王女騎士の魔法騎士

天羽睦月

文字の大きさ
8 / 10
第1章

第7話 追い込み訓練

しおりを挟む
「今日はこれで帰ります! ありがとうございました!」

 頭を再度下げて家に帰ることにした。
 これから試験の前日まで訓練をする内容が増えた。辛いというよりは嬉しいという感情の方が勝っていることに気が付いていない。真剣を扱うことはとても難しいと聞く。筋力トレーニングもしなければいけないと独自トレーニングをしようと考える。

「試験まで残り少ないから、出来ることはやらないと! 頑張るぞ!」
 
 試験に合格をするために頑張ろうと決意をする。
 そして、これからの数週間は大変であった。真剣を使っての天明流の技の出し方や、魔法を纏わせて神楽耶の重さに耐える訓練など想像をしていなかった訓練が多かったからである。

「ほら! また魔法が解除されているぞ! もっと気合を入れろ!」
「すみません!」

 ある日には上手く出来なくて怒られる。

「もっと力を入れろ! 握力が弱っているぞ! 握り締めろ!」
「すみません!」

 またある日には、源十郎も真剣を用いて教えてくれる訓練をした。
 迫る真剣が恐ろしくて目を瞑ってしまうと、腹部に掌底を当ててくる。何度か咳き込んでしまうほどの威力を受けるので、腹筋も鍛えられる一石二鳥の訓練だと源十郎は言っていたのである。

「もっと気合を入れろ! お前はいつ真剣を思うように扱えるようになるんだ!」
「すみません!」

 感謝の言葉ばかり言っていた日が過ぎると、今度は謝ってばかりの日々が続いてしまう。あの時は何だったのかと愚痴を漏らしていると、上の空だったのがバレてしまったのか神楽耶を飛ばされて腹部に蹴りを入れられてしまった。

「がっは!?」

 腹筋に力を入れていなかったので、息ができないほどのダメージを受けてしまう。地面を何度も転がっていると、視線の先にローファーを履いている誰かの足が目に入った。

「ローファー? 誰だ?」

 視線を上に向けると、頬を膨らませている麗奈の顔がそこにあった。
 覗かないでと言いながら右足で勢いよく出雲の顔を踏みつけてくる。その際に白いパンツが見えたことは秘密だ。

「痛いよ! 覗いてなんかないよ!」
「本当なの? スカートの中に視線を感じたけど?」

 確かに白色のパンツが見えたけど、そのことは言わない方がよさそうだ。

「み、見てないから!」
「嘘くさいけど、いいわ。ところでここに寝転がってどうしたの?」

 麗奈は道場の入り口の前に寝転がっていた出雲を心配したのか、顔を踏みつけてから大丈夫なのと聞いてきた。

「ちょっと源十郎さんに吹き飛ばされてね。後は麗奈に踏まれた頬が痛いくらいかな」

 ちょっと意地悪をしてみることにした。実際、踏まれた頬はかなり痛いので嘘ではない。痛いという言葉を聞いた麗奈は、慌てた顔をしながら屈んでごめんねと赤く腫れている頬を優しく触ってきた。

「つい踏んじゃって……ごめんね……」
「いや、もう大丈夫だからさ。落ち込まなくていいからね」

 触られた頬に感じる手の熱を感じながら麗奈の方を向くと、短いスカートから覗く綺麗な足と白いパンツが見えた。数秒間見つめてしまっていると、どこを見ているのという声が耳に入る。

「あ、い、いや、はははは……」
「良い景色だったかしら? 何か言うことある?」
「ありがとうございます。そして、ごめんなさい」

自身でも良い笑顔だと思える顔で謝ると、麗奈は可愛らしい笑顔を浮かべる。
そして一瞬で笑顔から真顔に変えると、両手で出雲の頬を強く叩いてきた。

「ぶべえ! い、痛いよ……」
「良い思いをしたお返しよ。これで勘弁してあげるわ」

 天使も時には悪魔になるということだろう。
 麗奈は立ち上がると、ただいまーと言いながら母屋の方に歩いていった。

「良い思いをして元気が出ただろう? 付き合う前に孫の下着を覗くとは良い根性だ」
「不可抗力ですよ。見たくて見たわけじゃ……」
「でも嬉しいだろ? 麗奈は言い寄られたり、お見合いをさせてほしいってたくさん言われているんだ。だけど、その全てを断ってお前といる。その答えが分かるか?」

