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内緒のドリンクファイト 7
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「耐えれて偉いね~」
正直、家に帰ってこれたのは、奇跡だと思う。最後には歩いたら漏らしそうで、めいくんに抱えられて外に出た。いつの間にかタクシーも手配されていて、車のちょっとした振動が苦しかった以外記憶がない。
「鍵を持ってきてあげる」
そう言って俺を浴室に置いて、どこかへと消えていった。家に帰ってきた安心感で、せり上がって来ているのが分かる。必死に持ちこたえようとして、座り込んだ足の内側がびりびりと震えていた。
いくら待っても、彼は戻ってこない。背後からも音が聞こえているのが、かえって不安にさせた。鍵を紛失したのではないか。もう無理だ、今まで漏らさずにいたのが奇跡なほどで、いつ決壊させてもおかしくない。
「めいくん、はやく、もう、むり」
情けない声が浴室に反響する。血管がぞわぞわして、身体がままならない。
寂しくなって、彼の姿を思い浮かべた。
有クン。
俺の世話を焼く白い手が、お腹を撫でる。
くすぐったいものが滲んで、全身へと広がっていく。
張り詰めた部分に、一瞬だけ隙が出来た。彼以外を拒んでいる場所が独りでに緩んでいく。せき止めた瞬間のじわっとした心地の良い感覚に思考を溶かされて、怖くなった。
「だめ、だめだって! ほんとうに! だめ!」
声を出すと腹部に力が入り、沸き上がったものが進んで行く。でも、癇癪みたいに喚かないと、全部漏らしてしまいそうだった。
「どうしたの!」
俺の声を聞きつけて、後ろから待っていた人が駆けつけてくれた。振り向いて、年下の男の子に情けなく縋る。
「めいくん、もう、もれちゃう。ぬげない。たすけて……」
「そうやって命令されるのも、久しぶり。おれだけの可愛い有クン、今日は何でも叶えてあげるね」
彼は慣れた手付きで俺のズボンも、パンツも奪っていった。イメージカラーと同じピンクと今朝ぶりに対面する。
「苦しい?」
「くるしい……」
「楽にさせてあげられるのは、おれだけだよ。ちゃんと覚えて」
衣類を避難させた後、今朝と同じように背後に回って南京錠の開錠を始めた。背中に感じる彼の体温が嬉しくて、より感じれるように体重を預ける。
俺には何も出来なかったのに、めいくんの長い指先は魔法のような手捌きで外していった。
「あ~、さっき暴れてたのって、漏らしちゃったからか~」
ピンクの筒の中には、黄色い尿が溜まっていた。力なく頷くと、いいよ、と許しが出た。
「おれのために頑張ったもんね。じゃあ、気持ち良くなろっか」
筒もリングも南京錠も、すべて浴室の端に投げ捨てられた。
片腕で俺の身体を拘束し、反対の手がお腹に添えられる。直接撫でると、体内がむず痒くなった。膀胱の中を探りながら、囁かれる。
「今日はスムージーにお粥にポトフに、ドリンクが三杯。ほら、有クンのお腹、こんなにぱんぱんだよ。これ、ぜ~んぶおれがお世話してあげたからなの。嬉しいでしょ?」
「ぅん、うれしっ……!」
「褒めて」
柔く押され、解放を望むあまり早口になる。
「ありっがと、おぃしかった、たすけて」
「あはは、必死ね~。後からちゃんと褒めてもらえばいっか。じゃあ、お礼にと~っても気持ち良いことしよっか。ご主人クン、四つん這いになって~!」
「できな、できないっ!」
「出来るよ~、だっておれだけの可愛いご主人クンだもん。メイドのために頑張って!」
背後で、楽しそうに笑っていた。あんなに弄んでいた手がさっと離れ、早く早く~と言葉を弾ませている。
「おれのお手伝いなしで四つん這いになれるご主人クンが、大好き!」
「わ、わかったっ……!」
馬鹿みたいだけれど、めいくんに焚きつけられて身体を丸めた。手をついて指示された体制になると、膀胱が下へ垂れ、膨らんだお腹が誤った出口を見つけたようなもどかしさが身を焦がした。
「絶対に、漏らしちゃ駄目だよ」
ぬめっとしたものが後孔に触れ、あっという間に中に入った。久しぶりに侵入されたというのに、俺の意志とは関係なくあっさりと受け入れた。慣らす動きにたまらずきゅっと締めて、尿意も、彼の指の動きもせき止めた。
