置き去りの恋

善奈美

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33 別荘(律子視点)

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 私はここの旅館の管理を任されている、草壁 律子と申します。夫は草壁 風月。旅館と申しましても、元々は草壁一族が使う別荘でございます。使わぬままだと建物が傷んでしまうため、普段は、旅館としてお忍びで来られる身分のある方をお招きしております。
 
 しかし、草壁の者が使うときはお断りすることをあらかじめ了承して頂ける方のみですので、それほど、人が来るというわけではございません。それに、大々的に泊まり客を募っているわけでもございません。
 
 先日、夫から秋の連休に草壁の親族が此処を使うと連絡が入りました。四組の方々であり、少々、変わっているとのこと。詮索等は一切するなとのお言葉です。
 
 此処は元々、別荘ですから、母屋と独立している五軒の建物で構成され、其々に内湯と露天風呂が備えられております。勿論、天然温泉掛け流しでございます。
 
 一応、お泊りになられる方々のお名前を訊いたのですが、返ってきた答えが、魔王御一行様。魔王とは、どう言ったことでしょう? 草壁家の方々は面白いことが大好きですから、おそらく冗談であるとは思うのです。ですから、改めて問いましたところ、泊りに来る兄弟の長兄が弟に魔王と呼ばれているとか。だからだと言われました。
 
 それではおもてなしをする私達に問題が発生するというと、秋保のはぐれ者兄弟とその恋人と家族、との答え。最初からそう言ってくださればいいものを、何故、遠回しに言うのか。我が夫ながら分からないところが多々あります。
 
 従業員とともに指定の時間に建物の入り口で一列に並んで立っていると、一台の車が滑り込んできました。それはよく見る草壁家の者が使う大型車。最初に降りてきたのは夫はでした。
 
「お疲れ様です」
「今日から泊まる魔王御一行様だ」
 
 旦那様。本人達の目の前で言う言葉ではございません。車から降りてきたのは見目麗しい一団。そして、見知った顔が一人。
 
「律子伯母さんこんにちわ」
「雪ちゃん?」
「はい。お世話になります」
 
 確か、秋保のはぐれ者と恋人とその家族と聞いております。見た感じ、七人が男性。一人が女性。私にそういった嗜好はございませんが、大叔母様お二人がそのような嗜好の持ち主です。何故、詮索してはならないのか、しっかりと理解しました。
 
「ようこそ。都会の喧騒を忘れて、心安らぐ時間をお楽しみください」
「律子」
「何でございましょうか?」
「私はこのまま帰るが、明後日、迎えに来る」
「分かりました」
 
 旦那様が何を言いたいのか分かっております。普段は人に任せることですが、親族が使うときには私が全ての采配をさせていただいております。つまり、明後日、一緒に帰るということです。おもてなしをさせていただく皆様とともに。
 
「其々のお部屋にご案内させていただきます。お食事ですが、どういたしますか? お部屋に運ぶことも可能ですが、母屋でご一緒にとることもできます」
「伯母さん、僕はみんなと一緒がいいの」
 
  雪ちゃんの言葉に皆様、頷かれていますね。では、そのように手配させていただきます。従業員一同、訪れたお客様を精一杯、おもてなしさせていただきます。

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