ジグソーパズル

仲良くしましょう、彼女さん

青年と「こんにちは」

「ん？なんだ藍田。知り合いだったのか？」
差し出された手を見て、担任が不思議そうに問い掛ける。
まるで漫画のような出来事に、水面下で級友たちも騒ぎ始めた。
「え？えーと、その、知り合いというか……。」
教室中の視線を独り占めしていることに体を震わせながら、当たり障りのない言葉を探す。
ここで「知り合いではない」と言ってしまえば転校早々青年に『嘘つき』というラベルを貼り付けることになってしまう。
かといって「友人だ」などと言ってしまえばどこかでボロを出してしまった時に私が痛い人になってしまう。
これは、なんとも難しい問題だ……。と脳の普段使わない部分をフル回転させ、互いの利益となる言葉を選び出していた。……の、だが。
「知り合いというか……付き合っているんです。」
恥ずかしさゆえか僅かに掠れた声が全てをぶち壊した。
「……うん？そうなのか。それは知らなかった。」
否定しようにも突然の急展開に大量生産レベルの知能しかない脳みそは言葉を探し出せず。遠回しに肯定を示す担任の言葉が先に教室に響き渡った。
水面下で起こっていたざわめきが少しずつ正体を現すのをどこか遠いところで聞き流しながら、安穏とした高校生活の終わりを感じ取った。