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第11話 ー淫魔の双姫ー ~王位継承艶闘~
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サキュバス領の朝は、妖精の吐息のような濃密な空気に包まれていた。
街路には花弁の舞い散る香風が流れ、建物の隙間からは桃色の光が差し込む。淫気を含んだ空気はそのまま住人の活力でもあり、精神的な武装でもあった。
レイジは、その日の朝、王国使節団の仮設宿舎にて一枚の通達書を手にしていた。
『任務:淫魔の双姫──王位継承決闘儀式への“第三の証人”としての陪席』
『儀式形式:儀艶闘(ぎえんとう)/対象姫:リュミエル姫(長女)、カリーネ姫(次女)』
「儀艶闘……?」
その字面だけでもう嫌な予感しかしなかった。
「なんだよ、“艶”と“闘”って。両立すんなそんなもん……」
だがリリアは、そんなレイジの苦悶を尻目に朝からご機嫌で言う。
「おめでとう、レイジ。まさか“王位継承艶闘”に巻き込まれるなんて、そう簡単にできる経験じゃないわよ」
「いや、そんな経験、できなくていいだろ普通……」
淫魔族の王位継承は、伝統的に「艶」と「魔力の統制力」で決まるとされていた。すなわち、官能的な技術、相手の精神を誘惑と魔術で制圧する能力、それを公衆の面前で競い合う形式で王を決めるのだ。
そして今回の決闘形式は、現王の崩御を受けて緊急に行われる「三者立会い型」。長女と次女、それぞれが王国側の代表者に自らの実力と魅力を誇示し、支持を得ることで即位の正当性を証明する――そう、レイジはその「第三者代表」に選ばれてしまったのである。
「……絶対、面倒になるやつじゃん……」
その日の午後、宮殿の艶闘舞殿にて、レイジは玉座を見下ろす高位席に通されていた。
座面には淫魔の結界が編み込まれており、座るだけで微弱な快感魔力が身体を刺激してくる。
(こんな状態で“中立な判断”なんてできるか!)
会場が静まると同時に、左右の扉からそれぞれ現れたのは、淫魔の双姫──
長女・リュミエル姫は、黒銀のドレスに身を包み、クールで威厳のある眼差しを宿していた。動きに一切の無駄がなく、見る者の理性を静かに締め上げるような、女王然とした存在感。
次女・カリーネ姫は、対照的に紅桃の半透明衣を纏い、足元から漂う香気と、あどけなさの残る微笑みで場を支配するタイプだった。媚びるような仕草の奥に、鋭い知略の光が見える。
「王国より来たりし“第三者”、ラグ・レイジ・カミナリ。
本日の儀艶闘、あなたの眼と魂をもって、我らを見定めよ」
司式官の宣言と共に、艶闘の幕が切って落とされた。
第一の試練──“誘惑の詩演”。
姫たちは交互に、自らの魔力を編んだ声と仕草でレイジを誘惑し、その影響度を競い合う。
リュミエルは、低く艶やかな声で古代語の詠唱を重ねる。言葉の波動そのものがレイジの耳から脳に届き、理性を麻痺させていく。
(やば……声だけでゾクゾクする……)
対するカリーネは、声ではなく視線と指の舞で魔力を送り、レイジの内なる性欲を引き出す。「ほら、感じていいんだよ?」と無邪気に微笑む姿が、逆に恐ろしい。
第二の試練──“共振接触戦”。
これは実際にレイジに触れずに魔力干渉を行い、快感干渉値を競うという形式。
レイジの身体を“戦場”に、二人の姫が空間を滑らせるように魔力を交差させる。指先一つで体温が上がり、吐息の重なりだけで鳥肌が立つ。
『快感値:リュミエル 48% カリーネ 51%』
(くそっ……どっちもエグすぎる……これ、判断とかできるのかよ!)
