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第14話 ー淫魔王宮の影ー ~忍び寄る陰謀と双姫の誘い~
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決闘会の熱気が冷めやらぬ王宮は、夜になってもざわついていた。貴族や従者たちが広間で勝者の祝宴を開き、甘い酒と香が混じる空気は、勝利の余韻というより新たな火種の匂いを孕んでいるようだった。
レイジは一人、王宮の回廊を歩いていた。冷たい大理石の床が足音を反響させるたび、自分がまだ“異世界の客人”であることを思い知らされる。決闘会を耐え抜いたというのに、気は休まらない。むしろ、この先に待つものがより大きな試練だと感じていた。
「……見事だったわ、レイジ。」
背後から響いたのは、艶やかな声。振り返ると、薄い寝衣をまとったリュミエルが立っていた。黒銀の髪が月光を反射し、冷たい美しさを帯びている。
「リュミエル姫……いや、その格好は……」
「休息の時くらい、女らしくあってもいいでしょう?」
彼女はレイジの横を通り過ぎ、回廊の窓辺に立つ。夜風が薄布を揺らし、うっすらと肌が透けて見える。
「今日のあなたは、想像以上だった。だからこそ……次はもっと深いところを見せてもらうわ。」
「深いところ……って、また嫌な予感しかしないんだが。」
そう呟いた瞬間、背後から明るい声が響いた。
「もー、姉さんずるい! レイジと二人きりなんて!」
カリーネだった。鮮やかな桃色の寝衣に身を包み、裸足で走ってきた彼女は、当然のようにレイジの腕を絡め取る。
「レイジ、明日はね、私たちと一緒に“特別講義”するの。親衛隊も交えて、もっと親密な訓練をしましょう?」
「おい、それどういう意味の訓練だよ。」
「ふふ、明日になればわかるわ。」
二人の姫は言葉少なに視線を交わす。そこには、ただの姉妹愛ではない、権力を共有する者同士の緊張感があった。共同統治という形に落ち着いた双姫だが、その裏では互いの力を測り合う静かな戦いが続いているのだろう。
そのとき、背後の陰から小さな気配を感じた。レイジが振り返ると、王宮の従者の一人がひれ伏していた。
「失礼いたします、客人様。王宮に不穏な動きがございます。」
「不穏な動き?」
「反和平派が王宮内に潜伏しているとの情報が……どうかお気をつけください。」
従者はそれだけ告げて闇に消えた。心臓が跳ねる。決闘会の裏で、和平を揺るがす陰謀が動いている──そう直感した。
部屋に戻ると、リリアが机に地図を広げて待っていた。
「やっぱりね。私も聞いたわ。反和平派が王宮内部に根を張ってるって。レイジ、次の任務は“内部調査”よ。」
「休ませてくれよ……!」
抗議も虚しく、任務は決まった。翌日、レイジは双姫の“特別講義”という名の訓練に参加しつつ、裏で王宮内の反逆者を探るという二重任務を負うことになった。
翌朝、訓練場に集められたのは双姫と親衛隊。全員が軽装の訓練服を纏い、ただの鍛錬場とは思えない妖艶な空気を漂わせていた。リュミエルが前に立ち、宣言する。
「今日の課題は“信頼と支配の均衡”。お互いを完全に理解しなければ、この王宮は守れない。」
カリーネが笑顔で続ける。
「つまり……今日はもっと深く、触れ合うってこと♡」
その内容は、精神干渉を強めながら相手の魔力と意識を読み取り合うという実戦形式の訓練だった。親衛隊が輪を作り、レイジをその中心に立たせる。双姫が左右から魔力を流し込み、彼の精神を試す。視覚、聴覚、嗅覚すら侵食する濃厚な魔力に、レイジは吐き気すら覚えながら耐え続けた。
(……くそ、これで調査なんかできるか……!)