「いまだ、めっ、おかしっ、なる」
「おかしくな~れ!」
「んっ、ふやさない、でぇっ」
もう一本増えたが、浅い場所を広げるだけで、肝心のところには触れてくれない。奥が寂しく蠢き、腰が揺れ、襞の一つひとつが先へ誘導するように吸い付いた。もしも触れてくれたら、俺は漏らすと分かっているのに、身体が求めてしまっている。
「久しぶりで、おれが恋しいんだね」
指が抜かれて、目の前で火花が散った。自分が放尿したのかと錯覚して、力が緩み、またちろちろと先端からこぼれてしまった。栓を閉じようと力を入れた瞬間のじわっとした痺れも気持ち良かった。
「お顔見れないのが残念。きっと尿意に負けて、とろとろ発情顔を晒してるのに。恥ずかしい? おれにおしっこ我慢させられて、でも我慢できなくてちょっとずつ漏らして、大人なのに情けない自分が恥ずかしい?」
「あ、あぅ……」
「恥ずかしそうな声出してる! えへへ、おれ達おあいこだね」
入り口に熱いものが当てられた。同時に握り拳が臍の下に吸い付く。これは、いけないものだ。分かっているのに欲望に支配されて、身体が求めるように腹部を落とした。
「今日のご褒美だよ~」
容赦なく貫かれると同時に、拳が優しく皮膚に潜り込んだ。二カ所から的確に膀胱を刺激されているのに、蛇口は何故か固い。
良くないものを掠めて、尿意に似たものがせり上がっているのを感じた。肉壁がきゅっと強請ったのがバレて、そこをめがけて何度もそこに落とされ、鋭い稲妻が脳に走る。
「あっ、あ、なんれ、ああっ!」
自分の声と交わる淫らな音は、浴室によく響いた。
「ぎゅ~ぎゅ~ってしてあげる!」
からかうように拳がめり込んで、じんわりとした痺れを全身へ響かせる。
「ぁ、え、わかんなっ、なにっ」
快楽がぐちゃぐちゃに入り乱れて、弾けた。一気に絶頂が駆け抜け、勢いよく外に吐き出される。
その瞬間、頭が真っ白になった。
解放されるともう止めることなんて考えられず、身体が望むままに垂れ流した。通り道を削ぎながら外へ出て行く開放感は、射精とは違う柔らかい快楽の形をしていた。つま先から全身にかけて暖かく痺れ、口からは嬌声にも似ただらしない音が抜けていった。
「あー……、とまんにゃぃ……」
「どれくらい出るのかな~」
勢いが衰えると、中からも外からもぐりぐりと擦って、排泄を促す。俺の身体はいつになく正直で、残っている尿を必死に外へと押し出した。突かれるたびにぴゅっ、ぴゅっと尿が出て、おもしろ~いと無邪気にその勢いを強められてしまう。
「ぁあ、らえ、むいっ……」
「言葉もとろとろね~」
立ちこめるアンモニア臭が、どうしようもない行為だと突きつけている。社会人なのに、年下の男に生理現象の管理権を握られて、人にも迷惑を掛けて。みっともないのに、今までにないくらい気持ちが良い。ぬるま湯のような優しい絶頂が続いている感覚のは、癖になりそうだった。
もうほとんど出なくなっても、本当に空っぽなのかと拳で探るのをやめなかった。
「も、ないっ」
「言えて偉いね~、よしよし」
最後の一滴まで出して空っぽになった膀胱の隙間を埋めるように、再びきつい律動が責め立てる。先ほどよりもしっかりと、彼の熱を感じることが出来た。鋭い快楽がぴりぴりと全身に走り、感覚を塗り替えていく。ぐんぐんと奥に進んで、今までとは違う変な場所を行ったり来たりしているようだった。
「めい、くんっ、いくっ、いくっ」
言葉に出すと、快楽の輪郭がしっかりと見えた気がした。肉壁は擦られるたびに必死に抱きつき、彼の温度を感じながら再び鋭い絶頂がやってきた。
「おれも」
拳が離れ、両手でがっしりと腰を掴まれた。ぐっと押し込まれるとすぐに、彼の欲が熱く広がっていく。これも自分の中に焼き付いてくれればいいのにと思った。
二人で一つの呼吸になっていたのが、次第にばらばらになっていく。
「気持ち良かったね、これでおあいこ」
首筋にキスをされ、くすぐったくて身を捩った。めいくんは自身を引き抜いた途端に、腹部に違和感が生まれた。空っぽになった膀胱には、変な収まりの悪さがある。
「ご主人クン、立てる?」
「わ、かった」
壁を使いながら、快楽でがたつく足で立ち上がった。全身を持ち上げれたところでめいくんの補助を受けながら、向かい合う。胎内にあったものがどろっとこぼれだす不快感が気にならないほど、目の前の光景が衝撃的だった。
「あれ、そんなナース服着てたっけ……?」
「流石おれのご主人クン! もう一着ナース服を用意してたから、見せてからやりたかったのに。着替えてる間に暴れてるからびっくりしちゃった」
こっちは今、その言葉にびっくりしている。
「じゃ~ん! こっちはナース感が強くて、メイドじゃないからやめたの。有クンだけの専属ナースだよ……!」
浴室は男二人が入るには狭く、軽く動くだけでも簡単に触れ合える。めいくんは扉を閉め、これだと回れないね~と残念がっていた。それでも、腕を伸ばしたり、肩を左右に振ったりして、出来る限りで俺に見せてくれた。
よく見る薄ピンク色のナース服は、彼の身体にぴっちりと張り付いていた。幅の狭い詰め襟は喉仏を隠す気がなく、胸や肩周りは窮屈そうで、太股を申し訳程度に隠すスカートの両サイドにはスリットが入っており男らしい筋肉質をはっきりと晒している。
初めて見たメイド服は、かろうじて骨格の雄々しさを誤魔化せていた。でも、私服の彼や、今のような隠しようのない衣装から、はっきりと分からされた。どんな格好をしているなんて最早どうでもよくて、ただめいくんのすべてが可愛い。俺のために悩んでくれるのも、ろくでもない意地悪をするもの、分かりやすく照れているのも、彼の内面のすべてが愛おしくて、レースやフリルが一層可愛く飾りたててくれている。
「似合ってる、すごく。俺のために選んでくれた君が、何よりも可愛いよ」
「あ、あるクン。ありがと……」
照れてこちらを見れなくなった彼を、汚れたまま抱きしめた。この可愛らしさの前では、俺がなにをしたってシミ一つつくことはないのだろう。
我慢させられて、なにもかもが気にならなくなっていた。
「めいくん」
言葉に反応くれた彼に、背伸びしてそっと唇を寄せる。おずおずと開いてくれた中に舌を伸ばし、肉厚なものと絡めた。それだけで満たされて、同時に物足りなくなった。
「嫌だった、かな」
顔を離して問いかければ、答えを教えるように、後頭部を掴まれて深く口付けされた。先ほどとは違う荒々しさに、下腹部が切なく痺れた。瞳は俺を溶かそうとするように、甘くこちらを見つめている。
混じり合う水音が強く鼓膜を揺らしていた。
離れても、どちらともつかない唾液が、愛おしく繋いでくれている。
「……ご主人クンの身体を洗ってあげま~す!」
照れ隠しなのか、俺から逃げるようにシャワーの蛇口に手を伸ばした。出てきた水はひんやりとしていたが、身体の熱は冷めそうにない。
ワイシャツも、ナース服も濡れていた。張り付くのも気にならないほど、俺の心は彼の方だけを向いている。
「めいくんのおかげで、体力がついたんだ。今、眠くなってないよ」
狭くて、隠れる場所なんてどこにもないのに。俺の視線からも、言葉からも、必死に逃げようとしている。
「俺との約束。私服のめいくんも可愛かったよ。シンプルなのが良く似合ってて、もっと君が可愛いって気付けた。この衣装も俺を考えてピンクにしてるんでしょ? りっちゃんさんから聞いたよ」
突然の人物に驚いたのか、ようやく彼はこっちを見てくれた。
「俺にとっては、あのお店の中で、間違いなくめいくんが一番可愛いと思う」
「ある、クン」
「きっと、君にとっては可愛いが何よりも大切なんだよね。分かってあげれなくて、ごめん。これからは、もっとめいくんのことを教えて?」
初めて会った時に知って欲しいって言ってくれたのは、めいくんの方だった。幼い子に言い聞かせるような優しさを持って、垂れ目に伝えた。結局瞳には逃げられてしまったけれど、ナース服の裾をぎゅっと握り、小さく頷いてくれた。
温かくなったシャワーが心地よく俺達を包んでいる。
「……うん、いっぱい教えてあげる」
「ありがとう」
照れる彼をずっと見ていたかったけれど、それは叶わなかった。ハッとして、瞳も睫毛も忙しなく動かし、こういう照れてるおれも可愛いって言わないの、といじらしい怒りが飛んできた。
「ずっと可愛いって思ってたよ」
「……ふ~ん」
ようやく隠れる場所に気付いたらしい。俺の首元に顔を埋め、ぐりぐりと顔を押しつけた。
「嬉しい。もっと褒めて、可愛いって言って、撫でて」
「いいの?」
「有クンだけ、特別に許してあげる」
ヘアメイクの解かれた赤茶は、すでにシャワーで濡れていた。彼で言うところの、俺で上書きするように表面を撫でる。水で固まっていたけれど、あの柔らかい感触が皮膚上には再現されていた。
「可愛いよ、めい」
大切な妹や弟と同じ呼び方を、彼にしてあげたかった。
「……呼び捨ては今日しか許してあげない」
「ありがとう」
う~、と呻いているのを、ただただ眺めていた。髪の毛が項に張り付いて、シンプルなピアスに彩られた耳の形がよく見えた。綺麗に収まり、浴室の照明の光を浴びて、それぞれが自己主張を強めていた。これも、彼の本来の趣味なのかなと思うと、愛おしかった。
「もういっかい、しよ」
「いいよ」
「有クンの許可なんて求めてないもん。おれが言ったら絶対なの」
顔を上げて、唇を奪われる。彼の瞳に反射した俺が、こんなにも表情を緩めているなんて信じられなかった。自分の知らない主藤有が、今暴かれている。
互いを求め合って必死にもつれ、萎えていたはずの欲望は一瞬にして熱を取り戻していた。立ったまま押し当てられて、俺は可愛いメイドに身体を預けた。
体重を借りて、深く、沈み込んでいく。
「め、いっ……!」
「もっと呼んでいいよ」
「んぁ、めい、めいっ……!」
「可愛いね、有クン」
今までとは違う、互いの温度が一つになるような心地良さが、揺れるたびに身を焦がした。それなのに、そのどこかに少しだけ掛け合わない違和感がある。
「めい、かわいぃっ」
名前を呼ぶと、それは近付いて、また遠ざかっていく。その正体を掴めないまま、与えられる快楽によって思考は溶かされていく。
「好き、有クン。おれだけの可愛いご主人クン。絶対に離してあげないからね」
愛おしさが弾けて、胎内でも彼の熱が染み込んでいくのを感じていた。
明日は仕事じゃなければよかったのに。寝れないと嘆いていた日が羨ましくなるほど、夜が更けていくのを悔しく思った。
目覚めは、驚くほどにすっきりとしていた。部屋は真っ暗で、目の前のもの以外を探ることは出来ない。
今日も仕事だが、寝たいとは思わなかった。狭いベッドで、俺を抱きしめている男の子の髪を梳く。寝る瞬間も可愛いおれなの! と自信満々に言って、フリルのついたルームウェアを選んでくれていたのは驚いた。いつから、そんなことをしていたのだろうか? そもそも、勝手に合い鍵を作っていることを咎めるところから、俺は始めないといけない。
俺の胸の中で身を捩って、巻き付いていた腕に力が籠もった。起きたかと思って手を止めれば、ん~と小さく唸って、頭を押し当てられた。満足したようで文句は寝息に変わっていき、特に動く気配はない。
どんなご関係なんですか!?
また、あの言葉が過ぎる。結局答えは出ていない。でも、一つだけ思ったことがある。
「俺は、めいくんのことが、好き、かもしれない」
その二文字を作ったときだけ、胸がくすぐったくなった。一度音にすると、感情が滲んで、身体が温かくなっていく。
ずっと妹や弟のように可愛いと思っていた。でも、二人には抱かない欲を彼には抱いている。今まで感じたことのない身を滅ぼしそうな望みを、彼にだけ預けてしまっている。
自覚したところで、これをどうすれば良いのだろう。めいくんが何故メイドカフェを開いたのかも、俺に可愛いと言われたいのかも分からない。好きとはよく言ってくれるけど、同じ好きなのかも怪しい。遊ばれているだけだと彼に宣言されたって、ショックよりも先に納得が来るだろう。
でも、現状維持にはしたくない。パワーバランスの逆転している爛れた主従関係の先を、俺は求めてしまっていた。
「君の悪いところも可愛いと許してしまうくらいには、好き、かもしれない」
小さく告白すれば、聞こえているのかいないのか、上機嫌に頭を押しつけられた。
彼の柔らかな髪を撫でながら、考える。俺は彼以外の恋愛経験がないから、そうなったときの対処法を知らない。妹や弟に言う愛情表現と同じ言葉なのに、伝える瞬間もその後も一切想像がつかずにいる。
悩み事には都合が良い、静かで愛おしい夜更けだった。
正直、家に帰ってこれたのは、奇跡だと思う。最後には歩いたら漏らしそうで、めいくんに抱えられて外に出た。いつの間にかタクシーも手配されていて、車のちょっとした振動が苦しかった以外記憶がない。
「鍵を持ってきてあげる」
そう言って俺を浴室に置いて、どこかへと消えていった。家に帰ってきた安心感で、せり上がって来ているのが分かる。必死に持ちこたえようとして、座り込んだ足の内側がびりびりと震えていた。
いくら待っても、彼は戻ってこない。背後からも音が聞こえているのが、かえって不安にさせた。鍵を紛失したのではないか。もう無理だ、今まで漏らさずにいたのが奇跡なほどで、いつ決壊させてもおかしくない。
「めいくん、はやく、もう、むり」
情けない声が浴室に反響する。血管がぞわぞわして、身体がままならない。
寂しくなって、彼の姿を思い浮かべた。
有クン。
俺の世話を焼く白い手が、お腹を撫でる。
くすぐったいものが滲んで、全身へと広がっていく。
張り詰めた部分に、一瞬だけ隙が出来た。彼以外を拒んでいる場所が独りでに緩んでいく。せき止めた瞬間のじわっとした心地の良い感覚に思考を溶かされて、怖くなった。
「だめ、だめだって! ほんとうに! だめ!」
声を出すと腹部に力が入り、沸き上がったものが進んで行く。でも、癇癪みたいに喚かないと、全部漏らしてしまいそうだった。
「どうしたの!」
俺の声を聞きつけて、後ろから待っていた人が駆けつけてくれた。振り向いて、年下の男の子に情けなく縋る。
「めいくん、もう、もれちゃう。ぬげない。たすけて……」
「そうやって命令されるのも、久しぶり。おれだけの可愛い有クン、今日は何でも叶えてあげるね」
彼は慣れた手付きで俺のズボンも、パンツも奪っていった。イメージカラーと同じピンクと今朝ぶりに対面する。
「苦しい?」
「くるしい……」
「楽にさせてあげられるのは、おれだけだよ。ちゃんと覚えて」
衣類を避難させた後、今朝と同じように背後に回って南京錠の開錠を始めた。背中に感じる彼の体温が嬉しくて、より感じれるように体重を預ける。
俺には何も出来なかったのに、めいくんの長い指先は魔法のような手捌きで外していった。
「あ~、さっき暴れてたのって、漏らしちゃったからか~」
ピンクの筒の中には、黄色い尿が溜まっていた。力なく頷くと、いいよ、と許しが出た。
「おれのために頑張ったもんね。じゃあ、気持ち良くなろっか」
筒もリングも南京錠も、すべて浴室の端に投げ捨てられた。
片腕で俺の身体を拘束し、反対の手がお腹に添えられる。直接撫でると、体内がむず痒くなった。膀胱の中を探りながら、囁かれる。
「今日はスムージーにお粥にポトフに、ドリンクが三杯。ほら、有クンのお腹、こんなにぱんぱんだよ。これ、ぜ~んぶおれがお世話してあげたからなの。嬉しいでしょ?」
「ぅん、うれしっ……!」
「褒めて」
柔く押され、解放を望むあまり早口になる。
「ありっがと、おぃしかった、たすけて」
「あはは、必死ね~。後からちゃんと褒めてもらえばいっか。じゃあ、お礼にと~っても気持ち良いことしよっか。ご主人クン、四つん這いになって~!」
「できな、できないっ!」
「出来るよ~、だっておれだけの可愛いご主人クンだもん。メイドのために頑張って!」
背後で、楽しそうに笑っていた。あんなに弄んでいた手がさっと離れ、早く早く~と言葉を弾ませている。
「おれのお手伝いなしで四つん這いになれるご主人クンが、大好き!」
「わ、わかったっ……!」
馬鹿みたいだけれど、めいくんに焚きつけられて身体を丸めた。手をついて指示された体制になると、膀胱が下へ垂れ、膨らんだお腹が誤った出口を見つけたようなもどかしさが身を焦がした。
「絶対に、漏らしちゃ駄目だよ」
ぬめっとしたものが後孔に触れ、あっという間に中に入った。久しぶりに侵入されたというのに、俺の意志とは関係なくあっさりと受け入れた。慣らす動きにたまらずきゅっと締めて、尿意も、彼の指の動きもせき止めた。
「いまだ、めっ、おかしっ、なる」
「おかしくな~れ!」
「んっ、ふやさない、でぇっ」
もう一本増えたが、浅い場所を広げるだけで、肝心のところには触れてくれない。奥が寂しく蠢き、腰が揺れ、襞の一つひとつが先へ誘導するように吸い付いた。もしも触れてくれたら、俺は漏らすと分かっているのに、身体が求めてしまっている。
「久しぶりで、おれが恋しいんだね」
指が抜かれて、目の前で火花が散った。自分が放尿したのかと錯覚して、力が緩み、またちろちろと先端からこぼれてしまった。栓を閉じようと力を入れた瞬間のじわっとした痺れも気持ち良かった。
「お顔見れないのが残念。きっと尿意に負けて、とろとろ発情顔を晒してるのに。恥ずかしい? おれにおしっこ我慢させられて、でも我慢できなくてちょっとずつ漏らして、大人なのに情けない自分が恥ずかしい?」
「あ、あぅ……」
「恥ずかしそうな声出してる! えへへ、おれ達おあいこだね」
入り口に熱いものが当てられた。同時に握り拳が臍の下に吸い付く。これは、いけないものだ。分かっているのに欲望に支配されて、身体が求めるように腹部を落とした。
「今日のご褒美だよ~」
容赦なく貫かれると同時に、拳が優しく皮膚に潜り込んだ。二カ所から的確に膀胱を刺激されているのに、蛇口は何故か固い。
良くないものを掠めて、尿意に似たものがせり上がっているのを感じた。肉壁がきゅっと強請ったのがバレて、そこをめがけて何度もそこに落とされ、鋭い稲妻が脳に走る。
「あっ、あ、なんれ、ああっ!」
自分の声と交わる淫らな音は、浴室によく響いた。
「ぎゅ~ぎゅ~ってしてあげる!」
からかうように拳がめり込んで、じんわりとした痺れを全身へ響かせる。
「ぁ、え、わかんなっ、なにっ」
快楽がぐちゃぐちゃに入り乱れて、弾けた。一気に絶頂が駆け抜け、勢いよく外に吐き出される。
その瞬間、頭が真っ白になった。
解放されるともう止めることなんて考えられず、身体が望むままに垂れ流した。通り道を削ぎながら外へ出て行く開放感は、射精とは違う柔らかい快楽の形をしていた。つま先から全身にかけて暖かく痺れ、口からは嬌声にも似ただらしない音が抜けていった。
「あー……、とまんにゃぃ……」
「どれくらい出るのかな~」
勢いが衰えると、中からも外からもぐりぐりと擦って、排泄を促す。俺の身体はいつになく正直で、残っている尿を必死に外へと押し出した。突かれるたびにぴゅっ、ぴゅっと尿が出て、おもしろ~いと無邪気にその勢いを強められてしまう。
「ぁあ、らえ、むいっ……」
「言葉もとろとろね~」
立ちこめるアンモニア臭が、どうしようもない行為だと突きつけている。社会人なのに、年下の男に生理現象の管理権を握られて、人にも迷惑を掛けて。みっともないのに、今までにないくらい気持ちが良い。ぬるま湯のような優しい絶頂が続いている感覚のは、癖になりそうだった。
もうほとんど出なくなっても、本当に空っぽなのかと拳で探るのをやめなかった。
「も、ないっ」
「言えて偉いね~、よしよし」
最後の一滴まで出して空っぽになった膀胱の隙間を埋めるように、再びきつい律動が責め立てる。先ほどよりもしっかりと、彼の熱を感じることが出来た。鋭い快楽がぴりぴりと全身に走り、感覚を塗り替えていく。ぐんぐんと奥に進んで、今までとは違う変な場所を行ったり来たりしているようだった。
「めい、くんっ、いくっ、いくっ」
言葉に出すと、快楽の輪郭がしっかりと見えた気がした。肉壁は擦られるたびに必死に抱きつき、彼の温度を感じながら再び鋭い絶頂がやってきた。
「おれも」
拳が離れ、両手でがっしりと腰を掴まれた。ぐっと押し込まれるとすぐに、彼の欲が熱く広がっていく。これも自分の中に焼き付いてくれればいいのにと思った。
二人で一つの呼吸になっていたのが、次第にばらばらになっていく。
「気持ち良かったね、これでおあいこ」
首筋にキスをされ、くすぐったくて身を捩った。めいくんは自身を引き抜いた途端に、腹部に違和感が生まれた。空っぽになった膀胱には、変な収まりの悪さがある。
「ご主人クン、立てる?」
「わ、かった」
壁を使いながら、快楽でがたつく足で立ち上がった。全身を持ち上げれたところでめいくんの補助を受けながら、向かい合う。胎内にあったものがどろっとこぼれだす不快感が気にならないほど、目の前の光景が衝撃的だった。
「あれ、そんなナース服着てたっけ……?」
「流石おれのご主人クン! もう一着ナース服を用意してたから、見せてからやりたかったのに。着替えてる間に暴れてるからびっくりしちゃった」
こっちは今、その言葉にびっくりしている。
「じゃ~ん! こっちはナース感が強くて、メイドじゃないからやめたの。有クンだけの専属ナースだよ……!」
浴室は男二人が入るには狭く、軽く動くだけでも簡単に触れ合える。めいくんは扉を閉め、これだと回れないね~と残念がっていた。それでも、腕を伸ばしたり、肩を左右に振ったりして、出来る限りで俺に見せてくれた。
よく見る薄ピンク色のナース服は、彼の身体にぴっちりと張り付いていた。幅の狭い詰め襟は喉仏を隠す気がなく、胸や肩周りは窮屈そうで、太股を申し訳程度に隠すスカートの両サイドにはスリットが入っており男らしい筋肉質をはっきりと晒している。
初めて見たメイド服は、かろうじて骨格の雄々しさを誤魔化せていた。でも、私服の彼や、今のような隠しようのない衣装から、はっきりと分からされた。どんな格好をしているなんて最早どうでもよくて、ただめいくんのすべてが可愛い。俺のために悩んでくれるのも、ろくでもない意地悪をするもの、分かりやすく照れているのも、彼の内面のすべてが愛おしくて、レースやフリルが一層可愛く飾りたててくれている。
「似合ってる、すごく。俺のために選んでくれた君が、何よりも可愛いよ」
「あ、あるクン。ありがと……」
照れてこちらを見れなくなった彼を、汚れたまま抱きしめた。この可愛らしさの前では、俺がなにをしたってシミ一つつくことはないのだろう。
我慢させられて、なにもかもが気にならなくなっていた。
「めいくん」
言葉に反応くれた彼に、背伸びしてそっと唇を寄せる。おずおずと開いてくれた中に舌を伸ばし、肉厚なものと絡めた。それだけで満たされて、同時に物足りなくなった。
「嫌だった、かな」
顔を離して問いかければ、答えを教えるように、後頭部を掴まれて深く口付けされた。先ほどとは違う荒々しさに、下腹部が切なく痺れた。瞳は俺を溶かそうとするように、甘くこちらを見つめている。
混じり合う水音が強く鼓膜を揺らしていた。
離れても、どちらともつかない唾液が、愛おしく繋いでくれている。
「……ご主人クンの身体を洗ってあげま~す!」
照れ隠しなのか、俺から逃げるようにシャワーの蛇口に手を伸ばした。出てきた水はひんやりとしていたが、身体の熱は冷めそうにない。
ワイシャツも、ナース服も濡れていた。張り付くのも気にならないほど、俺の心は彼の方だけを向いている。
「めいくんのおかげで、体力がついたんだ。今、眠くなってないよ」
狭くて、隠れる場所なんてどこにもないのに。俺の視線からも、言葉からも、必死に逃げようとしている。
「俺との約束。私服のめいくんも可愛かったよ。シンプルなのが良く似合ってて、もっと君が可愛いって気付けた。この衣装も俺を考えてピンクにしてるんでしょ? りっちゃんさんから聞いたよ」
突然の人物に驚いたのか、ようやく彼はこっちを見てくれた。
「俺にとっては、あのお店の中で、間違いなくめいくんが一番可愛いと思う」
「ある、クン」
「きっと、君にとっては可愛いが何よりも大切なんだよね。分かってあげれなくて、ごめん。これからは、もっとめいくんのことを教えて?」
初めて会った時に知って欲しいって言ってくれたのは、めいくんの方だった。幼い子に言い聞かせるような優しさを持って、垂れ目に伝えた。結局瞳には逃げられてしまったけれど、ナース服の裾をぎゅっと握り、小さく頷いてくれた。
温かくなったシャワーが心地よく俺達を包んでいる。
「……うん、いっぱい教えてあげる」
「ありがとう」
照れる彼をずっと見ていたかったけれど、それは叶わなかった。ハッとして、瞳も睫毛も忙しなく動かし、こういう照れてるおれも可愛いって言わないの、といじらしい怒りが飛んできた。
「ずっと可愛いって思ってたよ」
「……ふ~ん」
ようやく隠れる場所に気付いたらしい。俺の首元に顔を埋め、ぐりぐりと顔を押しつけた。
「嬉しい。もっと褒めて、可愛いって言って、撫でて」
「いいの?」
「有クンだけ、特別に許してあげる」
ヘアメイクの解かれた赤茶は、すでにシャワーで濡れていた。彼で言うところの、俺で上書きするように表面を撫でる。水で固まっていたけれど、あの柔らかい感触が皮膚上には再現されていた。
「可愛いよ、めい」
大切な妹や弟と同じ呼び方を、彼にしてあげたかった。
「……呼び捨ては今日しか許してあげない」
「ありがとう」
う~、と呻いているのを、ただただ眺めていた。髪の毛が項に張り付いて、シンプルなピアスに彩られた耳の形がよく見えた。綺麗に収まり、浴室の照明の光を浴びて、それぞれが自己主張を強めていた。これも、彼の本来の趣味なのかなと思うと、愛おしかった。
「もういっかい、しよ」
「いいよ」
「有クンの許可なんて求めてないもん。おれが言ったら絶対なの」
顔を上げて、唇を奪われる。彼の瞳に反射した俺が、こんなにも表情を緩めているなんて信じられなかった。自分の知らない主藤有が、今暴かれている。
互いを求め合って必死にもつれ、萎えていたはずの欲望は一瞬にして熱を取り戻していた。立ったまま押し当てられて、俺は可愛いメイドに身体を預けた。
体重を借りて、深く、沈み込んでいく。
「め、いっ……!」
「もっと呼んでいいよ」
「んぁ、めい、めいっ……!」
「可愛いね、有クン」
今までとは違う、互いの温度が一つになるような心地良さが、揺れるたびに身を焦がした。それなのに、そのどこかに少しだけ掛け合わない違和感がある。
「めい、かわいぃっ」
名前を呼ぶと、それは近付いて、また遠ざかっていく。その正体を掴めないまま、与えられる快楽によって思考は溶かされていく。
「好き、有クン。おれだけの可愛いご主人クン。絶対に離してあげないからね」
愛おしさが弾けて、胎内でも彼の熱が染み込んでいくのを感じていた。
明日は仕事じゃなければよかったのに。寝れないと嘆いていた日が羨ましくなるほど、夜が更けていくのを悔しく思った。
目覚めは、驚くほどにすっきりとしていた。部屋は真っ暗で、目の前のもの以外を探ることは出来ない。
今日も仕事だが、寝たいとは思わなかった。狭いベッドで、俺を抱きしめている男の子の髪を梳く。寝る瞬間も可愛いおれなの! と自信満々に言って、フリルのついたルームウェアを選んでくれていたのは驚いた。いつから、そんなことをしていたのだろうか? そもそも、勝手に合い鍵を作っていることを咎めるところから、俺は始めないといけない。
俺の胸の中で身を捩って、巻き付いていた腕に力が籠もった。起きたかと思って手を止めれば、ん~と小さく唸って、頭を押し当てられた。満足したようで文句は寝息に変わっていき、特に動く気配はない。
どんなご関係なんですか!?
また、あの言葉が過ぎる。結局答えは出ていない。でも、一つだけ思ったことがある。
「俺は、めいくんのことが、好き、かもしれない」
その二文字を作ったときだけ、胸がくすぐったくなった。一度音にすると、感情が滲んで、身体が温かくなっていく。
ずっと妹や弟のように可愛いと思っていた。でも、二人には抱かない欲を彼には抱いている。今まで感じたことのない身を滅ぼしそうな望みを、彼にだけ預けてしまっている。
自覚したところで、これをどうすれば良いのだろう。めいくんが何故メイドカフェを開いたのかも、俺に可愛いと言われたいのかも分からない。好きとはよく言ってくれるけど、同じ好きなのかも怪しい。遊ばれているだけだと彼に宣言されたって、ショックよりも先に納得が来るだろう。
でも、現状維持にはしたくない。パワーバランスの逆転している爛れた主従関係の先を、俺は求めてしまっていた。
「君の悪いところも可愛いと許してしまうくらいには、好き、かもしれない」
小さく告白すれば、聞こえているのかいないのか、上機嫌に頭を押しつけられた。
彼の柔らかな髪を撫でながら、考える。俺は彼以外の恋愛経験がないから、そうなったときの対処法を知らない。妹や弟に言う愛情表現と同じ言葉なのに、伝える瞬間もその後も一切想像がつかずにいる。
悩み事には都合が良い、静かで愛おしい夜更けだった。
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