 そこまで言われたら流石に分かる。
 麗奈が自身のことを好きだということを。だけど好きになる要素がなかったと思うけど、いつ好きになってもらえたのか。

「分かってます……近いうちに答えを出します……」
「それでいい。あまり孫を悲しませないようにな」

 孫を悲しませるなか。
 麗奈を悲しませたくないけど、俺は夕凪美桜を忘れられない。俺の行動の柱は魔法騎士団に入って夕凪美桜に会うことだからな。この感情が憧れか、愛からかは分からないけど、もう一度会いたいんだ。

「……悲しませないようにします……」

 即答は出来なかったが、悲しませないようにと返すことができた。
 その場はそれで終わったが、訓練は再会される。既に書類は提出をしているので、後は受験票が届くのを待つのみであった。

「そういえば受験票は届いたか? それに試験当日の場所とかが書いてあるらしいぞ」
「まだ届いていないんです。二週間後に試験なんですけどね」

 訓練に次ぐ訓練でいつの間にか試験が目前に迫っていた。
 まだ時間があると余裕を持っていたのだが、近づくにつれて緊張をしてしまう。これで試験に合格を出来るのか、そもそもどのような試験が行われるのか分からないことも不安の一つである。

「そう緊張をし過ぎるな。お前以外も同じ条件だ」
「そ、そうですよね……」

 確かにそうだ。俺以外に受験者も同じ条件で受けるんだからな。一人で緊張をしてて力を発揮できなかったら、源十郎さん達に合わせる顔が無いな。

「さて、訓練も今日で終わりだ。後は試験まで体を休めたり、この道場で教わったことを固めて自分の力に昇華させるんだ」
「一人でですか!?」
「そうだ。直前までして怪我をされたら意味がないし、まだここ数週間の訓練も自身の力に昇華をしてないだろ? それを固めるんだ。そうすればよりお前は強くなる」

 肩に手を置かれてお前ならできると鼓舞をされる。
 ここまでしてくれた人達に応えないといけない。魔法騎士団に合格をするという結果を出さないと恩を返せないと考えた出雲は、必ず応えますと返答をした。

「そう言ってくれるとありがたい。お前なら大丈夫さ」
「ありがとうございます!」

 その会話をすると、源十郎は母屋に戻って行く。
 少しづく遠くなる背中に頭を下げて、心の中で感謝の言葉を何度も繰り返す。源十郎には道場に入った時からお世話になっているので、合格通知書を必ず見せようと誓う。

「さて、これまでした訓練を思い出してやるか。絶対に合格をするぞー!」

 神楽耶を手に取って素振りを始める。
 筋力も付いてきたので軽々と振るうことが出来るようになったので、魔法を付与させたり天明流の技と合わせて型を次々に使っていく。

「まだ遅いな。源十郎さんはもっと素早く使っていたし、技と技を華麗に繋げていたな」

 まだまだだと思いながら日が暮れるまで訓練を続けた。
 そして三日後、ついに受験票が届いた。場所は魔法騎士団の本部なようで、どんな試験をするのかと不安が襲ってくる。自室にてベットに寝転がりながら受験票を見ていると、筆記用具などを持ってこいなどが一切書かれておらず、集合時刻と場所だけが記載されているのが目に入る。

「集合時刻と場所だけか。筆記試験はなくて、実技と面接だけとかなのかな? 結構受験者多そうだから面接とか時間かかるだろうなー」

 どれだけ時間がかかるのだろうと思いながら、受験者を握って目を閉じた。試験が目と鼻の先なので、落ち着いて力を発揮するぞと何度も繰り返し口にすると、壁に立て掛けている神楽耶を掴んだ。

「頼むぞ。俺の力になってくれ」

 そう言うと、神楽耶が淡い光を放つ。

「淡く光った? 俺を少しでも認めてくれたのかな。なら嬉しいな」

 ほくそ笑みながら、神楽耶と受験票を掴みつつベットで寝てしまった。
 どんな試験が待ち受けているのか、これからどのような運命に巻き込まれるのか分からないが、出雲は自身の目的を果たすために魔法騎士団に入団をすることだけを考えている。
 その目的が果たされるのかは定かではないが、辛い運命にも立ち向かう覚悟だけは前々から持ち合わせている。そのため、不安と同時にどんな難関も必ず突破をしようと闘志を燃やしていたのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...