オーバードライブ ・エロス〜性技カンストの俺が魔王をイカせるまで帰れない世界〜

ぽせいどん

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第53話 ー底なしの絶望、終淫核メギアー

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 四人が駆け抜けた先、広間の中心にそれは待ち構えていた。
 赤黒い光を帯びた巨大な心臓のような塊――終淫核メギアの本体。直径は城塞ほどもあり、表面を覆う無数の卵胞が脈動のたびに膨らんでは縮み、やがて破裂して粘液を散らす。その粘液は地面に吸い込まれ、即座に新たな卵を生み出していた。

 「……やっとたどり着いたわね」
 セレーナの声は震えていたが、その瞳は揺らがなかった。

 「だが本体を前にしても……やはり数が止まらない」
 カリーネが周囲を見渡す。孵化した肉塊たちがすでに群れを成し、壁のように広間を埋め尽くしている。

 影の女王は低く唸った。「核そのものが“母胎”……倒さなければ世界ごと呑まれる」

 《産メヨ……交ワレ……増エヨ……》

 声が骨に響く。四人の心拍が否応なく速まり、呼吸が荒くなる。誓約の紋が焼け付くように熱を帯び、誓いそのものを試すかのようだった。

 「くそっ……!」
 レイジは共鳴剣を振りかざす。蒼刃の光が広間を裂き、群れを押し退けた。だが切り裂かれた肉塊は粘液となって床へ吸い込まれ、次の瞬間には再び卵が芽吹く。

 「切っても、燃やしても、戻ってくる……!」
 セレーナが符を連打し、紅蓮の炎を放つ。しかし焼いたはずの残骸が核に吸収され、逆に卵の数を増やしていく。

 「これは……防御と増殖が同時進行しているんだ!」
 カリーネの声は鋭かった。「攻撃がそのまま養分になっている……核の周囲では、あらゆる行動が“増殖”に還元されるのよ!」

 影の女王は闇糸を放ち、孵化した群れを拘束する。しかし拘束した瞬間、糸ごと吸い込まれ、新たな卵胞を膨らませてしまった。
 「……触れることすら罠とはな」

 レイジは歯を食いしばる。「このままじゃ埒があかねえ! 本体を直接叩くしかない!」

 彼は仲間の前に立ち、蒼刃を振りかざして胎核へ突き進んだ。
 だが、その瞬間――

 心臓のような塊が大きく収縮し、中心部から脈動の奔流を放った。衝撃波が四人を吹き飛ばし、肉壁に叩きつける。誓約の鎧がなければ、骨ごと砕かれていたはずだ。

 「ぐっ……!」
 レイジは咳き込み、必死に立ち上がった。

 セレーナが顔を上げ、血を拭いながら言う。「……ただの防衛反応じゃない。これは“拒絶”よ。誓約そのものを嫌っている……」

 カリーネは目を細めた。「誓約の刃こそ、あれを脅かす唯一の力……だからこそ全力で拒絶しているのね」

 影の女王は低く笑う。「なら、誓約を強めて押し通るしかない。増殖を逆利用する術を編み出さねば……本体に触れることすらできん」

 レイジは仲間の顔を一人ずつ見て、共鳴剣を胸に掲げた。
 「ここからが本当の戦いだ。誓約の刃で、道をこじ開ける!」

 広間全体が脈動し、数千もの卵胞が一斉に震えた。
 ――終淫核メギアとの本格交戦が、今まさに始まろうとしていた。

 共鳴剣の蒼光が広間を照らすと、卵胞の群れが波のように震えた。セレーナの符が炎を走らせ、カリーネの風が空気を裂き、影の女王の糸が怪物たちを絡め取る。四人の攻撃は確かに群れを削った――だが、それは一瞬の安堵にすぎなかった。

 「……見ろ!」
 レイジが叫ぶ。

 焼かれた肉片が床へ溶け込み、膨張した卵となって再び殻を破る。斬り裂かれた肉塊が霧散し、壁に吸い込まれ、別の場所から新たな幼体が蠢き出す。

 「攻撃が……そのまま増殖の燃料になってる!」
 カリーネの声は絶望に滲んだ。

 《交ワレ……増エヨ……産メヨ……》

 鼓動が速まる。広間全体が脈動し、床も壁も天井も、すべてが卵胞に変わっていく。もう「戦場」ではない。大地そのものが“母胎”となり、敵に支配されていた。

 セレーナが両手で胸を押さえ、苦しげに呻く。「心臓が……持っていかれる……。この脈動、私たちの鼓動を喰らってる……!」
 影の女王は唇を噛み、血を垂らしながら糸を伸ばした。「誓約で均しても、限界が近い……」