最終戦──“支配と恍惚の宣誓”。
ここでは、二人の姫がそれぞれ独自の方法でレイジの精神を“陥落寸前”まで追い込み、最後に言葉で選択を迫る。
リュミエルは手を伸ばし、レイジの頬に触れることなく囁いた。
「あなたの意志が、私の冠を輝かせる。共に、欲望すら統べる王国を築きましょう」
カリーネは背後から抱きつき、耳元で甘く囁いた。
「いい子にしてれば、毎晩お姉さんがご褒美あげるからね? ねぇ、わたしの“王様”になってよ」
観衆が息を呑む中、レイジは……
どちらを選ぶこともできなかった。
「俺は……俺には……選べない! どっちも強すぎるし、魅力的すぎる!!」
その瞬間、舞殿全体がざわめきに包まれた。だが、そこへ現れたのは女王の側近・ルナだった。
「第三者が決断できぬということは──即位は保留。されど、共に王位を担う可能性が生まれたということ……すなわち、共同統治制の復活でございます」
事態は急転直下で和解へと向かい、結果的に艶闘は引き分け、王位は一時的に“双姫統治”となることが決まった。
夜、使節団の宿舎に戻ったレイジは、布団の中でうつ伏せになって呻いた。
「もうイヤ……精神力が枯れる……明日から普通の依頼にしてくれ……」
だが、彼の枕元にはすでに新たな任務が置かれていた。
『次任務候補:淫魔王宮・合同訓練講師派遣──対象:双姫+親衛隊』
レイジの受難は、さらに淫らに続く──。
街路には花弁の舞い散る香風が流れ、建物の隙間からは桃色の光が差し込む。淫気を含んだ空気はそのまま住人の活力でもあり、精神的な武装でもあった。
レイジは、その日の朝、王国使節団の仮設宿舎にて一枚の通達書を手にしていた。
『任務:淫魔の双姫──王位継承決闘儀式への“第三の証人”としての陪席』
『儀式形式:儀艶闘(ぎえんとう)/対象姫:リュミエル姫(長女)、カリーネ姫(次女)』
「儀艶闘……?」
その字面だけでもう嫌な予感しかしなかった。
「なんだよ、“艶”と“闘”って。両立すんなそんなもん……」
だがリリアは、そんなレイジの苦悶を尻目に朝からご機嫌で言う。
「おめでとう、レイジ。まさか“王位継承艶闘”に巻き込まれるなんて、そう簡単にできる経験じゃないわよ」
「いや、そんな経験、できなくていいだろ普通……」
淫魔族の王位継承は、伝統的に「艶」と「魔力の統制力」で決まるとされていた。すなわち、官能的な技術、相手の精神を誘惑と魔術で制圧する能力、それを公衆の面前で競い合う形式で王を決めるのだ。
そして今回の決闘形式は、現王の崩御を受けて緊急に行われる「三者立会い型」。長女と次女、それぞれが王国側の代表者に自らの実力と魅力を誇示し、支持を得ることで即位の正当性を証明する――そう、レイジはその「第三者代表」に選ばれてしまったのである。
「……絶対、面倒になるやつじゃん……」
その日の午後、宮殿の艶闘舞殿にて、レイジは玉座を見下ろす高位席に通されていた。
座面には淫魔の結界が編み込まれており、座るだけで微弱な快感魔力が身体を刺激してくる。
(こんな状態で“中立な判断”なんてできるか!)
会場が静まると同時に、左右の扉からそれぞれ現れたのは、淫魔の双姫──
長女・リュミエル姫は、黒銀のドレスに身を包み、クールで威厳のある眼差しを宿していた。動きに一切の無駄がなく、見る者の理性を静かに締め上げるような、女王然とした存在感。
次女・カリーネ姫は、対照的に紅桃の半透明衣を纏い、足元から漂う香気と、あどけなさの残る微笑みで場を支配するタイプだった。媚びるような仕草の奥に、鋭い知略の光が見える。
「王国より来たりし“第三者”、ラグ・レイジ・カミナリ。
本日の儀艶闘、あなたの眼と魂をもって、我らを見定めよ」
司式官の宣言と共に、艶闘の幕が切って落とされた。
第一の試練──“誘惑の詩演”。
姫たちは交互に、自らの魔力を編んだ声と仕草でレイジを誘惑し、その影響度を競い合う。
リュミエルは、低く艶やかな声で古代語の詠唱を重ねる。言葉の波動そのものがレイジの耳から脳に届き、理性を麻痺させていく。
(やば……声だけでゾクゾクする……)
対するカリーネは、声ではなく視線と指の舞で魔力を送り、レイジの内なる性欲を引き出す。「ほら、感じていいんだよ?」と無邪気に微笑む姿が、逆に恐ろしい。
第二の試練──“共振接触戦”。
これは実際にレイジに触れずに魔力干渉を行い、快感干渉値を競うという形式。
レイジの身体を“戦場”に、二人の姫が空間を滑らせるように魔力を交差させる。指先一つで体温が上がり、吐息の重なりだけで鳥肌が立つ。
『快感値:リュミエル 48% カリーネ 51%』
(くそっ……どっちもエグすぎる……これ、判断とかできるのかよ!)
最終戦──“支配と恍惚の宣誓”。
ここでは、二人の姫がそれぞれ独自の方法でレイジの精神を“陥落寸前”まで追い込み、最後に言葉で選択を迫る。
リュミエルは手を伸ばし、レイジの頬に触れることなく囁いた。
「あなたの意志が、私の冠を輝かせる。共に、欲望すら統べる王国を築きましょう」
カリーネは背後から抱きつき、耳元で甘く囁いた。
「いい子にしてれば、毎晩お姉さんがご褒美あげるからね? ねぇ、わたしの“王様”になってよ」
観衆が息を呑む中、レイジは……
どちらを選ぶこともできなかった。
「俺は……俺には……選べない! どっちも強すぎるし、魅力的すぎる!!」
その瞬間、舞殿全体がざわめきに包まれた。だが、そこへ現れたのは女王の側近・ルナだった。
「第三者が決断できぬということは──即位は保留。されど、共に王位を担う可能性が生まれたということ……すなわち、共同統治制の復活でございます」
事態は急転直下で和解へと向かい、結果的に艶闘は引き分け、王位は一時的に“双姫統治”となることが決まった。
夜、使節団の宿舎に戻ったレイジは、布団の中でうつ伏せになって呻いた。
「もうイヤ……精神力が枯れる……明日から普通の依頼にしてくれ……」
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