35 / 75
5皿目 ワカヤシのフリッター
(8)
しおりを挟む
リリアナは、スライムだんごを細長く練ってイモムシに見立てた。それを五連の釣り針に付け、氷の穴に垂らす。
あとはワカヤシを誘う感じでたまに竿を揺らせばいい。
「慌てない、慌てない」
こういうのは、のんびり構えないと……そう自分に言い聞かせながら折り畳みチェアに腰かけようとした時、興奮した甲高い声が聞こえた。
「ネリス様! これもしかして!」
マリールの竿がしなってプルプル小刻みに震えている。
早速ワカヤシがヒットしたらしい。
竿を持つマリールの手にネリスも手を重ねて一緒に引き上げると、五連針の四か所にワカヤシが食いついていた。
嬉しそうにそれを見せるマリールにリリアナも拍手を送った。
活きのいいワカヤシにおっかなびっくりのマリールの代わって、ネリスが針から外してバケツに入れている。その様子を見たリリアナは、ますます口元を緩ませた。
マリールは釣りは初めてだと言っていたが、ビギナーズラックなのかそれとも才能があるのか、彼女はその後も大当たりを連発した。
ネリスは自分の釣りそっちのけで、甲斐甲斐しくマリールの手伝いをしている。
離れた場所にいるテオを見やると、ちょうどワカヤシを釣り上げているところだった。それなりの釣果をあげているようだ。
よかった、釣りが得意って言ってたのは本当だったのね。
もしもテオがボウズだったらイライラして氷を叩き割るかもしれないと危惧していたリリアナは、ホッと胸をなでおろす。
振り返ると、ハリスが指でオッケーサインを出した。
油の温度が適温になったようだ。
リリアナは立ち上がってネリスたちに近寄った。
「一旦、調理してもらうわね」
バケツを見ると、ざっと数えただけでもすでに20尾ほどのワカヤシが入っている。
「マリール、あなたすごいわね! 筋がいいわ!」
まだ1尾も釣れていないくせに何目線だと思われそうなことをリリアナが言っても、マリールはまったく気にせず可愛らしくはにかんでいる。
「ありがとうございます。とっても楽しいです」
そんな彼女を、ネリスが眩しそうに目を細めて見ている様子が微笑ましい。
最初のギクシャクした雰囲気はどこへやら、ワカヤシ釣りで親密度アップ作戦がうまくいっていることに満足して、リリアナはハリスの元へバケツを運んだ。
「お、ちょうどいい大きさだな」
ハリスは早速ワカヤシに水溶き小麦粉の衣をつけて油に投入していった。
手伝うリリアナにコハクがすり寄って来て、足元を温めてくれる。
ワカヤシは片手のてのひらに乗るほどの小さな魚だ。
小ぶりのものは、はらわたも取らずにそのままで、そこそこ育っているものは包丁でサッとはらわたを取り除いてから揚げる。
サクっと揚がったワカヤシに塩を振り、あっというまにワカヤシのフリッターが完成した。
ワカヤシは、頭から尻尾まで骨も全て食べられるのが魅力のひとつだ。
バスケットに並べていると、横からヒョイっと手が伸びてきた。
「うわ、美味そうだな」
つまみ食いしたのはテオだ。
「ちょっと! これマリールちゃんの分なんだから、やめてよね!」
サクサクといい音を立ててワカヤシのフリッターを咀嚼しているテオは、聞く耳を持たずにさらに手を伸ばそうとする。
リリアナはその手をペシっ叩いてたしなめ、フォークを添えてバスケットを差し出した。
「これ、ネリスたちのところへ届けてね。途中でつまみ食いしたらダメだからね!」
かわりにテオのバケツを受け取ると、ワカヤシが10尾入っていた。
「テオもなかなかやるわね」
「そうだな」
リリアナとハリスは顔を見合わせて笑い、またフリッターを作り始める。
「おーい! 竿引いてるぞー!」
テオの声が聞こえて顔を上げる。どうやらリリアナの竿に当たりがあったらしい。
「いま手が離せないから、テオが上げてー!」
フライパンの前に立ったままリリアナが手を振った。
あとはワカヤシを誘う感じでたまに竿を揺らせばいい。
「慌てない、慌てない」
こういうのは、のんびり構えないと……そう自分に言い聞かせながら折り畳みチェアに腰かけようとした時、興奮した甲高い声が聞こえた。
「ネリス様! これもしかして!」
マリールの竿がしなってプルプル小刻みに震えている。
早速ワカヤシがヒットしたらしい。
竿を持つマリールの手にネリスも手を重ねて一緒に引き上げると、五連針の四か所にワカヤシが食いついていた。
嬉しそうにそれを見せるマリールにリリアナも拍手を送った。
活きのいいワカヤシにおっかなびっくりのマリールの代わって、ネリスが針から外してバケツに入れている。その様子を見たリリアナは、ますます口元を緩ませた。
マリールは釣りは初めてだと言っていたが、ビギナーズラックなのかそれとも才能があるのか、彼女はその後も大当たりを連発した。
ネリスは自分の釣りそっちのけで、甲斐甲斐しくマリールの手伝いをしている。
離れた場所にいるテオを見やると、ちょうどワカヤシを釣り上げているところだった。それなりの釣果をあげているようだ。
よかった、釣りが得意って言ってたのは本当だったのね。
もしもテオがボウズだったらイライラして氷を叩き割るかもしれないと危惧していたリリアナは、ホッと胸をなでおろす。
振り返ると、ハリスが指でオッケーサインを出した。
油の温度が適温になったようだ。
リリアナは立ち上がってネリスたちに近寄った。
