王子の心を溶かすのは、、?

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朝食を一通り食べ終わり、食後の紅茶とケーキが出される











「うーん!このケーキ美味しい!!ケーキなんて数年ぶり、、!」












「ユキ、話したくないのなら話さなくていい。だが、話せるなら聞きたい。ユキのご両親は、、」











「私が小さい頃に両親共に亡くなっているの。写真を見ても朧気なくらい」











「小さい頃に両親共になんて、、苦労したんだな、、」












「これからは、私達が貴方と沢山一緒にいるからね!」











「ありがとう!本当に嬉しい」











「ご両親が亡くなってからはどうしていたんだい?」












「親戚の家をたらい回しにあったわ。どこの家にいても邪魔者扱い、、だから16歳の時に1人で暮らし始めたの。ずっと節約生活をしていたからこんなに美味しい料理やケーキを食べている今が夢の中にいるよう」












「大丈夫。夢なんかじゃないさ。これからは私が、沢山美味しいもの、素敵なものを買ってあげるからな。前の世界では出来なかった事を沢山しよう!」











それから、私が19で死ぬまでの事を2人に話した
お父様もお母様も涙を流し、キツくキツく私を抱きしめて頑張ったな、偉かったなと褒めてくれた
その優しさで私はまた泣けてしまいアラカルト家での初めての朝食は中々終わる事がなかった












「あー恥ずかしい。目がパンパンだぁ!お父様とお母様も!ふふ!お揃いだね!」











「えぇ。今日は折角ユキと街にお買い物に行こうと思っていたのにこんな目じゃ行けないわ」











後ろを見ると執事さんやメイドさん達の目も赤く、皆泣いていたようだ











「そうだ!治癒能力で治らないかな?」










手を上にあげ、このテラスにいる範囲全体に治癒能力を使ってみた










「おぉ。ユキはこんな事も出来るのだな。」










「腫れていた目が治ったわ!これで3人でお買い物に行けるわね!」










「おいおいフェリア、買い物の前にユキをウチの娘として届出を出すのが先だろ?」











「あらいけない!私ったらすっかりウチの子になった気分でいたわ!善は急げよ!アル!馬車の用意を!」










「畏まりました。奥様」










アルと呼ばれた執事服の白髪の似合う紳士風の男性が部屋を出ていく
あの執事さんアルって名前なのか
今までクラスメイトの名前でさえ自分に関係ないから覚えなくていいやと思っていたがここの御屋敷の人達の名前は覚えたいな
今日私の支度を手伝ってくれたメイドさん達の名前も覚えなきゃ
こんなに何かをしたいと思った事は初めてだ












「ユキ、それじゃあ行きましょうか!」










「うん!」









お父様とお母様の後を追い馬車に乗り込む
流石にランで街まで行くのは目立ちすぎるものね










「自分で走った方が早く着くが馬車とやらに揺られ景色を見るのも存外悪くないな」










膝の上で立ち上がり窓に両手を置き尻尾を振るラン
狼なんだけどどう見ても犬にしか見えないよね、、
でもそんな所が可愛い!!
もっとよく見えるようにランを抱き抱えてあげると更に喜んでくれた










「しかし、ラン様の主になるだなんて聖女に、聖獣王様に、なんだかおなかいっぱいになってしまうな」










「でも心配だわぁ。この国は今王族派を消そうとする連中が躍起になっているの。私達が昨日襲われたのもきっと連中が関わっているはずよ。ユキに助けられたけど、次はユキが狙われるかもしれない」











「暫くは聖女だと言うことを隠しておこう。陛下にお会いする機会がある時に相談しようと思う」











「この国の王様にお父様はお会いした事があるの?」










「あぁ、学生の頃からの付き合いでな、恐れ多いが親友というやつだ。公式の場では王と家臣のようだがプライベートでは友に戻るよ」











「へー!お父様は凄いんだねぇ。」










「そんな事ないぞッ」









キラキラと尊敬の眼差しで見つめるとお父様は頭を掻きながら照れているようだ











「隠すにしてもユキの黒髪は目立つわねぇ。」












前の世界では黒髪が当たり前だったが、この世界の住人の髪色を見てみると確かにカラフルで黒髪など1人もいない
お父様は真っ赤、お母様は淡いピンク色だ











「お父様達の髪色は綺麗な色をしているものね。じゃあ魔力で暫くの間は髪色と目の色を変えておこうかな」











お母様と同じ色になるイメージをして、むむむ!と能力を使うと黒髪が綺麗な淡いピンク色に変わった












「まぁ!ユキとお揃いね!嬉しいわぁ」











スリスリと頬ずりをされ、なんだか照れくさくなる











「いいなぁフェリア。父は寂しい」










ぷぅーと頬を膨らませ、お父様が拗ねる
最初はあんなに厳格な雰囲気のお父様が今では子供のような雰囲気だ











「ふふふ。お父様、ごめんね?御屋敷に帰ったらお父様の髪色にしてみるね!」











「本当か!ならさっさと用事を済ませて帰るぞ!」










「あらぁダメよ!ユキの洋服を買わないといけないしユキの部屋も可愛くしてあげたいし今日は御屋敷に帰るのはまだまだよー」












お母様が私の腕を組み、お父様にアッカンベーをする












あぁ、なんて楽しいのだろう
こんなに居心地がいいと感じたのは初めて
もっともっとこの楽しい時が終わらないで欲しい











3人でクスクスと笑いあっていると、目的地に着いたようだ











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