婚約破棄されましたが、無駄に戦闘能力があるせいで王太子の婚約者になりました。そのせいで厄介事が更に羽根を生やしてやって来ました。

善奈美

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三章 そんな真実は知りたくない!

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 その話を聞いた時、リラは気が遠くなりそうだった。
 
 
 血糊を洗い流し、完璧な令嬢に整えられたリラは、あまりの窮屈さに溜め息が漏れた。普段は飾り気のないワンピースか、シャツとズボン、ブーツ姿でいる事が多い。そんなリラだが、やはり貴族令嬢である。着飾ればそれなり以上の見目になるのだ。しかも、王城の王妃付きの侍女達が磨き上げたのである。元々綺麗であった黒髪は更に艶を増し、白い肌も艶めいている。薄化粧を施され、更に魅力を引き出していた。淡い青紫色のドレスが何を意味しているのか分からないリラではない。つまり、王太子の瞳の色と同じ色を身に纏っているのだ。しかし、短い髪は如何する事も出来ず鬘である。そして、最後とばかりに差し出された物にリラは動きを止めた。
 
「えっと……、これは?」
「はい、王太子妃様の正装にはこれが必須でございます」
 
 え? 必須なの? っと、リラは我が目を疑った。綺麗に象嵌された鞘。持ち手部分も美しいが、装飾品なのかと言われたらそれは違う。
 
「これは魔法具ですよね?」
 
 侍女長は少し目を見開き、直ぐに目を細めた。細身の美しい剣だが、それだけではない。リラが触れれば、剣に施された術式が感じ取れる。剣がリラの魔力を検分している様に感じるのだ。
 
「合格でございます。それは王家に伝わる守護の剣でございます」
「ちょっ、そんな物、持たせないで!」
「いえいえ、陛下は既にお決めになられたご様子。この剣をお嬢様に渡す様にご命令されております」
 
 リラは気が遠くなった。こんな物、手にしてしまったら後戻りできないではないか。しかも、この剣はただの剣ではない。攻撃する為だけの道具ではない筈である。
 
 凄く嫌な感じがする、とリラは内心穏やかではない。王家に伝わっていると言う事は、あの花に関係あるのではないだろうか。王太子が手に握り締めていたあの種。それに関係ある筈である。
 
「一つ聞いてもいい?」
「何でございましょう?」
「この剣、前の持ち主は第一王妃様で有らせられましたか?」
 
 侍女長は嬉しそうに微笑んだ。リラは思う。詰んだと。完全に詰んでしまったと。この剣はリラを認識してしまったのだ。何故なら、剣から歓喜の感情が読み取れる。種とこの剣は確実に連動しているのだ。
 
「理不尽!」
 
 令嬢らしからぬ大声でリラは叫んだ。否、叫ばずにはいられなかった。
 
「大変、お元気でよう御座います」
 
 侍女長はいい笑顔をリラに向けた。否、普通なら眉間に皺を寄せる所業である。そして、リラは思う。真面目に王家について学ぶべきであったと。これは完全にリラの不覚である。ここまで来たら後戻りは出来ないのだ。
 
 静かに扉がノックされ、微かに開いた扉から声が漏れ出る。どうやら、リラの準備が整ったかの確認である様だ。そして、入ってきた人物は二人。燃える様な癖のある赤い髪に新緑を写したかのような瞳。艶めく白い肌。何よりその服装に驚く。白に金糸をふんだんに使った騎士服に身を通し、腰には剣を履いでいる。美しい赤髪は縛らず背に流し、妖艶に微笑んでいた。もう一人は茶の髪と瞳、白い肌。白に銀糸で刺繍を施した豪華な騎士服に身を通している。腰には同様に剣が存在している。茶の髪を一つの三つ編みにし、背に流している。リラは完全に固まった。目の前にいるのはこの国の第一王妃と第二王妃。巷では大変仲が悪いと言われているがどうも違うようだ。
 
「へえ。こんなに可愛い子が、フェルナンドより強いのね」
「リストル公爵もボンクラの婚約者にしたのにお気の毒」
 
 リラはどうも、巷に流れている噂話が間違えているとはっきり理解した。おそらく父親であるリストル公爵は知っていた筈である。
 
「セラはその気になって育てるとは言ってたけど、感じる魔力は精度が高そうだし。何より、やっぱり可愛いわ」
「お嬢様。本当にボンクラに渡さなくてよかったですね」
 
 第二王妃が第一王妃をお嬢様呼びした、とリラは更に固まった。しかも、自分の息子をボンクラ呼びである。否待て、と、リラは少ない知識を捻り出す。第一王妃、名前をティスエラ・フィル・フレイア=グランティール。フレイア侯爵家の令嬢だ。その燃えるような髪が印象的な彼女は、とてつもなく好戦的で、普通の騎士では太刀打ち出来ないと言われている。
 
 第二王妃、名前はキャスリン・フィル・グランティール。ティスエラのお付きの侍女であったが、国王の手付となり、フレイア侯爵が後ろ盾になった。そして、それがきっかけで、二人は不仲になったと言われていた。
 
 しかし目の前の二人はどうだ。どう斜め上に見ても仲が良いように見える。不仲なら、こんなに和気藹々と話したりしないだろう。
 
「ふふ。混乱しているね」
「それはそうでしょう。私達、不仲ですから。ふふ」
 
 違う。これは完全に策略だ。わざと不仲説を流しているのだ。しかし、何故?
 