「一旦、調理してもらうわね」
バケツを見ると、ざっと数えただけでもすでに20尾ほどのワカヤシが入っている。
「マリール、あなたすごいわね! 筋がいいわ!」
まだ1尾も釣れていないくせに何目線だと思われそうなことをリリアナが言っても、マリールはまったく気にせず可愛らしくはにかんでいる。
「ありがとうございます。とっても楽しいです」
そんな彼女を、ネリスが眩しそうに目を細めて見ている様子が微笑ましい。
最初のギクシャクした雰囲気はどこへやら、ワカヤシ釣りで親密度アップ作戦がうまくいっていることに満足して、リリアナはハリスの元へバケツを運んだ。
「お、ちょうどいい大きさだな」
ハリスは早速ワカヤシに水溶き小麦粉の衣をつけて油に投入していった。
手伝うリリアナにコハクがすり寄って来て、足元を温めてくれる。
ワカヤシは片手のてのひらに乗るほどの小さな魚だ。
小ぶりのものは、はらわたも取らずにそのままで、そこそこ育っているものは包丁でサッとはらわたを取り除いてから揚げる。
サクっと揚がったワカヤシに塩を振り、あっというまにワカヤシのフリッターが完成した。
ワカヤシは、頭から尻尾まで骨も全て食べられるのが魅力のひとつだ。
バスケットに並べていると、横からヒョイっと手が伸びてきた。
「うわ、美味そうだな」
つまみ食いしたのはテオだ。
「ちょっと! これマリールちゃんの分なんだから、やめてよね!」
サクサクといい音を立ててワカヤシのフリッターを咀嚼しているテオは、聞く耳を持たずにさらに手を伸ばそうとする。
リリアナはその手をペシっ叩いてたしなめ、フォークを添えてバスケットを差し出した。
「これ、ネリスたちのところへ届けてね。途中でつまみ食いしたらダメだからね!」
かわりにテオのバケツを受け取ると、ワカヤシが10尾入っていた。
「テオもなかなかやるわね」
「そうだな」
リリアナとハリスは顔を見合わせて笑い、またフリッターを作り始める。
「おーい! 竿引いてるぞー!」
テオの声が聞こえて顔を上げる。どうやらリリアナの竿に当たりがあったらしい。
「いま手が離せないから、テオが上げてー!」
フライパンの前に立ったままリリアナが手を振った。
0
あなたにおすすめの小説
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し
gari@七柚カリン
ファンタジー
突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。
知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。
正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。
過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。
一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。
父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!
地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……
ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!
どうする? どうなる? 召喚勇者。
※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
ライフ・サンクチュアリ ~追放された回復術師の第二の人生~
都一
ファンタジー
回復魔法使いアシュ・ルーンフォードは、英雄パーティ、アジュールブレイドを追放された。
彼の回復魔法は強力すぎるがゆえに魔力制御ができず、戦闘中に倒れてしまう——回復役として致命的な欠陥を抱えていたからだ。「安定した回復役の方が役に立つ」。冷酷な言葉と共に、仲間を、居場所を失った。
辺境の町エルムヘイヴンに流れ着いたアシュは、廃墟となった古いギルドを拠点に、小さなギルド「ライフ・サンクチュアリ」を立ち上げる。剣士ミラ、孤児のエリーゼ、騎士オズワルドやレオナルド——新たな仲間たちと共に、地道に依頼をこなしながら、もう一度やり直そうとしていた。
しかし、アシュの平穏な日々は突如として終わりを告げる。
胸に浮かび上がる黒い痣。それは、300年前に存在した「神官王」の力が目覚めた証だった。自らの回復魔法「ライフ・サンクチュアリ」——それは単なる回復魔法ではなく、生命そのものを操る神官王の遺産だった。なぜアシュがこの力を使えるのか? 彼の出自に隠された秘密とは?
そして、その力を狙う謎の組織「ヴォイド」が暗躍を始める。次々と襲いかかる刺客、仲間の裏切り、明かされていく衝撃の真実——。
使えば使うほど命を削る、諸刃の剣。それでも、アシュは仲間を守るために戦い続ける。
追放から始まった第二の人生は、やがて世界の運命を左右する戦いへと繋がっていく——。
辺境の小さなギルドから始まる、命を賭した希望と絆の物語。果たしてアシュは、仲間たちと共に未来を掴むことができるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる