49 / 75
閑話 テオの留守番とキングマンドラゴラ
(3)
しおりを挟む
うんうん、と頷きながらジョージの話を聞いていたテオはいいことを思いついた。
「ジョージ、おまえ家事は得意か?」
「え、家事ですか? はい、もともと調理士を目指していたんで料理を中心に一通りは……」
ジョージが言い終える前にテオが彼の手をガシっと握る。
「よし、さっきの話は聞かなかったことにしてやる。俺がジョージの分までしっかり戦ってアイツをサクっと倒してきてやるから、その代わりにここを出たら俺ん家の手伝いをしてくれ」
ジョージが戸惑いながらも頷いたのを見届けて、テオはキングマンドラゴラに向かっていった。
緊急要請だったため、討伐隊の中にはリストランテ・ガーデンの調理士たちまでいる。
「丸々太って美味そうじゃねーか!」
テオが豪快に斧を振り回し、触手を1本切り落とした。
昼食がひどかったせいで空腹のテオには、キングマンドラゴラが食材にしか見えない。
おあつらえ向きに調理士が何人もこの場に居合わせている。討伐完了後はなにかご馳走してくれるだろう。
テオは、ちょっとリリアナの気持ちがわかった気がした。
「とっとと倒して食ってやるからなっ!」
ハリスとリリアナと出会わなければ決して口にしなかったであろう言葉を叫びながら、凄まじい闘気を放つ。
そんなテオの活躍もあり、ほどなくしてキングマンドラゴラは討伐完了となった。
大怪我を負った者もおらず全員無事だ。
そしてテオの目論見通り、安全地帯で調理士たちがキングマンドラゴラを捌いてガーデン料理を振る舞ってくれた。
コンソメ仕立てのマンドラゴラのポトフをはじめ、柑橘系のハーブを使った爽やかな風味のマンドラゴラサラダ、緑色の葉の部分をみじん切りにしてそぼろ風にしたあんかけ。
クリーム煮は、マンドラゴラが口の中でとろけていく絶品だった。
続々と出来上がる料理を、テオは片っ端から食べていく。
「美味すぎる!」
サラダのシャキっとした歯ごたえも、よく煮込まれてほろりと崩れる食感も、どちらも楽しくて美味しい。
食べる手が止まらず、すごい勢いでかき込み続けた。
マンドラゴラの味にクセがないため肉とも魚介とも相性が良く、ハリスならこれでどんな料理を作るんだろうかと考えて、ふと隣にリリアナがいないことを寂しく思ったテオだ。
「相当お腹が空いていたんですね」
今日はリリアナの代わりにジョージが隣にいる。
「そうなんだよ。リリアナが俺を置いていくから……」
するとジョージは、納得いったように大きく頷いた。
「なるほど、奥さんが出ていったんですね!」
「ちげーし!」
夕食の分もと欲張ってマンドラゴラ料理をたらふく食べたテオは、大満足でジョージを家に連れ帰った。
「料理はもういいから掃除を手伝ってくれ」
リリアナのメモを渡すと、ジョージはそれにサッと目を通して頷いた。
「ええっと、エプロンはありますか?」
「エプロン? 必要か?」
確かにリリアナはこの家で家事をする時にいつもエプロンを着用しているが、テオは着けなくても構わない。
「家事をする時の装備みたいなものです。エプロンを着けることで『さあ、やるぞ』って気合を入れるんですよ」
「そ、そうなのか」
急に雰囲気の変わったジョージに少々たじろぎながら、キッチンの棚に畳んで置いてあったエプロンを掴んでジョージに手渡す。
「テオさんも着けるんですよ!」
「ええっ!?」
なぜだろう、エプロン着用でさらにジョージに妙なスイッチが入ってしまったらしい。
ジョージに家事を頼んだのは自分だ。ちょっと思っていたのと違うとも言いにくく、指示されるままにもう一枚の花柄のエプロンを着ける。
キングマンドラゴラを前にライフルを持つ手を震わせていたジョージは、家事となると人が変わったようにハキハキ、キビキビしている。
「こいつ、冒険者向いてねえな……」
「テオさん、手を止めない! しっかり雑巾がけしてください!」
「はい!」
こうしてジョージの厳しい指導の下、テオは拙いながらも一通りの家事をこなせるようになった。
数日後、予定よりも早く帰ってきたリリアナにエプロン姿を見られたのは誤算だったが、リリアナの元気な声を聞いてほんの少し胸が高鳴ったことは絶対に秘密だ。
(閑話・了)
「ジョージ、おまえ家事は得意か?」
「え、家事ですか? はい、もともと調理士を目指していたんで料理を中心に一通りは……」
ジョージが言い終える前にテオが彼の手をガシっと握る。
「よし、さっきの話は聞かなかったことにしてやる。俺がジョージの分までしっかり戦ってアイツをサクっと倒してきてやるから、その代わりにここを出たら俺ん家の手伝いをしてくれ」
ジョージが戸惑いながらも頷いたのを見届けて、テオはキングマンドラゴラに向かっていった。
緊急要請だったため、討伐隊の中にはリストランテ・ガーデンの調理士たちまでいる。
「丸々太って美味そうじゃねーか!」
テオが豪快に斧を振り回し、触手を1本切り落とした。
昼食がひどかったせいで空腹のテオには、キングマンドラゴラが食材にしか見えない。
おあつらえ向きに調理士が何人もこの場に居合わせている。討伐完了後はなにかご馳走してくれるだろう。
テオは、ちょっとリリアナの気持ちがわかった気がした。
「とっとと倒して食ってやるからなっ!」
ハリスとリリアナと出会わなければ決して口にしなかったであろう言葉を叫びながら、凄まじい闘気を放つ。
そんなテオの活躍もあり、ほどなくしてキングマンドラゴラは討伐完了となった。
大怪我を負った者もおらず全員無事だ。
そしてテオの目論見通り、安全地帯で調理士たちがキングマンドラゴラを捌いてガーデン料理を振る舞ってくれた。
