ジグソーパズル

仲良くしましょう、彼女さん

青年とおともだち

連絡事項を終えた担任が教室を出て行くと、途端に耳を塞ぎたくなるような声量で級友たちは騒ぎ始めた。
曰く、「秋崎君はどこから来たの？」やら「いつから藍田さんと付き合ってるの？」やら。
付き合ってなんかない。と吐き捨てたくなる衝動をどうにか押さえ込み、ぐったりと机に倒れこむ。
一度は遠のいた眠気が、再び包み込もうとしているようだった。
「えっと、転校前は……県外だから、わからないと思うよ。」「いつから付き合ってるかは……はは、なんだか恥ずかしいな。秘密、ってことにしようかな？」
気恥ずかしげな声が耳を通過していく所為で、夢見は最悪になりそうな気はするけれども。
「瑠璃、ちょっと。」
トントン、と机を叩く音と共に声を掛けられる。はしゃいだように弾ける声に掻き消されそうな、か細い声。
頭を傾けるようにして僅かに見上げると、心配そうな友人の顔が目の前にあった。
「…………何。」
苛立ちが溢れそうになるのを抑えながら喋ると、機械のような無感情な声が溢れた。
「そんな不機嫌にならないでよ。私は、事勿れ主義の瑠璃がこんなに振り回されてる状況が気になってるの。転校生のことも確かに気になるけど、私の関心の主体は、瑠璃。あんたよ。」
真っ直ぐに瞳を見つめられて、思わず小さく後退る。ふざけたような言葉も、冗談ではないと示すように淡々とした口調で紡がれた。
「はは……私愛されてる……。」
「茶化さないで。本当、どういうことよ。」
小さく溜息を零すように場繋ぎを口にすると短く叱咤され。私よりも厳しい光を湛えて、転校生を睨み付けた。
「……昼休みにでも話すよ。それまでに、考えまとめておく。…………ここじゃ、話せないしね。」
その一貫した強い姿勢に、下手な嘘を吐く気も失せ。白旗と共に妥協案を提示した。
「わかった。」と満足そうに頷き、自分の席へ戻る彼女を見て、人知れず溜息をつく。
此奴の所為でまた厄介なことになった。と、横目で隣席の青年を見ながら。