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第9話 ーサキュバス領での和平交渉ー
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淫魔寮の執務室で、レイジは再び頭を抱えていた。
『任務:セクシーサキュバス領の和平交渉使節団同行』
前回の魔道学院での“淫耐訓練”を終えてまだ数日しか経っていないというのに、今度は外交任務だという。しかも相手は、淫魔族の中でも特に官能性と魔力干渉能力が高い種族、サキュバス。
「なあリリア……これ、絶対ヤバいやつだよな?」
「まぁ、交渉っていう建前の裏で、“淫魔族との相互理解”っていう名目の性質適応テストがあるとは聞いてるけど……」
「聞いてるけど!? なんでお前そんな軽いんだよ!」
「だって、レイジなら耐えられると思ってるもの。私が見込んだ男よ?」
「褒められても複雑だわ!」
結局、レイジは王国の外交担当官であるマリク卿と共に、使節団の一員として王都を発った。
旅は三日間。砂漠のような乾いた大地を越え、桃色に輝く草花が咲き乱れる妖艶な大地“サキュラスタ領”へと到着した。空気は甘く、温かく、身体の芯にじんわりと淫気が染み込んでくるような、そんな不思議な土地だった。
「……これ、歩いてるだけで理性が削れてく……」
レイジは旅の途中から支給されていた“淫気遮断マスク”を鼻に当て直す。だが、サキュバス領に入った途端、その効果も半減するのを肌で感じた。
出迎えたのはサキュバス女王直属の側近、ルナ・ネフィリス。黒のレース装束に身を包み、豊満な肉体を惜しげもなく露出させたその姿は、見る者の本能を揺さぶる魅力に満ちていた。
「ようこそ、勇敢なる王国の使者たち。あなたが……レイジ様ですね?」
「ま、まあ一応……はい……」
ルナは微笑みながら近づき、彼の耳元に唇を寄せて囁く。
「あなたにお目にかかれるのを……ずっと楽しみにしておりました」
その吐息だけで、レイジの脳内に快感波が走る。情報にあった通り、サキュバス族の魔力干渉は視線・声・匂いなどあらゆる手段で対象に作用するのだ。
(これ、会議どころじゃねぇ……っ!)
歓迎の宴が開かれた。その場には複数の高位サキュバスが集まり、各々が好きな格好で椅子に座り、気ままに葡萄酒や妖精果実を楽しんでいた。
彼女たちは、会話を交わすというより、視線を交わし、微笑み、体の一部を強調することで意思疎通しているようだった。まさに、官能こそが彼女たちの“言語”なのだ。
王国側の交渉官マリク卿が硬い表情で進行を進めようとする中、女王代理のルナが立ち上がり、ゆっくりと壇に向かって言った。
「まずは――お互いの“文化”を理解し合うことが必要でしょう」
次の瞬間、背後のカーテンが開き、サキュバスたちが繰り出す“催淫舞踏”が始まった。
肌をなぞるような衣のひらめき、交差する視線、波打つ腰の動き。魔力を含んだ音楽が場の空気を濃密にし、見る者の理性をひとつひとつ蕩かしていく。
「……やば……っ」
レイジの脳裏には警告表示が点滅し始めた。
『状態異常:幻覚型快感干渉(中)』『精神耐性スキル自動発動中』
隣でリリアが小声で呟く。
「これはただの“舞”じゃないわ。魔力で精神の芯を試してるの。耐性の低い者は、ここで見下されるのよ」
つまりこの場は“外交”ではなく、“誘惑戦”の第一フェーズだというのだ。
レイジは耐えた。いや、耐え切るしかなかった。
数時間後、舞踏が終わり、宴の締めくくりとして各陣営から代表者が“サキュバスの礼節”を学ぶことになった。つまり、各自が一人のサキュバスと共に“意志疎通”の訓練を行う時間だ。
レイジの担当となったのは、ルナ本人だった。
「さぁ、レイジ様。私の“部屋”へ」
異国の宮殿のような、香の匂い立ちこめる空間で、ルナは椅子に座り、彼を手招きした。
「まずは、“触れずに伝える”練習をしましょう」
「そ、そういうのは、俺ちょっと……」
「安心してください。抵抗することも……また、一つの魅力」
言葉とともに、ルナの指先から放たれた魔力が、レイジの肩口に触れたような感覚を起こす。体には何も触れていないのに、まるで羽毛でなぞられたような感覚が走り、彼は思わず声を上げそうになった。
「く……っ、まだ、まだ……平気だ……!」
「ふふ……その“耐える”表情、好きですわ」
彼女はわざと間を空けて魔力干渉を増幅させてくる。視線、指先、香り、音、すべてが官能の戦術として重なり合い、まるで全身が柔らかな手で撫でられているような錯覚を生む。
だが、レイジは思い出していた。
(……俺は、ここに“交渉”に来てるんだ。負けるもんか!)
