置き去りの恋

善奈美

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貴羅&響也編

16 オモイが溢れてくる■(響也視点)

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 掴まれている左腕が痛いし、熱かった。いきなり変わった言葉。これが本来のこの人。鋭い視線は何かを狙ってる感じだし。って、俺かよ!
 
「……いきなり変わるのはちょっと……」
 
 って、俺テンパってるし! その辺は察してくれっかな!?
 
「上っ面繕う必要ないよな?」
 
 確かにそうだけどさ。何なの、この人。何のスイッチ入ったんだよ。腕はまだ、掴まれたままだし。逃げようとすれば、力入れるし。この兄弟、力があるんだな。決して、俺が非力という意味じゃねぇよ!
 
「もう、本当に何なの?」
 
 前から思ってはいたけどさ、アカと関わるようになってから、平穏な日常がどっかいったんだよ。主にユキがアカと付き合うようになってからだけどな!
 
「逃げないっていうなら、手を離すけど?」
「逃げたら駄目なのかよ」
 
 その笑みは何なの? 気持ちはあるけどさ、今までとは別の意味で怖いんだよ。
 
「俺の唇奪っといて、逃げたら承知しない」
「あんただったら、誰とでもしてたんじゃねぇの?」
「あれが初めて」
 
 マジ?! 節操なさそうなのに、どうしてそうなってんだ?!
 
「まあ、やるのは性欲処理で何も感じないけど。唇は別だろう?」
「いや、同じじゃねぇ?」
「上と下では感覚違うんだわ」
 
 そうなの? まあ、忍とアカがバイだって、要らない情報くれてるもんで、言われても何ともないんだけど。この歳で、この容姿で未経験は無しだよな。周りが放っておかなそうだし。
 
 それに俺は初心者だから分からねぇって……。普通さ、あんな感じで離れたら、少しは微妙な感じになんじゃねぇか? しんみりさが微塵もないのは何でだよ!
 
「もう、マジで腕離して」
 
 掴む手が強すぎて、指先が痺れてきてんだからさ。
 
「じゃあ。マーキングしていい?」
「マーキング!?」
「そう、ここに」
 
 いきなり腕を引っ張られて。もう、強すぎてさ、腕抜けそう何だけどさ。左耳朶を揉まれた!
 
「ここにさ。ピアス付けていいか?」
「何で、ピアス!?」
 
 マーキングって言うから、アダルト方向に思考が働いたよ! これも腐った女共のせいだな。何気に毒されてんだな。
 
「お揃い?」
「はあ? その歳でお揃いとか言うなよ!」
「まあ、片方が使われずに残ってる、ってこともあるけどな」
 
 よく見ると、左耳に随分綺麗に光を反射する青い石のピアスがある。今まで気が付かなかった。まあ、身長差のせいもあるけどな!
 
「それ、高そうなんだけど?」
「んー? それなりの値段はするけどな」
 
 何か器用にベッド脇の引き出しを漁ってんだけど。嫌な予感がすんだけどさ。左腕を掴んでいた手が、首に回って、更に拘束してきた! 首が絞まるから!
 
「先ずは消毒な」
「マジで開ける気かよ!」
「冗談で言ってるとでも?」
 
 はい。この人に冗談とか言う言葉はないんだよな。左耳にヒンヤリとした感触。アルコールのウェットティッシュ常備って何者だ? その後に来たのは耳近くで聞こえた機械音。正確にはバネの音。って、今のはなんだよ!
 
「……今のは何?」
「んー? もう開いた」
「はい? 開いたって?」
「このままでもいいんだけど、マーキングだからな。ピアス変える」
 
 耳にあり得ない感覚。ジンワリ、熱をもち始めてっし。何かが抜けていくような、背中を悪寒に近い感覚が走った! そして、更に何かが入れられる感じがする……。微妙に痛いし……。
 
「外したら、どうなるか分かるよな?」
 
 ……脅しは無しでお願いします。どうして、俺様になってんだよ。
 
「もう、脱力しかねぇよ」
「諦めて俺のものになっとけよ」
「その言葉使いも違和感が半端ねぇし」
 
 本性現しすぎだろう。アカも知らないんじゃねぇの?
 
