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暁×雪兎編
11 甘さの代償(暁視点)
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最初は、ウザいって思ってた。高校生になり、初めて入った教室。中高一貫だから、当然、見覚えのある顔ぶれもある。中学生の時に同じクラスにいた奴等は、俺を遠巻きに見る。
当然だ。俺は誰とも一緒にいてはいけないから。俺がやってきた事のツケを、他の奴等に押し付けるつもりなんてない。でも、其奴は自然と俺の中に入ってきた。
成瀬 響也。
名前だけなら知っていた。試験の度に表示される順位表。その上位に必ずある名前だったから。そして、もう一人。キョウの幼馴染みで、必ず、俺の右隣にある名前。
我妻 雪兎。
関わる気なんてなかった。でも、二人は俺が不快になるようなことはしなかった。キョウは特に空気を読むことが得意なのか、絶対と言っていいほど、俺を自然と受け入れる、そんな、存在だった。
忍が、フラフラしているのは何時もの事で、毎回、困ったことがあると、俺をダシに使ってた。まあ、面倒だから、否定も肯定もしていなかった。
バレンタインデーの少し前、ユキが告白をしてきた。受けたのはほんの気紛れだった。何時までも、忍の相手をしているつもりはなかったし、いい機会だと思って。
でも、俺の考えが甘かった。ユキはキョウ同様、押し付けるところが全くない。それどころか、居心地が良かった。だから、甘えてしまったんだ。受け入れることは、危険を呼び寄せることだ。分かっていたのに、手放せなかった。
今日見た光景が、脳裏を掠めた。分かっていたことだ。忍の時に学習したんだ。面倒だと遠ざけるのは、本当の意味で、面倒を避けるためだった。たった一つの我儘で、甘えが、最悪の事態を招いた。未遂だったとしても、それは、決定的な出来事だった。
結局、俺は一人でいなきゃ駄目なんだと、突きつけられた気がした。親でさえ、俺を疎んだ。兄さんも、結局、俺を持て余してる筈だ。片親だけが同じの異父兄弟。それも、当然のように、放って置かれた。広い家の中は冷たくて、確かに、お手伝いさんは居たけど、それは、仕事としているだけ。俺に目をかけてくれる者など、誰一人いなかった。
甘えは断ち切らなきゃいけない。俺が招いた過ちで、俺が読み間違えた行動が、全ての原因なのだから。
静かに扉をノックする音がする。今、此処にいるのは兄の貴羅だけの筈。兄さんなら、そんなことなどせず、強引に扉を開ける。膝を抱え蹲っていた顔を上げる。勘違いだったのかと、再び、膝の間に頭を預けた。
「……アカ、居るんでしょう。此処開けて」
微かに聞こえてくる声は、冷たく突き放したユキの声。戻って来る筈なんかない! 意識して、冷たくしたんだ!
「此処開けて! アカ!」
少しづつ、大きくなる声。でも、絶対に開けない。学校では学年が上がった時のクラス割で同じクラスになったから、避けるのは無理だけど、顔も声も掛けるつもりなんてない。
「僕は、離れたくない! そばに居たいんだよ! だから、此処を開けて!」
俺は頑なに拒絶した。内開きの扉の前に背を預けて座っているから、かなりの力がなければ開けられない。そのうち、諦めるだろうと、息を潜めた。
「アカ!」
俺は耳を塞いだ。今日はたまたま、未遂だった。首謀者に、きつい制裁も加えた。でも、俺は彼奴等からしたら、目障りな存在なんだ。何時同じことが繰り返されるか、分からないんだ。
「アカ! 暁! 此処を開けて!」
俺はそのユキの声に驚き扉を見上げた。ユキは絶対に俺の名前を呼んでくれなかった。みんなが呼ぶ、アカ、と呼べるようになるまで、かなりの時間を要したんだ。それなのに……! どうして、今、呼んでくれる? 今更……!
