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整美委員会が終わって教室を出ると、わたしは一目散に1年生用の昇降口に向かった。
あれこれ詮索されるのは困るから逃げ出したかったのだ。それなのに――。
階段を懸命に駆け下りたにもかかわらず、あっさり藤堂君につかまってしまった。
放課後の静かな階段の踊り場で、わたしはいま妖を山ほど背負った藤堂君に壁ドンされている。
「浮島さん、見えてるよね? コイツらのこと」
少し青みがかったきれいな目にじっと見つめられて身動きがとれない。
「なにも! なーんにも見えてないから!」
視界に入れないようにしているのに、この距離ではどうにもならない。
生まれて初めてのあこがれの壁ドンの相手がまさかの妖まみれだなんて、ロマンスではなくホラーだ。
残念すぎる。
藤堂君の背負った妖たちが興味津々な様子でこちらを見てくる。
『この子だあれ?』
『弥一のお友達?』
『ねえ、遊ぼうよ』
半透明の細い手がにゅっと伸びてきてわたしの頬に触れようとするものだから、思わず「ひっ」と声が出た。
逃げたいのに壁ドンされているせいで身動きが取れない。
頬に触れた妖の手からひんやりした感覚が伝わってきてブルっとふるえてしまった。
「さっきから俺の頭の上とか肩の上とか見てるよね? この手も見えてるよね?」
しまった、目線と態度でバレバレだ。
「気になってんだろ? だったらさ、ちょっと付き合ってよ」
気になってはいますが、関わり合いにはなりたくないです! という選択肢はあるんだろうか。そんなことを思いながらおそるおそる聞いてみる。
「ちょっと付き合うとは、どちらへ?」
すると藤堂君は形のいいくちびるを片方だけ上げてにやりとする。
「俺ん家」
ええぇぇぇっ!?
片側はまだ水が張られていない田んぼ、もう片方はその田んぼの所有者である農家さんの家が連なるのどかな道を藤堂君と自転車で走った。
舗装はされいるけれどあまり車が通らないから、通学時間帯はわがM高校の自転車通学の生徒たちの専用道路のような状態になる。
今日は委員会の帰りだから、すでに自転車はまばらだ。
入学式の頃はまだ肌寒かったはずなのに、日に日に気温が高くなって自転車のペダルを懸命にこぐと汗ばむようになってきた。
急ぐ必要のない帰り道は、この風景を見ながらのんびり自転車を走らせているわたしだけど、今日は緊張感を持ってあまりよそ見もせずにこいでいる。
その理由はもちろん、藤堂君といっしょだから。
自宅の方向が逆なら行きたくないと言ってみたけど、残念なことに同じ方向だった。
しかも自転車通学というのまでいっしょ。
今日は委員会があるから帰りが遅くなるとお母さんに言ってあるから、多少なら帰宅時間が遅くなるのはかまわない。
そして藤堂君の言う通りで、どうして妖の山を背負っているのか気になってしかたなかったのもたしかだった。
「わたしを家に招いて妖の山のいきさつを説明するよりも、お祓いをしてもらったほうがいいんじゃないの? わたし、いい神社知ってるよ」
田んぼを抜けると小高い山があって、そこに藤宮神社がある。
厄除け、厄祓いの神社で、特に今の神主さんはお祓いが得意なことで有名だ。
少々お金はかかるかもしれないけど、そこでお祓いしてもらうのが手っ取り早いと思う。
「それ藤宮神社だろ?」
前を走る藤堂君が右前方に見える山を指さし、こっちをチラリと振り返った。
「そこ、俺ん家だから」
はあっ!?
あれこれ詮索されるのは困るから逃げ出したかったのだ。それなのに――。
階段を懸命に駆け下りたにもかかわらず、あっさり藤堂君につかまってしまった。
放課後の静かな階段の踊り場で、わたしはいま妖を山ほど背負った藤堂君に壁ドンされている。
「浮島さん、見えてるよね? コイツらのこと」
少し青みがかったきれいな目にじっと見つめられて身動きがとれない。
「なにも! なーんにも見えてないから!」
視界に入れないようにしているのに、この距離ではどうにもならない。
生まれて初めてのあこがれの壁ドンの相手がまさかの妖まみれだなんて、ロマンスではなくホラーだ。
残念すぎる。
藤堂君の背負った妖たちが興味津々な様子でこちらを見てくる。
『この子だあれ?』
『弥一のお友達?』
『ねえ、遊ぼうよ』
半透明の細い手がにゅっと伸びてきてわたしの頬に触れようとするものだから、思わず「ひっ」と声が出た。
逃げたいのに壁ドンされているせいで身動きが取れない。
頬に触れた妖の手からひんやりした感覚が伝わってきてブルっとふるえてしまった。
「さっきから俺の頭の上とか肩の上とか見てるよね? この手も見えてるよね?」
しまった、目線と態度でバレバレだ。
「気になってんだろ? だったらさ、ちょっと付き合ってよ」
気になってはいますが、関わり合いにはなりたくないです! という選択肢はあるんだろうか。そんなことを思いながらおそるおそる聞いてみる。
「ちょっと付き合うとは、どちらへ?」
すると藤堂君は形のいいくちびるを片方だけ上げてにやりとする。
「俺ん家」
ええぇぇぇっ!?
片側はまだ水が張られていない田んぼ、もう片方はその田んぼの所有者である農家さんの家が連なるのどかな道を藤堂君と自転車で走った。
舗装はされいるけれどあまり車が通らないから、通学時間帯はわがM高校の自転車通学の生徒たちの専用道路のような状態になる。
今日は委員会の帰りだから、すでに自転車はまばらだ。
入学式の頃はまだ肌寒かったはずなのに、日に日に気温が高くなって自転車のペダルを懸命にこぐと汗ばむようになってきた。
急ぐ必要のない帰り道は、この風景を見ながらのんびり自転車を走らせているわたしだけど、今日は緊張感を持ってあまりよそ見もせずにこいでいる。
その理由はもちろん、藤堂君といっしょだから。
自宅の方向が逆なら行きたくないと言ってみたけど、残念なことに同じ方向だった。
しかも自転車通学というのまでいっしょ。
今日は委員会があるから帰りが遅くなるとお母さんに言ってあるから、多少なら帰宅時間が遅くなるのはかまわない。
そして藤堂君の言う通りで、どうして妖の山を背負っているのか気になってしかたなかったのもたしかだった。
「わたしを家に招いて妖の山のいきさつを説明するよりも、お祓いをしてもらったほうがいいんじゃないの? わたし、いい神社知ってるよ」
田んぼを抜けると小高い山があって、そこに藤宮神社がある。
厄除け、厄祓いの神社で、特に今の神主さんはお祓いが得意なことで有名だ。
少々お金はかかるかもしれないけど、そこでお祓いしてもらうのが手っ取り早いと思う。
「それ藤宮神社だろ?」
前を走る藤堂君が右前方に見える山を指さし、こっちをチラリと振り返った。
「そこ、俺ん家だから」
はあっ!?
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