 レイジは必死に叫ぶ。「踏ん張れ! 誓約の刃で、必ず核に届く……!」

 だが、その声さえも嘲笑うように、本体の胎核が巨大な収縮を起こした。
 轟音とともに、表面の卵胞が一斉に破裂し、赤黒い嵐が広間を覆う。

 「――っ!」
 四人は一斉に防御を取るが、衝撃に吹き飛ばされ、肉壁に叩きつけられた。鎧が軋み、光が瞬く。

 「……はぁ……はぁ……!」
 レイジは膝をつき、肩で荒く息をついた。共鳴剣の光は弱々しく揺らぎ、今にも消えそうだった。

 セレーナも、カリーネも、影の女王も同じだった。汗と血で顔を濡らし、立ち上がるのがやっとの状態。それでも目の前の核は、なおも脈打ち、増殖を続けている。

 「……無理……なの?」
 セレーナが掠れた声で呟く。

 「攻撃は全て増殖に還元される。誓約で均しても……追いつかない」
 カリーネの声は冷たい現実を突きつけた。

 影の女王は唇を震わせ、笑うように吐き出した。「倒せる術が……見えん」

 広間全体が胎動する。
 足元が揺れ、壁が波打ち、再び数百の卵が芽吹いた。

 レイジは剣を握り締めたが、胸の奥でわかってしまう。
 ――このままでは勝てない。

 《増エヨ……産メヨ……交ワレ……》

 声は甘美で残酷だった。
 誓約の刃を掲げても、光は闇に呑まれる。
 希望は――見えなかった。

 蒼光の刃を振り抜いても、焼き尽くしても、消えたはずの卵は瞬きの間に再生する。床から、壁から、天井から――生まれ落ちる粘液の雫すら卵に変わり、四人の進路を封じていった。

 「……もう、数が数えられない……!」
 セレーナが符を放ちながら絶叫した。燃え上がる炎の壁はわずかな時間しか持たず、すぐに新しい卵が割れて幼体を生み出す。

 「均しているはずなのに……!」
 カリーネは風刃を飛ばし続ける。だが吹き飛ばした残骸が床に吸い込まれ、数倍の大きさの卵を生み出す光景に、冷や汗が背筋を伝った。

 影の女王は闇糸で十数体を拘束したが、次の瞬間、糸ごと卵の殻に吸い込まれて砕かれた。彼女は口元を押さえ、血を吐いた。
 「……抑えきれん……この数では……!」

 レイジは共鳴剣を両手で握り締めた。刃の光はまだ強いが、胸の奥に広がる感覚は重く鈍い。仲間の鼓動を均しているはずなのに、核の圧力がそれを上回っている。
 「くそっ……! 誓約の刃でも……足りないのか!」

 《交ワレ……産メヨ……無限ノ胎内ニ眠レ……》

 声が広間に木霊する。囁きは甘く、同時に鋼鉄の鎖のように心を縛り付けた。
 セレーナの足がよろめき、膝をついた。
 「心臓が……熱い……! このままじゃ……!」

 カリーネが彼女を支えようとした瞬間、足元の卵が割れ、腕の形をした触手が彼女の脚に絡みついた。
 「いや……!」
 必死に振り払うが、触手は脈動とともに筋肉の動きを封じていく。

 「離れろ!」
 レイジが共鳴剣を振り下ろして斬り裂く。しかし切断した触手は再び卵に戻り、別の場所から新たに生えてきた。

 影の女王が歯を食いしばる。「ここは……“無限の産道”……どれほど抗っても、本体へ届かない……」

 再び、広間全体が脈動した。数千もの卵が同時に震え、孵化の時を告げる。
 音が――重なり合った心臓の鼓動のように、四人の胸を圧迫した。

 「……くそ……っ!」
 レイジは歯を食いしばり、立ち尽くす。
 仲間の息は荒く、共鳴剣の光さえ揺らぎ始めていた。

 希望は――遠のいていく。

 数千の卵が一斉に孵化した。耳を裂くような破裂音とともに、肉塊と幼体が洪水のように押し寄せる。赤黒い粘液が飛び散り、床はすぐさまぬめりに覆われ、四人の足は膝まで沈み込んだ。

 「動けない……!」
 セレーナが必死に符を重ねるが、指先が震え、術式は崩れた。光は一瞬だけ燃え上がり、すぐに粘液に呑まれて消える。

 「くっ……!」
 カリーネは風刃を放つが、返ってきたのは耳を劈く産声のような響き。斬った肉片が幾つもの卵に分裂し、視界の端が再び膨らんでいく。

 影の女王は闇糸を伸ばすも、卵に絡め取られ、逆に身体を引き寄せられた。血を吐きながらも睨み返すが、影の糸すら養分にされていく様を目にして、唇が震えた。
 「……私の力さえ……利用される……」

 レイジは共鳴剣を振るう。しかし刃が切り裂いた先から、無数の腕と足を持つ怪物が這い出してきた。斬撃は確かに効いているはずなのに、効いたという実感が得られない。
 「何をしても……追いつかない……!」

 《増エヨ……産メヨ……交ワレ……無限ニ……》

 声が脳を直接打ち、四人の鼓動が乱れた。誓約の紋が灼け付くように疼き、蒼光を支えていた心臓のリズムが崩れていく。

 セレーナが苦しげに叫んだ。「もう……心臓が……持たない……!」
 カリーネは肩で息をしながらも、震える声で言う。「外交も、交渉も……ここでは何の意味もない……」
 影の女王は膝をつき、闇糸をかき消されながら、嗤うように吐き出した。「……倒す道筋が……見えん……」

 レイジは剣を支えに立ち尽くし、仲間の顔を見回した。
 ――皆、限界だった。
 蒼刃の光も弱まり、誓約の鼓動は乱れ、希望は霧散していく。

 その時、広間の中心で、胎核が大きく膨張した。
 卵胞が破裂し、赤黒い奔流が空へと吹き上がる。

 《産メヨ……増エヨ……無限ノ胎内ニ抱カレヨ……》

 広間全体がその声に支配され、光も音も圧し潰された。

 ――本体を前にしても、勝てる兆しは見えない。
 絶望だけが、四人を包み込んでいた。
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