精神抵抗スキルに加えて、魔導学院で得た“接触抵抗Lv1”が自動で作動。彼はかろうじて耐え、言った。
「サキュバス領と王国……お互いの文化に違いはあれど、理解し合える……そうだろ?」
その言葉に、ルナの笑みが少しだけ、柔らかくなった。
「ええ……素敵な、答えですね」
交渉は、少しずつだが、成功の兆しを見せ始めていた。
だが、そんな矢先──
『新任務発令:淫魔族内“反和平派”の調査および潜入』
次の任務は、より深く、より危険な場所へレイジを導こうとしていた。
『任務:セクシーサキュバス領の和平交渉使節団同行』
前回の魔道学院での“淫耐訓練”を終えてまだ数日しか経っていないというのに、今度は外交任務だという。しかも相手は、淫魔族の中でも特に官能性と魔力干渉能力が高い種族、サキュバス。
「なあリリア……これ、絶対ヤバいやつだよな?」
「まぁ、交渉っていう建前の裏で、“淫魔族との相互理解”っていう名目の性質適応テストがあるとは聞いてるけど……」
「聞いてるけど!? なんでお前そんな軽いんだよ!」
「だって、レイジなら耐えられると思ってるもの。私が見込んだ男よ?」
「褒められても複雑だわ!」
結局、レイジは王国の外交担当官であるマリク卿と共に、使節団の一員として王都を発った。
旅は三日間。砂漠のような乾いた大地を越え、桃色に輝く草花が咲き乱れる妖艶な大地“サキュラスタ領”へと到着した。空気は甘く、温かく、身体の芯にじんわりと淫気が染み込んでくるような、そんな不思議な土地だった。
「……これ、歩いてるだけで理性が削れてく……」
レイジは旅の途中から支給されていた“淫気遮断マスク”を鼻に当て直す。だが、サキュバス領に入った途端、その効果も半減するのを肌で感じた。
出迎えたのはサキュバス女王直属の側近、ルナ・ネフィリス。黒のレース装束に身を包み、豊満な肉体を惜しげもなく露出させたその姿は、見る者の本能を揺さぶる魅力に満ちていた。
「ようこそ、勇敢なる王国の使者たち。あなたが……レイジ様ですね?」
「ま、まあ一応……はい……」
ルナは微笑みながら近づき、彼の耳元に唇を寄せて囁く。
「あなたにお目にかかれるのを……ずっと楽しみにしておりました」
その吐息だけで、レイジの脳内に快感波が走る。情報にあった通り、サキュバス族の魔力干渉は視線・声・匂いなどあらゆる手段で対象に作用するのだ。
(これ、会議どころじゃねぇ……っ!)
歓迎の宴が開かれた。その場には複数の高位サキュバスが集まり、各々が好きな格好で椅子に座り、気ままに葡萄酒や妖精果実を楽しんでいた。
彼女たちは、会話を交わすというより、視線を交わし、微笑み、体の一部を強調することで意思疎通しているようだった。まさに、官能こそが彼女たちの“言語”なのだ。
王国側の交渉官マリク卿が硬い表情で進行を進めようとする中、女王代理のルナが立ち上がり、ゆっくりと壇に向かって言った。
「まずは――お互いの“文化”を理解し合うことが必要でしょう」
次の瞬間、背後のカーテンが開き、サキュバスたちが繰り出す“催淫舞踏”が始まった。
肌をなぞるような衣のひらめき、交差する視線、波打つ腰の動き。魔力を含んだ音楽が場の空気を濃密にし、見る者の理性をひとつひとつ蕩かしていく。
「……やば……っ」
レイジの脳裏には警告表示が点滅し始めた。
『状態異常:幻覚型快感干渉(中)』『精神耐性スキル自動発動中』
隣でリリアが小声で呟く。
「これはただの“舞”じゃないわ。魔力で精神の芯を試してるの。耐性の低い者は、ここで見下されるのよ」
つまりこの場は“外交”ではなく、“誘惑戦”の第一フェーズだというのだ。
レイジは耐えた。いや、耐え切るしかなかった。
数時間後、舞踏が終わり、宴の締めくくりとして各陣営から代表者が“サキュバスの礼節”を学ぶことになった。つまり、各自が一人のサキュバスと共に“意志疎通”の訓練を行う時間だ。
レイジの担当となったのは、ルナ本人だった。
「さぁ、レイジ様。私の“部屋”へ」
異国の宮殿のような、香の匂い立ちこめる空間で、ルナは椅子に座り、彼を手招きした。
「まずは、“触れずに伝える”練習をしましょう」
「そ、そういうのは、俺ちょっと……」
「安心してください。抵抗することも……また、一つの魅力」
言葉とともに、ルナの指先から放たれた魔力が、レイジの肩口に触れたような感覚を起こす。体には何も触れていないのに、まるで羽毛でなぞられたような感覚が走り、彼は思わず声を上げそうになった。
「く……っ、まだ、まだ……平気だ……!」
「ふふ……その“耐える”表情、好きですわ」
彼女はわざと間を空けて魔力干渉を増幅させてくる。視線、指先、香り、音、すべてが官能の戦術として重なり合い、まるで全身が柔らかな手で撫でられているような錯覚を生む。
だが、レイジは思い出していた。
(……俺は、ここに“交渉”に来てるんだ。負けるもんか!)
精神抵抗スキルに加えて、魔導学院で得た“接触抵抗Lv1”が自動で作動。彼はかろうじて耐え、言った。
「サキュバス領と王国……お互いの文化に違いはあれど、理解し合える……そうだろ?」
その言葉に、ルナの笑みが少しだけ、柔らかくなった。
「ええ……素敵な、答えですね」
交渉は、少しずつだが、成功の兆しを見せ始めていた。
だが、そんな矢先──
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