「暁……、僕を消さないで……。全部、全部、教えてもらったよ。でも、僕には暁が必要なの……」
その声は悲し気で、胸が締め付けられた。
「絶対、失いたくない!」
分かってた。受け入れちゃいけないって。でも、体は本能に忠実だった。勢いのまま扉を開き、ユキの腕を強引に引き寄せいていた。勢いのまま閉め、扉にユキの体を押し付け、抱き締めていた。落ち着く体温と香り。捨てなきゃいけない、それなのに、俺は縋り付いていた。
当然だ。俺は誰とも一緒にいてはいけないから。俺がやってきた事のツケを、他の奴等に押し付けるつもりなんてない。でも、其奴は自然と俺の中に入ってきた。
成瀬 響也。
名前だけなら知っていた。試験の度に表示される順位表。その上位に必ずある名前だったから。そして、もう一人。キョウの幼馴染みで、必ず、俺の右隣にある名前。
我妻 雪兎。
関わる気なんてなかった。でも、二人は俺が不快になるようなことはしなかった。キョウは特に空気を読むことが得意なのか、絶対と言っていいほど、俺を自然と受け入れる、そんな、存在だった。
忍が、フラフラしているのは何時もの事で、毎回、困ったことがあると、俺をダシに使ってた。まあ、面倒だから、否定も肯定もしていなかった。
バレンタインデーの少し前、ユキが告白をしてきた。受けたのはほんの気紛れだった。何時までも、忍の相手をしているつもりはなかったし、いい機会だと思って。
でも、俺の考えが甘かった。ユキはキョウ同様、押し付けるところが全くない。それどころか、居心地が良かった。だから、甘えてしまったんだ。受け入れることは、危険を呼び寄せることだ。分かっていたのに、手放せなかった。
今日見た光景が、脳裏を掠めた。分かっていたことだ。忍の時に学習したんだ。面倒だと遠ざけるのは、本当の意味で、面倒を避けるためだった。たった一つの我儘で、甘えが、最悪の事態を招いた。未遂だったとしても、それは、決定的な出来事だった。
結局、俺は一人でいなきゃ駄目なんだと、突きつけられた気がした。親でさえ、俺を疎んだ。兄さんも、結局、俺を持て余してる筈だ。片親だけが同じの異父兄弟。それも、当然のように、放って置かれた。広い家の中は冷たくて、確かに、お手伝いさんは居たけど、それは、仕事としているだけ。俺に目をかけてくれる者など、誰一人いなかった。
甘えは断ち切らなきゃいけない。俺が招いた過ちで、俺が読み間違えた行動が、全ての原因なのだから。
静かに扉をノックする音がする。今、此処にいるのは兄の貴羅だけの筈。兄さんなら、そんなことなどせず、強引に扉を開ける。膝を抱え蹲っていた顔を上げる。勘違いだったのかと、再び、膝の間に頭を預けた。
「……アカ、居るんでしょう。此処開けて」
微かに聞こえてくる声は、冷たく突き放したユキの声。戻って来る筈なんかない! 意識して、冷たくしたんだ!
「此処開けて! アカ!」
少しづつ、大きくなる声。でも、絶対に開けない。学校では学年が上がった時のクラス割で同じクラスになったから、避けるのは無理だけど、顔も声も掛けるつもりなんてない。
「僕は、離れたくない! そばに居たいんだよ! だから、此処を開けて!」
俺は頑なに拒絶した。内開きの扉の前に背を預けて座っているから、かなりの力がなければ開けられない。そのうち、諦めるだろうと、息を潜めた。
「アカ!」
俺は耳を塞いだ。今日はたまたま、未遂だった。首謀者に、きつい制裁も加えた。でも、俺は彼奴等からしたら、目障りな存在なんだ。何時同じことが繰り返されるか、分からないんだ。
「アカ! 暁! 此処を開けて!」
俺はそのユキの声に驚き扉を見上げた。ユキは絶対に俺の名前を呼んでくれなかった。みんなが呼ぶ、アカ、と呼べるようになるまで、かなりの時間を要したんだ。それなのに……! どうして、今、呼んでくれる? 今更……!
「暁……、僕を消さないで……。全部、全部、教えてもらったよ。でも、僕には暁が必要なの……」
その声は悲し気で、胸が締め付けられた。
「絶対、失いたくない!」
分かってた。受け入れちゃいけないって。でも、体は本能に忠実だった。勢いのまま扉を開き、ユキの腕を強引に引き寄せいていた。勢いのまま閉め、扉にユキの体を押し付け、抱き締めていた。落ち着く体温と香り。捨てなきゃいけない、それなのに、俺は縋り付いていた。
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