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異国での新婚生活
しおりを挟む私が嫁いだ国の王都は、母国とは違ってとても大きな都市だった。
高くて厳かで立派な建物がそびえ立つ町並みは、雪を被っていてとても綺麗だった。
結婚式を終えて初めて自動車でこの王都に入った時、私はその美しさに見惚れた。そして春になったら夫と一緒にこの町並みを歩きたいと思った。
そしてようやく遅い春が来て雪が溶けた後数回、私は夫と王都へ出かけ、ショッピングをしたり、食事をしたり、お茶をしたりした。
主人の職場の方々や、主人の友人のご夫婦とも街中で出会ってご挨拶をした。私達は皆さんに祝福してもらい、とても幸せだった。
しかし、二月ほど経つと、私は街どころか屋敷の庭にも出られなくなった。
窓にも扉にも魔法がかけられていて、開かないようになっていたのだ。
「アリスティ、アリスティ……
どうか僕を置いて行かないで。
君無しでは僕は生きて行けない。
だからどうか外へは出かけないで。
アリスティ、愛してる!」
最初のうちは夫のこの言葉に照れていたが、全く外へ出してくれなくなった夫に恐ろしさを覚えるようになった。
もしかしたら私を監禁しようとしているのじゃないかしら…… 嫉妬で私を他人と会わせないようにしているのではないかと。
私がそう疑い始めると、それに気付いた夫は、慌てて屋敷から出してくれた。
そして再びショッピングやレストランにも連れて行ってくれるようになった。
そして夫がいなくても、舞踏会で知り合った奥様方と喫茶店でお茶をする事も許されるようになった。
とはいえ、短い春が終わってからというもの、私は一歩も屋敷の表玄関から外へ出た事がなかった。夫は毎日玄関から王城へ登城しているというのに。
ではどうやって私が街へ出かけているのかというと、地下道を通っているのだ。
王都では地下道というか地下街が、各屋敷の地下室と繋がっていたのだ。
この地下道は元々は坑道だったらしい。
この国は地下資源が豊富で、その地下資源を利用した鉱業や工業で繁栄してきた国だったのだ。
そしてこの国は一年の三分の一ほど雪に覆われていて、外を移動するのはかなり大変なことだという。そこで、使われなくなっていた坑道を地下街に整備したようだ。
ただし、客は地下街から地上の店舗へとは上がれない構造になっていた。
「今は夏なのだから、地下ではなく地上をお日様を浴びながら街を歩きたいわ」
お茶を飲みながら私がため息混じりにこう愚痴ると、奥様方がとんでもない!という顔をした。
「この国のお日様の威力は凄いのよ。常春の国から嫁がれた貴女にはわからないでしょうけど」
「日焼けしたらどうなさるおつもり?」
「それに紫外線もすごいのよ。少し外を歩いただけでもシミだらけになるわ」
「そうそう。その上、紫外線はシミだけじゃなくて、将来シワにもなるのよ。恐ろしいわぁ~」
なるほどと私も思った。
皆さんは外へ出かけないので、お肌があんなにも白くて、シミの一つもないなのですね。
私は自分の手に目をやってため息をついた。
私は学生の頃は植物学を選考していて、フィールドワークを常に行なっていた。
珍しい植物が見つかれば、すぐに現地に訪れては直接観察をしていたのだ。
そのため、一般的なご令嬢と比べると外を出歩いていた時間が長く、いくら対策をしていたとはいえ、お日様を浴びていた時間はかなり多かった。
まだ十八ですからシミやシワはさすがにまだないが、こちらの奥様方のような色白美肌にはほど遠い私だった。
しかも手は対策し辛かったので、かなり荒れている上に白魚の手とはまさに正反対だった。
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