オーバードライブ ・エロス〜性技カンストの俺が魔王をイカせるまで帰れない世界〜

ぽせいどん

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第6話 ー大冒険は重要性の順位を間違えるなー

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 この世界の冒険は、モンスターを倒すことも、魔王を討つことも含まれる。しかし、それよりもまず重要とされているのは『性的適応度の向上』であるという常識が、レイジの脳にはいまだに定着しきれていなかった。

 彼は今、淫魔寮のロビーに設置された『初級冒険者説明会』のパネル前で、呆然と立ち尽くしていた。壁に貼られたカラフルなポスターには、こう書かれている。

『冒険者ランクアップの近道!性交感度スコアを磨け! ~今日から始めるエロティックバトル~』

「タイトルの時点でおかしい……」

 そう呟きながらも、周囲を見渡すと、同じような初級冒険者たちが真剣な顔でパンフレットを手に取っている。中には、トレーニング用のラブグッズを両手に抱えて指導員に質問している者までいた。

 「……俺、異世界に来て何やってんだ?」

 そう呟くしかなかった。だが、現実は待ってくれない。

 背後から軽快な足音が響く。振り返れば、そこにはリリアがいた。今日も上気したような頬をして、手には小さな木箱を持っていた。

「レイジ! 初任務、決まったよ!」

「任務って、どんな?」

「んーとね。街外れの森に生息してる“魅了スライム”のサンプル採取!」

 レイジは即座に顔をしかめた。前回の試験で得たトラウマが甦る。

「あのな、もうちょっとこう、剣と魔法な任務とかないの? なんでまた性方面一直線なんだ……」

 リリアは笑いながら肩をすくめた。

「この世界、そういう構造だから♪」

 彼女の軽い言葉に、レイジはため息をつきつつも、従うしかなかった。

 ***

 翌朝。淫魔寮の裏口から出て、リリアとともに石畳の街路を抜け、街の門をくぐると、そこには鮮やかな草原が広がっていた。小鳥のさえずりと甘い風の香り。遠くには青白く輝く塔が空に突き立ち、魔法王都の象徴となっていた。

 だが、どこか牧歌的な風景とは裏腹に、レイジは緊張していた。肩に掛けた冒険者バッグには、応急ポーション、スキル増幅剤、そして問題の“スライム採取用コンテナ”が詰められている。

 「……スライムに触れずに採取するって、どうやんだ?」

「触れるのよ。むしろ、触られなきゃ始まらないの」

「だろうな!」

 そのまま二人は小一時間、街道から外れた小道を歩き、鬱蒼とした森に入っていった。太陽の光が木々の隙間からこぼれ、湿った地面には不思議な光苔が生えている。

 やがて、目的の“魅了スライム”が現れた。

 淡い桃色のゼリー状の生命体が、ぷるぷると震えながらこちらに向かって這ってくる。内部には微細な魔力核が見え、近づくにつれて空気に甘い香りが満ち始める。

「来た……!」

 リリアが魔導測定機を取り出して起動する。その数値はみるみる上昇していった。

「快感フェロモン濃度、レベル47……これは強いわよ!」

「強いって、おい待て、なんでスライムがそんな攻撃してくるんだよ!」

 レイジが後ずさる間に、スライムは彼の足元に飛びついた。足首に巻きつくようにして、粘膜状の体がじわりと這い上がってくる。

「うわ、冷たっ、ぬるぬるっ!? お、おいリリア、これ想像よりキツイぞ!」

「我慢よレイジ! スライムの魔力を吸収して、性感度の干渉率を下げれば勝てるんだから!」

「どんな戦法だよそれ!」

 粘膜が膝を超え、腰へと迫ってくる。そのたびに、レイジの頭の中に「悦」の文字が灯り、視界の端にチカチカとバグのようなエフェクトが現れ始めた。

 突然、画面にポップアップが表示される。

『クエスト達成条件:スライムを“イかせる”』

「ゲームかよッ!」

 彼は慌ててバッグからフェロモン拡散スプレーを取り出し、スライムに向けて噴射した。効果は覿面で、スライムの動きが一瞬止まり、そのまま小さく震えて弾けた。

 ぷしゅう、と高い音と共に、魔力を含んだゼリーがコンテナに吸い込まれていく。

「成、功……した?」

 レイジは全身汗だくになりながら、やっと息を整えた。リリアは満面の笑みで親指を立てる。

「大成功! スキル『性感耐性+1』も追加されたわよ!」

「もう少し、まともな称号ないのか……?」

 ***

 帰り道。森を抜けるころには、二人の間に奇妙な絆が生まれていた。

「次の任務は?」

「うーん、“絶頂トレントの心を癒せ”とか、“発情バジリスクの縄張り調査”とかあるけど……どれがいい?」

「絶対どれも良くない!!」

 だが、これがこの世界の日常なのだ。レイジは肩を落としつつも、少しだけ口元を緩めた。

「……まあ、悪くないかもな」

 森の出口で、木漏れ日が二人を照らしていた。その光は、どこか暖かく、冒険の続きが待っていることを示しているようだった。

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