だが、リリアが外で連絡を取っているはずだ。今は耐えるしかない。双姫の干渉を耐え抜き、親衛隊の術を受け流す。体は火照り、意識が揺れる。それでも、レイジは理性をつなぎとめた。
「やるじゃない、教官。」
リュミエルが小さく笑う。カリーネは彼の耳元に囁いた。
「次は、もっと深いところまで行くから覚悟してね?」
講義の合間、リリアが小声で報告してきた。「反和平派の拠点がわかったわ。地下の旧劇場よ。」
その夜、レイジとリリアは王宮地下の劇場へ忍び込んだ。埃まみれの客席の奥で、反和平派の集会が開かれていた。中心に立つのは、サキュバス領でも名の知れた過激派指導者──ルクレシア。王宮襲撃の計画を口にするその声を、レイジは震える拳で握りしめながら聞いていた。
(……これが正体か。絶対に見過ごせねぇ。)
彼らの存在を記録し、命からがら部屋を後にしたレイジは誓う。次こそ、直接対決だ──と。
レイジは一人、王宮の回廊を歩いていた。冷たい大理石の床が足音を反響させるたび、自分がまだ“異世界の客人”であることを思い知らされる。決闘会を耐え抜いたというのに、気は休まらない。むしろ、この先に待つものがより大きな試練だと感じていた。
「……見事だったわ、レイジ。」
背後から響いたのは、艶やかな声。振り返ると、薄い寝衣をまとったリュミエルが立っていた。黒銀の髪が月光を反射し、冷たい美しさを帯びている。
「リュミエル姫……いや、その格好は……」
「休息の時くらい、女らしくあってもいいでしょう?」
彼女はレイジの横を通り過ぎ、回廊の窓辺に立つ。夜風が薄布を揺らし、うっすらと肌が透けて見える。
「今日のあなたは、想像以上だった。だからこそ……次はもっと深いところを見せてもらうわ。」
「深いところ……って、また嫌な予感しかしないんだが。」
そう呟いた瞬間、背後から明るい声が響いた。
「もー、姉さんずるい! レイジと二人きりなんて!」
カリーネだった。鮮やかな桃色の寝衣に身を包み、裸足で走ってきた彼女は、当然のようにレイジの腕を絡め取る。
「レイジ、明日はね、私たちと一緒に“特別講義”するの。親衛隊も交えて、もっと親密な訓練をしましょう?」
「おい、それどういう意味の訓練だよ。」
「ふふ、明日になればわかるわ。」
二人の姫は言葉少なに視線を交わす。そこには、ただの姉妹愛ではない、権力を共有する者同士の緊張感があった。共同統治という形に落ち着いた双姫だが、その裏では互いの力を測り合う静かな戦いが続いているのだろう。
そのとき、背後の陰から小さな気配を感じた。レイジが振り返ると、王宮の従者の一人がひれ伏していた。
「失礼いたします、客人様。王宮に不穏な動きがございます。」
「不穏な動き?」
「反和平派が王宮内に潜伏しているとの情報が……どうかお気をつけください。」
従者はそれだけ告げて闇に消えた。心臓が跳ねる。決闘会の裏で、和平を揺るがす陰謀が動いている──そう直感した。
部屋に戻ると、リリアが机に地図を広げて待っていた。
「やっぱりね。私も聞いたわ。反和平派が王宮内部に根を張ってるって。レイジ、次の任務は“内部調査”よ。」
「休ませてくれよ……!」
抗議も虚しく、任務は決まった。翌日、レイジは双姫の“特別講義”という名の訓練に参加しつつ、裏で王宮内の反逆者を探るという二重任務を負うことになった。
翌朝、訓練場に集められたのは双姫と親衛隊。全員が軽装の訓練服を纏い、ただの鍛錬場とは思えない妖艶な空気を漂わせていた。リュミエルが前に立ち、宣言する。
「今日の課題は“信頼と支配の均衡”。お互いを完全に理解しなければ、この王宮は守れない。」
カリーネが笑顔で続ける。
「つまり……今日はもっと深く、触れ合うってこと♡」
その内容は、精神干渉を強めながら相手の魔力と意識を読み取り合うという実戦形式の訓練だった。親衛隊が輪を作り、レイジをその中心に立たせる。双姫が左右から魔力を流し込み、彼の精神を試す。視覚、聴覚、嗅覚すら侵食する濃厚な魔力に、レイジは吐き気すら覚えながら耐え続けた。
(……くそ、これで調査なんかできるか……!)
だが、リリアが外で連絡を取っているはずだ。今は耐えるしかない。双姫の干渉を耐え抜き、親衛隊の術を受け流す。体は火照り、意識が揺れる。それでも、レイジは理性をつなぎとめた。
「やるじゃない、教官。」
リュミエルが小さく笑う。カリーネは彼の耳元に囁いた。
「次は、もっと深いところまで行くから覚悟してね?」
講義の合間、リリアが小声で報告してきた。「反和平派の拠点がわかったわ。地下の旧劇場よ。」
その夜、レイジとリリアは王宮地下の劇場へ忍び込んだ。埃まみれの客席の奥で、反和平派の集会が開かれていた。中心に立つのは、サキュバス領でも名の知れた過激派指導者──ルクレシア。王宮襲撃の計画を口にするその声を、レイジは震える拳で握りしめながら聞いていた。
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