝ることはありません。ちょっと寝かせましょう。すぐ気がつきますよ」
ふたりは憲二をリングに寝かせた。
いつの間にか紗和が近くにきていて、憲二を上からのぞいている。
「なに者でもいっか。あんたは充分強いと思うが、もしボクシングの技術を身につけたいなら、うちはきっとお役に立てますよ」
間宮がまっすぐ宗介を見つめた。
「あー、そうですね。あはは」
「おい、おっさん」
憲二が寝たまま言った。
「気がついたか」
憲二がむくりと上体を起こした。
「いや、宗介さんか。あんた、すごいな」
「あ、いや、たまたまだよ」
無理があった。
「これじゃあ笑われても仕方がないな」
憲二が唇の片端を上げた。
「いや、違うって! あれは君たちを笑ったんじゃなくて、紗和ちゃんが笑わせるから、って、僕、笑ってました?」
「笑わせてないし!」
「まあ、なんでもいいや。これからよろしく」
憲二がグローブを出して、宗介はおそるおそるグローブを合わせた。
「あ、いや、僕たちはこれからちょっと用事があって」
「ん? うちじゃ不足かい?」
間宮が言った。
「いえ、そういうわけでは」
「ふーん、まあ、無理には引き留められないな。お前ら、グローブを外してやれ」
間宮が言って、宗介と紗和は素手になった。
紗和が両手をくんくんと嗅いで、顔をしかめた。
「じゃあお世話になりました」
宗介が玄関口で頭を下げた。
「またいつでも来て下さい。紗和ちゃんも」
紗和は曖昧にうなずいた。
憲二や練習生たちにも見送られて、ふたりはジムを出た。
「ふう、やれやれ」
宗介は紗和と並んで歩きながら、息をついた。
「強かったですね、宗介さん!」
「なに言ってんだい、シャークたちのおかげじゃないか。それに紗和ちゃんだってすごかったよ」
「うふふ」
「で、シャーク、ボクシングはどうだい?」
〝うむ、なかなか面白いね。パンチの技術や足さばきは得るものが多そうだ。しかし、パンチだけというのはね。足を使った攻撃も習ってほしいな〟
「じゃあ空手かキックボクシングかな?」
「カポエラは?」
「ず、ずいぶんマニアックなものを知ってるね」
「そうかな? でも、空手がいいな。なんかかっこよさそう。アチョー」
「それは空手じゃないけどね。紗和ちゃんは体、柔らかいの?」
キックを使うなら、足は高く上がる方がいいだろう。
そう思って宗介は尋ねたが、紗和は顔を赤くした。
「え、えーと、柔らかいと思います。さ、触りますか?」
「え?」
「お尻かな? んん、でも、宗介さんなら、お、おっぱいでもいいですよ?」
紗和は立ち止まると、赤い顔で眼を瞑って胸を反らせた。
でかい。
「え、えーと、あっ、ち、違うよ、そうじゃない!」
今度は宗介が顔を赤くした。
「え?」
「体の、ほら、関節が柔らかいかってことだよ!」
「あ、あー! そ、そうですよね! やだ、あたしったら」
〝言葉というのは難しいな〟
〝そうね〟
「そっちなら、あたしは体が固いです。運動不足ですかね?」
紗和は立ったまま、つま先に手を伸ばした。
くにゃりと体が折れて、手のひらが地面につく。
「おろ?」
上半身はぺったりと脚につき、胸の膨らみがつぶれた。
「おかしいな? あっ、これもあなたたちの仕業っ⁉︎」
〝仕業ってことはないだろう〟
紗和は体を起こした。
「あ、ちょっとごめん」
紗和は宗介に背中を向けた。
「ブラがずれちゃった」
〝言わなくていいと思うけど?〟
宗介には見えなかったが、胸を直す紗和を見て、通行人が眼を丸くした。
〝筋肉の質が変わったので、関節の可動域が広がったんだな〟
「そんなことしてたの⁉︎」
〝怪獣と闘うには必要なことだ〟
「じゃあ僕もか」
宗介も紗和と同じように体を折り曲げた。
痛みも突っ張る感じもない。
「変な気分だ」
宗介は体を起こした。
〝すぐに慣れるさ〟
「そういうものかね」
宗介と紗和は歩きだした。
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