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日が暮れると同時に大通りが通行止めとなり、車の往来がなくなった。
「見えた」
「来た!」
ざわめきはじめた沿道の人たちが一斉に稲荷神社の方向に視線を向ける。
提灯の淡い光が揺れながら近づいてくる。
行列の参加者の服装は浴衣だったり普段着だったりとバラバラだけど、みんな同じお面をつけて提灯を手に持っている。
「わあっ、お狐様だね!」
わたしは思わず身を乗り出して不思議な行列を眺めた。
「稲荷神社の氏子さんたちが行列に参加するんだ。俺も子供の頃親同士のつながりで参加したことがある」
「いいなー!」
そのとき、行列からわたしの名を呼ぶ声が聞こえた気がして、視線を藤堂君から行列に戻した。
「ヨーコちゃんだ!」
あでやかな赤い着物をまとい狐のお面をつけたヨーコちゃんが、こちらに向かって笑顔で手を振っている。
「ヨーコちゃん、素敵!」
わたしは思い切り手を振り返す。
おそらく周囲の人たちにはヨーコちゃんの姿は見えていないのだろう。
苦笑しながら小さく手を振る藤堂君の背後では、妖たちも盛大にヨーコちゃんを囃し立てている。
『お面見つかってよかったね』
『色っぽいねえ』
ヨーコちゃんは誇らしげにくるりと一回転すると、再び行列とともに歩いていった。
その後ろ姿を見送りながら、お面が見つかって本当によかったと改めて思う。
きっとヨーコちゃんにとっては、年に一度のこのお祭りに参加することがとても大事なのだろう。
「あの祠、修理するようにうちの神社から稲荷神社の方に伝えてもらったから」
「そうなの? よかった、直してもらえるんだね」
藤堂君が笑顔でうなずく。
「祠の存在自体、忘れられてたみたいだけどな。きっときれいになると思う」
よかった。
これでヨーコちゃんがお面の保管場所に困ることもないだろう。
「このあと行列についていって神社に戻るところまでいると帰りがすごく混むけど、どうする?」
「ヨーコちゃんに会えたからそこまではいいかな。駅前の露店を見て回りたい」
「そうしよう」
狐祭りに慣れている様子の藤堂君は、毎年誰と来ているのか。
またもやむくむくと疑惑が膨れ上がって気になりだしてしまったから、思い切って聞くことにした。
「藤堂君、いつもこのお祭りに誰と来てるの?」
「俺? ばーちゃんとよく来てた」
おばあちゃん!?
藤堂君が懐かしそうに目を細める。
「ばーちゃん目が悪くてさ、俺がいつも手を引いてあげてたんだ」
そういうことだったの?
なんだか拍子抜けして、うふふっと笑いが漏れる。
笑い続けるわたしを、藤堂君が不思議そうに見ていた。
「見えた」
「来た!」
ざわめきはじめた沿道の人たちが一斉に稲荷神社の方向に視線を向ける。
提灯の淡い光が揺れながら近づいてくる。
行列の参加者の服装は浴衣だったり普段着だったりとバラバラだけど、みんな同じお面をつけて提灯を手に持っている。
「わあっ、お狐様だね!」
わたしは思わず身を乗り出して不思議な行列を眺めた。
「稲荷神社の氏子さんたちが行列に参加するんだ。俺も子供の頃親同士のつながりで参加したことがある」
「いいなー!」
そのとき、行列からわたしの名を呼ぶ声が聞こえた気がして、視線を藤堂君から行列に戻した。
「ヨーコちゃんだ!」
あでやかな赤い着物をまとい狐のお面をつけたヨーコちゃんが、こちらに向かって笑顔で手を振っている。
「ヨーコちゃん、素敵!」
わたしは思い切り手を振り返す。
おそらく周囲の人たちにはヨーコちゃんの姿は見えていないのだろう。
苦笑しながら小さく手を振る藤堂君の背後では、妖たちも盛大にヨーコちゃんを囃し立てている。
『お面見つかってよかったね』
『色っぽいねえ』
ヨーコちゃんは誇らしげにくるりと一回転すると、再び行列とともに歩いていった。
その後ろ姿を見送りながら、お面が見つかって本当によかったと改めて思う。
きっとヨーコちゃんにとっては、年に一度のこのお祭りに参加することがとても大事なのだろう。
「あの祠、修理するようにうちの神社から稲荷神社の方に伝えてもらったから」
「そうなの? よかった、直してもらえるんだね」
藤堂君が笑顔でうなずく。
「祠の存在自体、忘れられてたみたいだけどな。きっときれいになると思う」
よかった。
これでヨーコちゃんがお面の保管場所に困ることもないだろう。
「このあと行列についていって神社に戻るところまでいると帰りがすごく混むけど、どうする?」
「ヨーコちゃんに会えたからそこまではいいかな。駅前の露店を見て回りたい」
「そうしよう」
狐祭りに慣れている様子の藤堂君は、毎年誰と来ているのか。
またもやむくむくと疑惑が膨れ上がって気になりだしてしまったから、思い切って聞くことにした。
「藤堂君、いつもこのお祭りに誰と来てるの?」
「俺? ばーちゃんとよく来てた」
おばあちゃん!?
藤堂君が懐かしそうに目を細める。
「ばーちゃん目が悪くてさ、俺がいつも手を引いてあげてたんだ」
そういうことだったの?
なんだか拍子抜けして、うふふっと笑いが漏れる。
笑い続けるわたしを、藤堂君が不思議そうに見ていた。
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