「新鮮だろう? 一応、風呂に入ったらピアスホールをシャワーで洗えよ。外さなくても問題ない。後は癒着しないように一日に数回ピアスを回せな」
 
 はい。逆らいませんとも。
 
「……帰ってもいい?」
「暁は二、三日って言ってただろう。とりあえず、今日は泊まりで、抱き枕決定な」
「どうして抱き枕?!」
「よく寝れたから」
 
 他人の隣で寝れたのは奇跡だって、
どんだけ、他人に一線引いて生きてきたんだよ、この人は。
 
「もう、逃げる気力ないだろう?」
「あるとでも? 首をあれだけ絞めといて、何言ってんだよ!」
 
 俺はあんたに比べたら小柄なんだよ! 手加減してくんねぇかな?!
 
「本当に逸材。逃したけど、暁のおかげで捕まえるのに成功したしな」
 
 まあ、暁が気を利かせてくれたからって、そうだよ。アカのせいだよな。絶対、何か奢らせてやる! まてよ。逆に言い包められんじゃね? 俺のおかげでくっ付いたとか……。今のアカなら絶対に言う。間違いなく言うに決まってる………。
 
「とりあえず、風呂に入るわ。一緒に入るか?」
「丁重にお断りします。まだ。清い体でいたいんで」
 
 苦手な敬語もバッチリな断り文句だ。でも、喰われるのは時間の問題なのか?
 
「でもさ、キス……は、してみてぇかも?」
「ふうん?」
 
 あのさ、俺を捕まえたまま、後ろから抱き込まないでくんね? で、そこで口噤むのやめてくんねぇかな? 恥ずかしいこと言った自覚はあんだよ!
 
 いきなり顎を捕まえられて、無理矢理後ろを向かされた。首が痛てぇし!
 
「!?」
 
 唇に触れた柔らかくてカサついたもの。それは一度、触れた感触。離れていくときに、唇を舐められた!
 
「結構、癖になる感触」
 
 いい顔で笑うんじゃねぇ! そして、幸せ感じてんなよ、俺! 何でか、ジンワリ何かが溢れてきたような気がした。
 
 
■おまけ■
 
 別々に風呂に入って、当然、着替えもない俺は貴羅さんのスウェット借りてる。まあ、大きすぎて捲るしかねぇし、挙句、肩が出ちまうのが問題点だ!
 
「このピアスの石、何なの?」
 
 貴羅さん作の夕食を食べ終わった後に、疑問をぶつけてみた。どう見ても、その辺で売ってるような代物じゃあないよな。
 
「ブルーダイヤ」
 
 は? まてよ。ブルーダイヤって、希少価値が高いんじゃねぇの? 俺もよくは知らねぇけど……。
 
「青い石が好きではあるけど、他の石は使ってると濁るんだよ。ダイヤモンドは曇らないからな」
「コンナタカイモノイタダケナイデス」
 
 貴羅さんが付けているのと同じなら、かなり高いんじゃねえ?
 
「何で棒読み? 返品不可だ。響也をそのうち喰べんだから。それに、安全確保にそれが必要」
 
 どういうことだよ?
 
「俺と同じ石付けた奴を襲ったら、朝陽拝めないって、脅してあるんだよ」
 
 思考が止まった。この人のは脅しであって、脅しじゃねぇ! 本気に決まってる。つまり、無事でいたいなら、これをつけてた方が安全ってことかよ! まあ、普通にしてたら仲良くなることがない人種ではあるよな。ユキの例もあるから、素直に付けとこ。そうしよう。
 
「それに、虫除けになる」
「虫除けって何だよ?」
「あの学校。俺がいた時代から、腐った奴らがいたからな」
 
 まてよ。貴羅さんって、あの学校の卒業生かよ!
 
「響也は格好の餌食になる」
 
 いや、その認識、マジでおかしいから。
 
「無自覚は危険だ。そう言う目で見られてるに決まってるからな」
 
 忍もおかしなこと吐かしてたけど、あんたもか。マジ勘弁。
 
「誰かの手が触れるのは許せない」
 
 俺、もしかして、猛獣の縄張りに入り込んだ草食動物か? 今更、逃げられねぇけど。
 
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