ジグソーパズル

仲良くしましょう、彼女さん

青年とクラスメイト

それからの授業は、あまりよく覚えていない。
教科書という紙束で膨らんだ鞄を放置して、毎回私の机に近付いてくる青年に辟易しながら教科書を押し付け。睡眠学習を繰り返していたからかもしれない。
「藍田さんって、意外と不良なんだね？」なんて茶化すような口調で話しかけてくる青年を無視するために取ったパフォーマンスだったのだが、睡眠不足が祟ってかいつの間にか本当に寝ていた。
得体の知れないストーカー隣にいる青年を恐れて眠れなかったというのに、本末転倒だとも思うが……気が付いたら意識が飛んでいたのだから仕方がない。

「……瑠璃、瑠璃ってば。ねぇちょっと、いい加減に起きなさいよ。……ねぇ聞いてる？」
「……ふぁ？」
いけない。また考え込んでいるうちに寝てしまったようだ。軽く頭を振りながら辺りを見回すと、人がまばらに散っている。……どうやら、昼休みになっていたらしい。
「全く。昼休みに話してくれるんじゃなかったの？」
「あー、そうだった。……どこで話そうかな……。」
鞄からお弁当の包みを取り出しながら、窓の外を眺める。それこそお昼時だからか、陽光が適度に照っていて暖かそうな雰囲気だ。
「ここじゃダメなの？」
「ダメって言ったでしょ。取り敢えず外行こ。人が居ない場所探す。」
荷物を持ち直すと振り返ることなく言い切り、中庭に向かって歩き出す。背後で慌てる気配がしたものの、なんとなく待たずに歩を進めた。被害妄想のような昨日の出来事をどう説明するかを意味もなく考えながら。