不機嫌な藤堂君は今日も妖を背負っている

時岡継美

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文化祭(1)

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 我が高校の文化祭「M高祭」には、あるジンクスがある。

 たこ焼き1ふねを好きな人と半分ずつ食べること。
 フィナーレを飾る打ち上げ花火を、好きな人といっしょに見ること。
 このふたつをクリアすれば、恋がかなうというものだ。

 花火のジンクスはありがちだと思うけど、たこ焼きのほうはどうなんだろうか。
 たこ焼きを半分こだなんて、そんなことをする男女はすでに恋人同士でしょ! という気がしないでもない。

 藤堂君、たこ焼き好きかなあ。
 半分ずつ食べようって言ったらどんな顔するだろう。

 そこまで考えてハッとする。
 これじゃまるで、わたしが藤堂君を好きで、さらには恋人同士になりたいとねがっているみたいじゃない!

 藤堂君はわたしに対して恋愛感情など持っているのかいないのか、よくわからない。
 妖と会話できるわたしがいれば自分の背中に乗っている妖を引き離すことができると思っているのはまちがいないけれど。

 利用されていることに不満があるのなら、きっぱりお断りして藤堂君と距離を置けばいいだけだとわかっている。
 それなのに、どうしてこうも藤堂君のことばかりが気になってしまうんだろう。

 *
 
 文化祭を前に、藤堂君は書道部でうまくやっているかと京香ちゃんに聞いてみた。
「うん! 実はわたしもね、どうせ協調性ないんだろうなーとか、いつも仏頂面なんだろうなーって決めつけてたんだけど、意外とよく笑うしちゃんと協力してくれてるよ」
 満足している様子の答えが返ってきた。

 藤堂君は、やると決めたからにはしっかりやるつもりだと最初にみんなの前で宣言したらしい。

 トラブルを起こさずに仲良くやってくれているならよかった。
 そう聞いて安心できるはずなのに、どこかさみしいと思ってしまうこの気持ちは何なのか。
 苦手な物理の点数で勝負してまで藤堂君にやってもらいたいと思ったことだ。
 練習でいそがしい藤堂君を応援するのがふつうなのに、さみしいと思うだなんて、わたしの神経はどうかしている。
 
 そんなことをグルグル考えては、ため息がもれてしまう。
 
 
 文化祭の前夜、スマホに藤堂君からメッセージが届いた。

『明日も書道部にかかりっきりになりそう。明後日はパフォーマンスが終わったら解放されると思う。たこ焼き買っといて』
 
 たこ焼きを買うヒマもなさそうだから代わりに買っておいてくれということ?
 たこ焼きのジンクスを知って言ってるの?
 知るわけないか。

 そう思いながら、クマが「おっけー」と言っているスタンプを返す。
 それに続いて「最前列で応援するから がんばってね!」というメッセージを書いて送った。
 すぐに既読がついて、親指をグっと立てた絵文字だけが返ってきた。

 簡潔なやりとりが藤堂君らしいと思って、クスっと笑ってしまった。


 書道部のパフォーマンスのうち2,3年生のほうは文化祭1日目と2日目の両方で披露することになっているけれど、1年生は2日目のみの予定になっている。
 だから1日目は京香ちゃんと藤堂君をさそっていっしょに模擬店を見て回りたいと思っていたのに、どうやら無理みたいだ。
 パフォーマンスに出演しなくても裏方でいろいろいそがしいんだろう。

 パフォーマンス内容は当日のお楽しみだと言って教えてくれない京香ちゃんは、ここ数日ずっと「ヤバい、ヤバい」と言い続けている。
 悪い意味のヤバいなのか、いい意味のヤバいなのかは不明だ。

 当日はしっかり応援してパフォーマンスの場を盛り上げようと、わたしも気合を入れたのだった。
 
 
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