戦場を駆ける魔法配達士は戦い続ける

天羽睦月

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第2章 運命は巡る

第16話 試される戦い

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 出雲が竜人の剣と鍔ぜり合うと、その隙間に体を入れてレナが刀で竜人の腹部を斬りつける。先ほどとは違い、魔力をより込めているので威力を高めている。

「さっきよりもダメージが出るはず!」

 その言葉通り先ほどよりも爆発威力や大きさが激しく、竜人が声を出してよろめいた。

「いけるわ!」
「いけるわけないだろう!」

 すぐに体勢を整えた竜人は、レナの言葉を遮って力強く剣を振るう。
 刀を竜人の右足にて弾かれていたので、自身の顔に剣が迫りつつあった。

「ヤバイ!? 防げない!」

 レナが死んだと確信をし瞬間、出雲が殺させないとその剣で防ぐことに成功をしていた。

「殺させない! お前の相手は俺だ!」

 その言葉を聞いた竜人はレナを顔を蹴って吹き飛ばした。

「レナ!」

 吹き飛ばされたレナは地面に力なく倒れてしまい、出雲の声は届いていない。

「お前!」

 怒りに任せて剣を振るうと、軽々と攻撃を防がれてしまう。

「お前の力を見てやる。怒りに任せていると死ぬぞ?」
「俺はもう俺のことを考えていてくれる人を悲しませたくない! 死ねない!」

 虹色の剣に魔力を込めた出雲は目の前で威圧感を放っている竜人を見据える。
 竜人は出雲を見ると、初めて魔法を使用する。

「お前の本気を見てやる……業火の演撃」

 そう言葉を発した竜人は左手に炎の剣を出現させた。

「そんな魔法があるのか!?」
「お前達は知らないことは世界に沢山ある。これはその中の1つだ」

 竜人は2刀流となって出雲に襲い掛かる。
 左右両方向から違うタイミングで斬り下ろしてくる剣を出雲は辛うじて防げていた。

「早く本気を出さないと死ぬぞ!」
「これでも俺は本気だ! くそ!」

 連続で斬りかかってくる剣を手が痺れながらも防いでいると、体を捻じって竜人の左側に移動をして左手に炎の小さな球体を発生させた。

「火炎玉!」

 叫びながら竜人の脇腹に叩き込むと、耳を劈く音を上げながら爆発をした。
 その攻撃を受けた竜人は小さく咳ばらいをして口から一筋の血を流していた。

「がふ……隙を見て攻撃をするか……良い判断をしている」

 その言葉と共に剣と炎の剣を合わせた竜人は、1本の炎を纏う剣を作り出した。

「焔の剣! この剣の攻撃を防いでみろ!」
「やってやる! 俺はお前を倒して村の人達を救うんだ!」

 出雲と竜人は速度を上げて斬り合い続けている。
 一瞬の油断が死に繋がる速度と威力であり、とても先ほどまで恐怖で動けなった出雲とは思えない動きをしていた。

 受け流して斬りかかるが防がれ、竜人の攻撃に合わせて剣で防ぐも力によって後ろに押されてしまう。
 それでもお互いに隙を見て剣を振るい続けると、出雲の剣が突然砕け散ってしまった。

「そんな!? 剣が!?」

 砕け散っていく剣の破片を目で追っていると、竜人が左拳で出雲の頬を殴りつける。

「戦闘中によそ見をするなど、愚の骨頂だぞ!」

 殴られた出雲はそのまま地面に倒れてしまう。
 地面に倒れた瞬間、出雲は腹部を力強く蹴られてしまい口から血を吐いてしまった。

「お前は肝心なところで気が抜けるようだな。何を考えているのか知らないが、戦いに集中することだ」

 剣を持つ手に力を入れた竜人は、倒れている出雲の首目掛けて振るう。

「ここで死ね。お前に勝利は届けられない」

 届けられない。
 その言葉を発した竜人の顔を、出雲は倒れながら見た。
 憐れみか、哀しみか、どのような表情かわからない顔をしている竜人を見た出雲は、もう1つの剣を鞘から引き抜いて振り下ろされる剣を防いだ。

