推しと被りと晒し

山上田村麻呂

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出会い

はじめの一歩

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2020年4月 

「女性用風俗」に足を踏み入れた。
35歳の私は一回り以上年下の男の子を指名した。
予約は簡単だった。
秒で会える。


1時間1万円。
交通費千円。
初指名千円。
120分コース。
合計22000円。

初体験だから緊張はする。

仕事より緊張する。

「はじめまして」
声をかけてきたのは、女の私よりはるかに可愛い男の子だった。

ああ、私に彼氏ができないわけだ。
こんなに可愛い男の子もいるのか。
最近の若い子は、化粧もするのか。
綺麗な肌だ。
ぴちぴちとは、このことか。

決して悪くない居心地の中で、私は彼の話を聞き、施術の流れを聞いた。

会って15分。
シャワーを浴びている。
さすが、風俗。話が早い。

指圧、アロママッサージ、、、
そして性感マッサージ。

バイトとはいえ相手はさすがプロ。
その空気に溶けて、その若さと快楽に一瞬で引きずりこまれた。


こんなにも、気持ちの良いものだっただろうか。
若さか?
そうだ。若さだ。もう35歳。
こうでもなければ、20代前半の男の子に裸で抱きしめてもらうことなどないだろう。
これは当然の快楽。
22000円払ったんだ。
ありがたく浸ろう。

マッサージが終わると、またニコニコと会話があり、時間がきて、120分が終わる。

はっきりと言えば、
スッキリした。
たまには良いではないか。
これは正に、おっさん的考えなのかもしれない。
しかし、誰に否定されよう。
一生懸命に正当化していく自分がいる。

別れ際に「また会いたい」といわれる。
「またお金下さい」に聞こえる。
それはそれで、悪くない。

おっさん化している私は、
見栄を張り、来週の同じ時間に会おうと約束をしてしまった。
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