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そうして迎えた整美委員会の顔合わせ当日。
藤堂君はあいかわらず不機嫌な様子でわたしの隣に座っている。
サボるんじゃないかと思っていたら意外としっかり出席したのはえらいけど、できればサボってほしかった!
上級生たちが「何あいつ……」「態度悪いね」とヒソヒソささやき合っている声が聞こえていても、藤堂君は上半身をかたむけて机に頬杖をついたままだ。
でもわたしはその理由を知っている。
妖の山を背負っているんだもん、そりゃあ重いしダルいよね。
正直にみなさんに、
「藤堂君は大量の妖にとり憑かれていているだけで、決して態度が悪いわけではありません」
と言ったところで信じてくれる人はいないだろう。
それに、たぶん藤堂君も誰かにかばってもらうことなど望んでいないと思う。
だから藤堂君には申し訳ないけど、ここは知らんぷりするほかない。
整美委員担当の先生が教室に入ってきて整美委員の仕事内容の説明が始まった。
整美委員は1年生から3年生の各クラス2名ずつが選出されていて、学校の清掃と美化活動に関する仕事やイベントの企画を担っている。
具体的には掃除用具の管理、トイレットペーパーの管理・補充、ごみの分別やごみを減らすための活動を行うようだ。
先生からの大まかな説明が終わると次は、委員長・副委員長決めと担当係決めに入った。
藤堂君と同じ係になったほうがいいのかな……と思いながらチラっと隣に目を向けると、藤堂君がしきりに鼻をこすっている。
なんだろう、アレルギーだろうか……?
と、よく見れば、驚いたことに小さな妖が彼の鼻にしがみついているではないか。
うずら卵に目と口があり手足が生えているような姿で、片方の手に持った小さな筆で彼の鼻をこしょこしょしているのだ。
藤堂君はそれをどうにか防ごうと鼻をこすったりシッシと追いやるような仕草をしているけれど、いたずらっ子の妖はさらにおもしろがって筆を振り回している。
「ぶふっ!」
見ていたらおかしくなって思わず吹き出してしまった。
すると藤堂君は、弾かれたように目を見開いて驚いた顔でこっちを向いた。
藤堂君と目が合ったのはこれが初めてだと思う。
「もしかして、見えんの?」
藤堂君が上半身を起こし、ずいっとこっちに迫ってくる。
「え! な、何のこと? くしゃみしただけだよ」
見えることがバレてしまうのはまずい。
というか、今の反応からすると藤堂君は自分の背中に何が乗っているのか知っている、つまり彼も見える人だってことがわかった。
妙な仲間意識を持たれると困る。
めんどうなことに巻き込まれたくないわたしは、どうにかごまかしてやり過ごそうとした。
それなのに藤堂君がわたしのほうを見て手を止めた隙に、いたずらっ子の妖が筆先を彼の鼻の穴につっこんだものだから、たまらずにまた笑ってしまった。
「あははっ、何やってんの」
「やっぱり見えてるだろ」
じっとりした目でにらまれてあわてて目をそらす。
「何のことかなあ、わからないなあ」
冷や汗をかきながら棒読みで言うわたしの鼻先に、ぬっと手がのびてくる。
驚いたことに、なんとその手のひらにはいたずらっ子の妖が乗っているではないか。
「ちょっ、やめてよぉ」
筆の先がわたしの鼻に触れるくすぐったさに体をよじりながら、藤堂君の手を押しのけた。
「そこ、イチャつくのやめてね」
委員長に決まった3年の先輩に教壇からあきれた声で注意されてしまい、すみませんと小さく頭を下げる。
決してイチャついていたわけではない。
「じゃあ、まだ係が決まっていないそこのふたりは、3階と4階のトイレ係ってことでいい?」
筆を持ったいたずらっ子のせいで係決めの話を全く聞いていなかったわたしたちは、委員長のその提案にうなずくしかなかったのだった。
藤堂君はあいかわらず不機嫌な様子でわたしの隣に座っている。
サボるんじゃないかと思っていたら意外としっかり出席したのはえらいけど、できればサボってほしかった!
上級生たちが「何あいつ……」「態度悪いね」とヒソヒソささやき合っている声が聞こえていても、藤堂君は上半身をかたむけて机に頬杖をついたままだ。
でもわたしはその理由を知っている。
妖の山を背負っているんだもん、そりゃあ重いしダルいよね。
正直にみなさんに、
「藤堂君は大量の妖にとり憑かれていているだけで、決して態度が悪いわけではありません」
と言ったところで信じてくれる人はいないだろう。
それに、たぶん藤堂君も誰かにかばってもらうことなど望んでいないと思う。
だから藤堂君には申し訳ないけど、ここは知らんぷりするほかない。
整美委員担当の先生が教室に入ってきて整美委員の仕事内容の説明が始まった。
整美委員は1年生から3年生の各クラス2名ずつが選出されていて、学校の清掃と美化活動に関する仕事やイベントの企画を担っている。
具体的には掃除用具の管理、トイレットペーパーの管理・補充、ごみの分別やごみを減らすための活動を行うようだ。
先生からの大まかな説明が終わると次は、委員長・副委員長決めと担当係決めに入った。
藤堂君と同じ係になったほうがいいのかな……と思いながらチラっと隣に目を向けると、藤堂君がしきりに鼻をこすっている。
なんだろう、アレルギーだろうか……?
と、よく見れば、驚いたことに小さな妖が彼の鼻にしがみついているではないか。
うずら卵に目と口があり手足が生えているような姿で、片方の手に持った小さな筆で彼の鼻をこしょこしょしているのだ。
藤堂君はそれをどうにか防ごうと鼻をこすったりシッシと追いやるような仕草をしているけれど、いたずらっ子の妖はさらにおもしろがって筆を振り回している。
「ぶふっ!」
見ていたらおかしくなって思わず吹き出してしまった。
すると藤堂君は、弾かれたように目を見開いて驚いた顔でこっちを向いた。
藤堂君と目が合ったのはこれが初めてだと思う。
「もしかして、見えんの?」
藤堂君が上半身を起こし、ずいっとこっちに迫ってくる。
「え! な、何のこと? くしゃみしただけだよ」
見えることがバレてしまうのはまずい。
というか、今の反応からすると藤堂君は自分の背中に何が乗っているのか知っている、つまり彼も見える人だってことがわかった。
妙な仲間意識を持たれると困る。
めんどうなことに巻き込まれたくないわたしは、どうにかごまかしてやり過ごそうとした。
それなのに藤堂君がわたしのほうを見て手を止めた隙に、いたずらっ子の妖が筆先を彼の鼻の穴につっこんだものだから、たまらずにまた笑ってしまった。
「あははっ、何やってんの」
「やっぱり見えてるだろ」
じっとりした目でにらまれてあわてて目をそらす。
「何のことかなあ、わからないなあ」
冷や汗をかきながら棒読みで言うわたしの鼻先に、ぬっと手がのびてくる。
驚いたことに、なんとその手のひらにはいたずらっ子の妖が乗っているではないか。
「ちょっ、やめてよぉ」
筆の先がわたしの鼻に触れるくすぐったさに体をよじりながら、藤堂君の手を押しのけた。
「そこ、イチャつくのやめてね」
委員長に決まった3年の先輩に教壇からあきれた声で注意されてしまい、すみませんと小さく頭を下げる。
決してイチャついていたわけではない。
「じゃあ、まだ係が決まっていないそこのふたりは、3階と4階のトイレ係ってことでいい?」
筆を持ったいたずらっ子のせいで係決めの話を全く聞いていなかったわたしたちは、委員長のその提案にうなずくしかなかったのだった。
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