「確かに集中してなかったかもしれない……それでも……それでも俺は……勝利を届けるんだ!」

 剣を傾けて攻撃を受け流すと、竜人の股を潜って体制を整えることにした。
 出雲が鞘から抜いたもう1つの剣は、白銀に輝く綺麗な剣であった。

「これは、凄い綺麗な剣だ……この剣を見ると姉さんからもらった剣を思い出すな……」

 出雲が剣を見ていると、竜人がまたよそ見かと話しかける。

「剣を見ていただけだ!」
「それをよそ見と言うんだ。本来ならもうお前は首を落とされているぞ」

 苦虫を嚙み潰したような顔をしている出雲が突撃をしようと剣を構えた瞬間、竜人が潮時だなと言って魔法を解除して剣を鞘にしまった。

「潮時ってどういうことだ!? まだ戦いは終わっていないぞ!」

 叫ぶ出雲に向けて竜人が森の方向を指さすとレオやノア、それに多数の護衛部隊の姿がそこにはあった。

「魔物を倒し終わったのだろう。これでは俺は劣勢になる」

 剣を鞘に入れた竜人は丘の方向に走って行き、その姿が次第に見えなくなると終わったんだと出雲は地面に座って小さく呟いた。
 数回目を閉じると緊張の糸が途切れたのか、途端に疲労感が出雲の体を襲ってきていた。

「逃げたのか、頃合いだと思って逃げたのかわからないけど……村に被害が出なくてよかった……」

 砕けた剣の欠片と手に持っている剣を見ていた出雲は、レナにどう説明をすればいいのかと悩み始めた。

「レナに剣のことをどう説明をすれば……あ、ていうかレナ倒れたままじゃん!」

 レナが竜人に倒されたことを思い出した出雲は、立ち上がって駆け出した。
 竜人によって倒されたことにより気絶をしているようで、すぐに医師に見せなければと出雲は考えていた。

「レナ! 大丈夫か!?」

 倒れているレナに話しかけるも全く反応がなく、腹部から血が流れ続けて綺麗な和服が鮮血に染まっていた。

「レナ! レナッ! しっかりしてくれ!」

 体を揺らして何度も声をかけるもレナは目覚める兆候が見えず、それどころか出血がさらに酷くなってしまう。
 何をすればいいのかと出雲が戸惑っていると、ノアがどけと叫びながら出雲とレナな間に割って入る。

「呆けてないで早く村に連れてけ! レナ様が死んでしまうぞ!」
「ご、ごめん……」
「レオ! お前は部隊を纏めて残敵がいないか警戒をしてくれ!」

 ノアが叫ぶと、遠い場所にいるレオがわかったと声をあげた。
 レオの返事を聞いたノアは、出雲に一緒に来いと言ってレナを背負った。

「お前はレナ様の武器を持て! 一緒に診療所に行くぞ!」
「わかりました……」

 怒られて落ち込んでしまうも、ノアに指示をされて地面に落ちている刀とレナが腰に差している刀を手に持った。

「持ったか? 行くぞ!」

 出雲を睨みながらノアは村に向けて駆け出した。
 レナは現在も血を流しているので、草原の草花に赤い鮮血が滴り落ちていた。

「レナ……俺がもっと強ければ……」

 小さく呟きながら前を走るノアを追いかける。

「そういや竜人に魔族を倒したって言ったら、途中から態度が変わったような気がする。次に会ったらそこを攻めれば、何かが変わる気がする」

 ノアの後を走りながら出雲は考えていた。
 自分が弱いことを改めて思い知らされて、どのように鍛錬を積む必要があるかなど、しなければならないことが多数あると考えていた。
 また、今回の戦いで思い知らされたことが多く、課題が沢山あるなと肩を落としていた。

「俺は勝利も届ける配達人だ……ここで挫けないで前に進まないと!」

 何度も頷きながら頑張らないとと声を発していると、いつの間にか村に到着をしていた。

「村に入っていたんだ!? 気が付かなかった」
「お前が何やら1人で呟いている最中に到着していたよ。こっちだ!」

 ノアが来いと叫んで出雲の前を再度走る。
 村に1つしかない出雲の治療をしてくれた医師の診療所に向かう。

「村に活気がない。魔物が攻めてきたのと、怪我をした人がいたからかな?」

 数人規模で村を歩いている人はいるが、肩を落として怯えているように見える。
 またいつ攻めてくるかわからないことや、竜人や他の種族が魔物を率いて村を滅ぼしにかかるかわからないことも1つの要因である。

「着いたぞ。お前も入れ」

 ノアに続いて診療所内に入ると、出雲の目に忙しなく動く医師と看護師の姿が映った。
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