コンソメ仕立てのマンドラゴラのポトフをはじめ、柑橘系のハーブを使った爽やかな風味のマンドラゴラサラダ、緑色の葉の部分をみじん切りにしてそぼろ風にしたあんかけ。
クリーム煮は、マンドラゴラが口の中でとろけていく絶品だった。
続々と出来上がる料理を、テオは片っ端から食べていく。
「美味すぎる!」
サラダのシャキっとした歯ごたえも、よく煮込まれてほろりと崩れる食感も、どちらも楽しくて美味しい。
食べる手が止まらず、すごい勢いでかき込み続けた。
マンドラゴラの味にクセがないため肉とも魚介とも相性が良く、ハリスならこれでどんな料理を作るんだろうかと考えて、ふと隣にリリアナがいないことを寂しく思ったテオだ。
「相当お腹が空いていたんですね」
今日はリリアナの代わりにジョージが隣にいる。
「そうなんだよ。リリアナが俺を置いていくから……」
するとジョージは、納得いったように大きく頷いた。
「なるほど、奥さんが出ていったんですね!」
「ちげーし!」
夕食の分もと欲張ってマンドラゴラ料理をたらふく食べたテオは、大満足でジョージを家に連れ帰った。
「料理はもういいから掃除を手伝ってくれ」
リリアナのメモを渡すと、ジョージはそれにサッと目を通して頷いた。
「ええっと、エプロンはありますか?」
「エプロン? 必要か?」
確かにリリアナはこの家で家事をする時にいつもエプロンを着用しているが、テオは着けなくても構わない。
「家事をする時の装備みたいなものです。エプロンを着けることで『さあ、やるぞ』って気合を入れるんですよ」
「そ、そうなのか」
急に雰囲気の変わったジョージに少々たじろぎながら、キッチンの棚に畳んで置いてあったエプロンを掴んでジョージに手渡す。
「テオさんも着けるんですよ!」
「ええっ!?」
なぜだろう、エプロン着用でさらにジョージに妙なスイッチが入ってしまったらしい。
ジョージに家事を頼んだのは自分だ。ちょっと思っていたのと違うとも言いにくく、指示されるままにもう一枚の花柄のエプロンを着ける。
キングマンドラゴラを前にライフルを持つ手を震わせていたジョージは、家事となると人が変わったようにハキハキ、キビキビしている。
「こいつ、冒険者向いてねえな……」
「テオさん、手を止めない! しっかり雑巾がけしてください!」
「はい!」
こうしてジョージの厳しい指導の下、テオは拙いながらも一通りの家事をこなせるようになった。
数日後、予定よりも早く帰ってきたリリアナにエプロン姿を見られたのは誤算だったが、リリアナの元気な声を聞いてほんの少し胸が高鳴ったことは絶対に秘密だ。
(閑話・了)
0
あなたにおすすめの小説
目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し
gari@七柚カリン
ファンタジー
突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。
知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。
正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。
過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。
一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。
父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!
地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……
ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!
どうする? どうなる? 召喚勇者。
※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
ライフ・サンクチュアリ ~追放された回復術師の第二の人生~
都一
ファンタジー
回復魔法使いアシュ・ルーンフォードは、英雄パーティ、アジュールブレイドを追放された。
彼の回復魔法は強力すぎるがゆえに魔力制御ができず、戦闘中に倒れてしまう——回復役として致命的な欠陥を抱えていたからだ。「安定した回復役の方が役に立つ」。冷酷な言葉と共に、仲間を、居場所を失った。
辺境の町エルムヘイヴンに流れ着いたアシュは、廃墟となった古いギルドを拠点に、小さなギルド「ライフ・サンクチュアリ」を立ち上げる。剣士ミラ、孤児のエリーゼ、騎士オズワルドやレオナルド——新たな仲間たちと共に、地道に依頼をこなしながら、もう一度やり直そうとしていた。
しかし、アシュの平穏な日々は突如として終わりを告げる。
胸に浮かび上がる黒い痣。それは、300年前に存在した「神官王」の力が目覚めた証だった。自らの回復魔法「ライフ・サンクチュアリ」——それは単なる回復魔法ではなく、生命そのものを操る神官王の遺産だった。なぜアシュがこの力を使えるのか? 彼の出自に隠された秘密とは?
そして、その力を狙う謎の組織「ヴォイド」が暗躍を始める。次々と襲いかかる刺客、仲間の裏切り、明かされていく衝撃の真実——。
使えば使うほど命を削る、諸刃の剣。それでも、アシュは仲間を守るために戦い続ける。
追放から始まった第二の人生は、やがて世界の運命を左右する戦いへと繋がっていく——。
辺境の小さなギルドから始まる、命を賭した希望と絆の物語。果たしてアシュは、仲間たちと共に未来を掴むことができるのか?
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる