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内緒のドリンクファイト 6
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開店時間が近付いたところで、そういえば限定メニューはまだ飲んでなかったよね、と意地悪なドリンクが用意された。ピンク色の炭酸と、下にはカラフルなものが入っている。観察していると、ゼリーだよ、と太めのストローを刺しながら教えてくれた。
「ここからはナースからのおもてなし~」
取り出された注射器には、赤い液体が入っている。にこにことグラスの上に持って行った。
「ご主人クンのお腹で暴れちゃえ~!」
シロップと思われるものが、ドリンクを染めていく。綺麗なグラデーションを作った代わりに、量が増えていた。
「飲んでみて、ご主人クン」
この一杯だけなら、耐えられる気がする。
言われるがままストローに口を付けて、そっと吸った。ベリー系の炭酸が口の中で弾けた。ゼリーは舌の熱で形が崩れるほど柔らかく、想像よりも飲みやすい。
「美味しい」
今日でなければ、もっと美味しかった。
「良かった~。今日はお~くんがお休みだから、おれがキッチン担当なの。ご主人クンがそう言ってくれるなら、安心してお仕事出来るね~」
ほらほら、と無邪気にストローを口に入れられた。胸の奥が擽られ、褒めるような気持ちで、もう少しだけ飲む。み~くんさんが言っていた、都合が悪い日、はきっとキッチンに引っ込んでいることを意味していたのだろう。
一組目の来店に合わせて、めいくんはキッチンへと消えていった。けれど、元々彼の調理風景が見える位置として指定された場所だから、いつもとは何ら変化もない。彼も手持ち無沙汰になるとこっちに来て、明日は限定プレートにするね~とか、次はどんなお弁当にしよっかとか、そんな雑談をしに戻ってくる。
しかし、時間が経つにつれ、そんな余裕もなくなっていった。改めて見てみると、平日でも席は埋まっており、店内は女性客で賑わっていた。普段はあの接客の中に、めいくんもいる。スタッフの三人や、前に話しかけられた女性達から聞く、俺の知らないめいくんがあそこにはいるのだ。
想像すると、何故か寂しくなって、誤魔化すように炭酸を飲み干した。喉を通り、するすると張りつめたの貯水池に落ちていく。体内が苦しくて、切ない。
「ご主人クン」
甘い声が、俺を呼んでくれていた。
カウンター側に向き直すとすぐにグラスは奪われ、新しいものと交換される。
「今日はコーヒー飲んだの?」
「うん」
「そっか。今日はご主人クンのお腹をおれだけで満たしてると思ったのに、残念」
本当に落ち込んでいるように見えて、今すぐにでもあの柔らかい赤茶を撫でてあげたくなった。伸ばした腕は彼に掴まれて、そのままグラスの方に運ばれる。冷たい表面に驚いて指先が逃げたのを、彼は見逃さなかった。
「上書きしようね」
飲め、と垂れ目が強要している。正直、これ以上飲める気がしなかった。椅子から降りれないほど辛くて、尿意が強くなる度に貧乏揺すりをしてしまっている。
「あれ、どうしたの?」
「もう、飲みたく、ない……」
「わがままね~」
呆れ声で手が離れた。一気に腹部が冷えて、今までとは違う痛みのようなものに襲われる。気付けば、彼は俺の視界の中にはいなかった。
こんなろくでもないことをしているのに、彼に嫌われるのが、今は怖い。
「わがままな、おれの可愛いご主人クン。飲みたくなるようにおまじないかけてあげる」
後ろから囁かれ、腹部に手がかかる。ワイシャツ越しにも、彼の温度は伝わった。いつになく優しい手付きで、そっと押し込まれ、恥ずべき吐息が漏れる。押された部分から甘い刺激が滲むように広がり、与えられたものがこぼれ落ちないようにきゅっと太股を閉めた。
「漏らしてもいいよ。我慢出来なくてお漏らしするご主人クンは手が焼けて、いっぱいお世話出来るもん。でも、もしも、最後まで我慢できたら、何でもお願い叶えてあげる」
「なんでも」
「うん、何でも。やくそく」
舌足らずに囁いた。
この子なら、冗談みたいなことでも実行してしまうのだろう。でも、権力頼みの願いなんてなかった。むしろ、俺が約束を守ると喜ぶ彼なら、きっと俺のお願いを守ってくれるという確信の方が、何よりも重要だった。
「我慢出来たら、私服の君を褒めさせて。どんなめいくんも、俺にとっては可愛いよ」
手が止まって、ただただ優しく撫でられるだけだった。肩に押しつけられた顔はひどい熱を持っていて、また照れてるのだろうと容易に想像できた。
俺だけがめいくんを可愛くしている。
馬鹿みたいな思い上がりが、ずっと胸の中で膨らんでいる。妹にも、弟にも向けたことのない感情が、ずっと渦巻いていた。
「……いいよ、やくそく。だから、有クンも、守ってね」
「頑張るね……」
彼の体温が離れて、俺の前を素早く通り過ぎ、キッチンへ消えていった。晒された耳は熟した果物のように赤く、きっと甘いのだろうなといらないことを考えた。
二杯目を飲み切る頃には、もう周りの音が聞こえなくなっていた。気が緩みそうになるたびに、必死に足を動かしたり、腰の位置を変えてみた。結局その場しのぎでしかなかったが、ベルトを緩めた時だけは楽になった気がした。
後は耐えるだけと思った瞬間に、無情にもグラスが取り替えられた。
「ご主人クン」
彼の声だけは、すっと俺の耳に入ってくる。
甘く目元を緩めて、俺に微笑みかけた。ピンク色の炭酸が彼によって、赤く染められていく。
「ほら、飲んで」
もう無理だ。飲みたくない。でも、拒絶したらお腹を押されるのは目に見えている。ずっと俺を射抜く視線は、グラスを手に取るのを、今か今かと待っていた。
尿意で、指先が震える。力一杯に掴んで、ストローをくわえた。ベリー系の甘みが口に広がった後に、遅れて炭酸水が入ってくる。飲む一連の動作だけで、脳が勝手に味を認識してしまっていた。
「……おれのために飲んでくれてありがと。これだと、相殺じゃなくて、おあいこだね」
自分ルールの改定をした唇が、柔らかく上向いた。
どうして、この瞬間を切り取ることが出来ないのだろう。家族アルバムのように、大切な瞬間をすべて残しておければいいのに。
こんな状況でも、俺に向けられた無邪気な笑顔を失う日が来るのが怖くなっている。
どんなご関係なんですか!?
あの言葉が再び浮かび上がってきた。俺とめいくんはどんな関係なのだろう。
思考に気を取られて、駄目なものがせり上がってくるのを感じ、逃がすように足を動かした。今は、こんなことを考えている場合じゃない。
可愛い彼と、彼の恥じらいにより始まった排泄我慢。訳の分からない組み合わせだし、もうこんなことは二度としたくない。でも、めいくんに導かれたものであれば、次も許してしまうのだろうなと思った。
身体も、思考も、彼に会う前とは別人のように変えられてしまっている。
「ここからはナースからのおもてなし~」
取り出された注射器には、赤い液体が入っている。にこにことグラスの上に持って行った。
「ご主人クンのお腹で暴れちゃえ~!」
シロップと思われるものが、ドリンクを染めていく。綺麗なグラデーションを作った代わりに、量が増えていた。
「飲んでみて、ご主人クン」
この一杯だけなら、耐えられる気がする。
言われるがままストローに口を付けて、そっと吸った。ベリー系の炭酸が口の中で弾けた。ゼリーは舌の熱で形が崩れるほど柔らかく、想像よりも飲みやすい。
「美味しい」
今日でなければ、もっと美味しかった。
「良かった~。今日はお~くんがお休みだから、おれがキッチン担当なの。ご主人クンがそう言ってくれるなら、安心してお仕事出来るね~」
ほらほら、と無邪気にストローを口に入れられた。胸の奥が擽られ、褒めるような気持ちで、もう少しだけ飲む。み~くんさんが言っていた、都合が悪い日、はきっとキッチンに引っ込んでいることを意味していたのだろう。
一組目の来店に合わせて、めいくんはキッチンへと消えていった。けれど、元々彼の調理風景が見える位置として指定された場所だから、いつもとは何ら変化もない。彼も手持ち無沙汰になるとこっちに来て、明日は限定プレートにするね~とか、次はどんなお弁当にしよっかとか、そんな雑談をしに戻ってくる。
しかし、時間が経つにつれ、そんな余裕もなくなっていった。改めて見てみると、平日でも席は埋まっており、店内は女性客で賑わっていた。普段はあの接客の中に、めいくんもいる。スタッフの三人や、前に話しかけられた女性達から聞く、俺の知らないめいくんがあそこにはいるのだ。
想像すると、何故か寂しくなって、誤魔化すように炭酸を飲み干した。喉を通り、するすると張りつめたの貯水池に落ちていく。体内が苦しくて、切ない。
「ご主人クン」
甘い声が、俺を呼んでくれていた。
カウンター側に向き直すとすぐにグラスは奪われ、新しいものと交換される。
