置き去りの恋

善奈美

文字の大きさ
108 / 114
SS

49 除夜の鐘が鳴る頃に-翌朝の出来事-(貴羅視点)

しおりを挟む
 年またぎて響也を貪って、程よい疲れの中で響也を腕に抱き眠りに就いていたんだけど、チャイムが鳴った。
 
 こんな新年の朝に、誰が来たっていうの? いくら尚広でも新年明けてすぐは来ないよね。欠伸を噛み殺して、玄関扉を開く。目の前に飛び込んできたのはあり得ない人物三人。
 
 ちょっと、如何してこの時間にいるの?!
 
「あけましておめでとう」
「あけましておめでとう」
 
 俺の曾婆さん二人と聖月さん。まさか、挨拶しにわざわざ来たわけ?!
 
「意外という顔をしてるな」
「当たり前でしょう」
「私達、曾孫にお年玉を渡しにきたのよ。ねぇ、櫻子さん」
「そうよ。ねぇ、薫子さん」
 
 ……確かに戸籍上と血筋的には曾孫だけどね。俺は今年三十歳になるんだけど。一応、生活能力はあるし、お金にも困ってないんだけど。暁とか、これから学校に通う紫綺になら分かるけど、如何して俺もなの?!
 
「大叔母様二人がどうしてもって言って聞かないんだ。だからだよ」
 
 まあ、無下には出来ないけどね。それにしたって、まだ、朝だよ。眠りに就いたのついさっきなんだけどね。
 
「櫻子さんと私から」
 
 そう言って渡されたのは一枚の封筒。宛先を書く場所に達筆な毛質でお年玉の文字。受け取ったはいいけど、この薄さは何? 普通はぽち袋を使うんじゃないの?
 
「お年玉なんて何時ぶりかしら。嬉しくて二人で奮発しちゃったわ。ねぇ、薫子さん」
「そうよね、櫻子さん」
 
 今日の二人はお揃いの和装。訪問着だよね。お正月だからなの? 聖月さんも和装だしね。
 
「それと、これを持って行くように父に頼まれた」
 
 聖月さんが二つ持っている風呂敷で包まれた物を俺に渡してきた。かなり大きい。お重みたいな感じがする。
 
「紫綺は?」
「出掛けてないと思うけどね。そんな話は聞いてないし」
「そうか。大叔母様達、紫綺のところに行きますよ」
「そうね。その後は暁ちゃんのところにも行かないと。ね、櫻子さん」
「そうね。薫子さん」
 
 三人が躊躇いなくエレベーターで上がっていくのを見送った。渡された物を持ってとりあえず、寝室に戻る。
 
「誰か来たのか?」
「起きてたの?」
「うん。目が覚めた」
 
 聖月さんが渡してきた物はやっぱり重箱で、中身は御節。これ、高いよね。
 
「わあ! 高級御節だ!」
「御節好きなの?」
「え? 好きでも嫌いでもねぇよ。こんな高級な御節見たことねぇから」
 
 そう言いながら、モゾモゾ布団の中に顔を隠す。如何して?
 
「驚きすぎて、恥ずかしいのぶっ飛んだ……」
 
 そういうこと。もう一つ。曾婆さん二人に渡された封筒。開封して中の紙切れを出す。それを見て絶句。俺も金銭感覚が破壊的だって言われるけどね。これ、普通に車が買える金額が書いてある。お年玉に小切手って有りなわけ?!
 
「貴羅さん?」
「響也。俺ね、初めてお年玉を貰ったんだけど、お年玉って、小切手でくれるものなの?」
「何言ってんだよ?」
 
 布団から顔を出して困惑顔。額面が書かれた小切手を響也に見せる。
 
「何だよ、この金額?!」
 
 驚いて起き上がろうとして撃沈したね。当たり前なんだけど。
 
「……った」
「無理しないの」
「お年玉って、普通、現金! それに桁がありえねぇだろう?!」
 
 車って言ったけど、俺の愛車なら三台買えるよね。しかも、グレードが高いやつ。書かれてある金額が一千万。子供に渡す金額じゃないことくらい、俺でも分かるよ。奮発って、確かに言葉通り奮発だわ。
 
「金持ちって、分かんねぇ」
「そう?」
「そうだよ。貴羅さんがくれるバイト代も分かんねぇ金額だしさ」
「え? 当然の金額設定でしょう?」
「違うって。親に見せたら吃驚だったからさ。即貯金だよ」
 
 そんなにおかしい?
 
「あんなバイト代払うって、バイト募ったら殺到だよ」
「バイトを雇う気ないけど。使えないのはいただけないしね」
「それは分かってる」
 
 貰っちゃったしね。これは有難く貰っておくけど。でも、何かしらしないと問題だよね。二人にも相談して考えないと。
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

処理中です...