「今日はコーヒー飲んだの?」
「うん」
「そっか。今日はご主人クンのお腹をおれだけで満たしてると思ったのに、残念」
本当に落ち込んでいるように見えて、今すぐにでもあの柔らかい赤茶を撫でてあげたくなった。伸ばした腕は彼に掴まれて、そのままグラスの方に運ばれる。冷たい表面に驚いて指先が逃げたのを、彼は見逃さなかった。
「上書きしようね」
飲め、と垂れ目が強要している。正直、これ以上飲める気がしなかった。椅子から降りれないほど辛くて、尿意が強くなる度に貧乏揺すりをしてしまっている。
「あれ、どうしたの?」
「もう、飲みたく、ない……」
「わがままね~」
呆れ声で手が離れた。一気に腹部が冷えて、今までとは違う痛みのようなものに襲われる。気付けば、彼は俺の視界の中にはいなかった。
こんなろくでもないことをしているのに、彼に嫌われるのが、今は怖い。
「わがままな、おれの可愛いご主人クン。飲みたくなるようにおまじないかけてあげる」
後ろから囁かれ、腹部に手がかかる。ワイシャツ越しにも、彼の温度は伝わった。いつになく優しい手付きで、そっと押し込まれ、恥ずべき吐息が漏れる。押された部分から甘い刺激が滲むように広がり、与えられたものがこぼれ落ちないようにきゅっと太股を閉めた。
「漏らしてもいいよ。我慢出来なくてお漏らしするご主人クンは手が焼けて、いっぱいお世話出来るもん。でも、もしも、最後まで我慢できたら、何でもお願い叶えてあげる」
「なんでも」
「うん、何でも。やくそく」
舌足らずに囁いた。
この子なら、冗談みたいなことでも実行してしまうのだろう。でも、権力頼みの願いなんてなかった。むしろ、俺が約束を守ると喜ぶ彼なら、きっと俺のお願いを守ってくれるという確信の方が、何よりも重要だった。
「我慢出来たら、私服の君を褒めさせて。どんなめいくんも、俺にとっては可愛いよ」
手が止まって、ただただ優しく撫でられるだけだった。肩に押しつけられた顔はひどい熱を持っていて、また照れてるのだろうと容易に想像できた。
俺だけがめいくんを可愛くしている。
馬鹿みたいな思い上がりが、ずっと胸の中で膨らんでいる。妹にも、弟にも向けたことのない感情が、ずっと渦巻いていた。
「……いいよ、やくそく。だから、有クンも、守ってね」
「頑張るね……」
彼の体温が離れて、俺の前を素早く通り過ぎ、キッチンへ消えていった。晒された耳は熟した果物のように赤く、きっと甘いのだろうなといらないことを考えた。
二杯目を飲み切る頃には、もう周りの音が聞こえなくなっていた。気が緩みそうになるたびに、必死に足を動かしたり、腰の位置を変えてみた。結局その場しのぎでしかなかったが、ベルトを緩めた時だけは楽になった気がした。
後は耐えるだけと思った瞬間に、無情にもグラスが取り替えられた。
「ご主人クン」
彼の声だけは、すっと俺の耳に入ってくる。
甘く目元を緩めて、俺に微笑みかけた。ピンク色の炭酸が彼によって、赤く染められていく。
「ほら、飲んで」
もう無理だ。飲みたくない。でも、拒絶したらお腹を押されるのは目に見えている。ずっと俺を射抜く視線は、グラスを手に取るのを、今か今かと待っていた。
尿意で、指先が震える。力一杯に掴んで、ストローをくわえた。ベリー系の甘みが口に広がった後に、遅れて炭酸水が入ってくる。飲む一連の動作だけで、脳が勝手に味を認識してしまっていた。
「……おれのために飲んでくれてありがと。これだと、相殺じゃなくて、おあいこだね」
自分ルールの改定をした唇が、柔らかく上向いた。
どうして、この瞬間を切り取ることが出来ないのだろう。家族アルバムのように、大切な瞬間をすべて残しておければいいのに。
こんな状況でも、俺に向けられた無邪気な笑顔を失う日が来るのが怖くなっている。
どんなご関係なんですか!?
あの言葉が再び浮かび上がってきた。俺とめいくんはどんな関係なのだろう。
思考に気を取られて、駄目なものがせり上がってくるのを感じ、逃がすように足を動かした。今は、こんなことを考えている場合じゃない。
可愛い彼と、彼の恥じらいにより始まった排泄我慢。訳の分からない組み合わせだし、もうこんなことは二度としたくない。でも、めいくんに導かれたものであれば、次も許してしまうのだろうなと思った。
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