「ふふ。お馬鹿さんではないのね。不勉強であるとは聞いていたけど」
「まあ、セラ様はそこのところは頓着しなさそうです。命第一だったのではないでしょうか」
 
 リラの母親は確かに命第一にリラをスパルタ的に鍛え上げた。そう、令嬢教育より、身を守る術が中心であったのだ。それではいけないと、リストル公爵は貴族令嬢の教育をスパルタ的に叩き込んだ。リラはある意味、見た目的には完璧な令嬢であり、完璧な騎士に育ったのだ。そのせいか、国に関する知識と王家に関する知識が丸っと抜け落ちていたりするのである。
 
 リラはこの二人を前に無力感を感じた。今まで訓練してきた騎士達とは格が違う。一人なら何とかなるだろうが、二人など相手に出来ない。言うなれば、母親であるセラを二人並べた感じの感覚なのである。ちょっと待ってと、リラは思う。この国は女が強くなくては王妃すら務まらないのか、と。
 
「ふふ。本当なら陛下はセラを娶りたかったのでしょうけど、予言の魔女たる彼女は自分は花を付ける事は出来ないとはっきり言ったわ」
「そして、お嬢様を贄にされましたよね」
「本当にね。私はお転婆過ぎて、貴方しか付いてこられなかったものね」
 
 そう言うなり、二人は笑い出す。今の情報、結構やばいのではないだろうかと、リラは体から冷や汗が流れる感覚に苛まれた。つまり、セラは知っていたのだ。リラが花を咲かせるだと。母親がリストル公爵家に嫁いだのも、リラが生まれる血筋であったからだ。確かにリストル公爵夫妻はとても仲が良い。しかし、それとこれとは話が別である。そして、父親であるリストル公爵は妻のリストル公爵夫人に逆らい、リラを第三王子の婚約者にしたのだ。勿論、嫌々であっただろうが、王太子妃よりマシだと。しかし、それを台無しにしたのがまさかの本人である。今更だが申し訳なさ過ぎてリラはひっそりとへこんだ。
 
「でも、リストル公爵はセラを好いていたし、陛下が横から入っては来られなかったでしょうね。コーラル辺境伯家は武家の一族。セラもそこらの騎士なんて目じゃない強さだったし。私がコテンパンにやられた時は悔しさより、清々しさが優ったわ」
 
 リラは固まる。母親が未来の王妃を容赦なくやってしまったのである。つまり、王家は元々知っていたのだ。リラが王太子妃となる娘だと。それであるのに、父親であるリストル公爵は足掻いたのだ。
 
「混乱してるわね。貴方がフェルナンドの花嫁である事は覆らないのよ。何故なら、種は貴方が生まれた時から選んでいるから」
 
 リラは意味が分からなかった。種が花嫁を選んでいる。その意味するところは?
 
「陛下の種は言い方は悪いけど、花嫁を選別しきれなかったのよ。そのせいで多くの令嬢が亡くなってしまったけれど」
 
 リラは種の強さが花嫁選びを難航にさせるなど知らなかった。今代の国王が多くの婚約者を失ったのは、種の力が弱かったから、らしい。つまり、フェルナンドの種は強い力を持っている。父親がいくら足掻こうと、リラが妃となる未来は変えられなかったのだ。そして、母親はそれをしっかり認識していた事から、スパルタ的に鍛え上げたのである。
 
「それで、どのような御用でしょうか……」
 
 リラは自分の認識の甘さに意気消沈だ。それでも、二人の王妃が来たのだ。何か理由がある筈である。
 
「それはね……」
 
 第一王妃がそう口を開いてすぐ、剣に手を掛け素早く抜くと何かを叩き落とした。
 
「こう言う物から一時的に貴女を守るためよ」
 
 リラはガックリと肩を落とした。叩き落とされたのは矢だ。しかもご丁寧に毒が塗られており、更に変な魔力も感じる。つまり、この矢はかなり遠くから放たれ、目標まで飛んで行く仕組みのもののようだ。こんなドレスなど着ていなければ簡単に対応出来る。しかし、今身につけているのは、完全なる令嬢スタイルである。
 
「流石にドレスでの戦闘までは教えていませんね」
「セラにそれは無理でしょう。男勝りでドレスなど、ごくごく限られた時しか身につけませんからね。結婚式すら騎士服であげた強者です」
 
 母よ、とリラは更なる情報に頭が痛くなった。お転婆と言われていたが、セラに比べれば可愛い物では無いか。
 
「ところで、お二人はこうなる事が分かっているようにお見受けしますが?」
 
 二人の王妃の顔が怖い。綺麗な顔をしているから尚更怖い。
 
「今回動いている人間を知っているからよ。本当に、王がどれ程不便な存在か、分かっていなくて困ってしまうわ」
「王太子は結婚して、新婚旅行の後は国から出られないのよ。きちんと認識していれば、国王になんてなりたいとは思わないものよ」
 
 それって、何があっても国の、しかも中心から出られないと言う事では……。フェルナンドが言っていた枷とはこの事だったのだ。
 
「王となる子が手に種を握り締めて生まれてくる。その後は、ひたすら自身を守るための鍛錬と、己を犠牲にする事を叩き込まれる。不自然な程にね。そして、相手となる娘は自身を守る手段を持っていなくては務まらない。この国にとって雪の花は気候を安定させる為に絶対に必要なモノ。それを理解していない者は多い。その筆頭がまさかの第二王子とは情け無い」
 
 リラは更なる衝撃の事実に倒れそうになる。つまり、王太子を亡き者にし、リラの命すら狙ったのは第二王子という事になる。まさかの身内である。
 
「この国は基本、他国からの侵攻は思ったよりも簡単にいなせるのよ。辺境を守っているのがあのコーラル伯よ。それに雪の花も強い守りの力を持っているわ。でも、血族は違う。こうなったのは何代か前、王太子が流行病であっけなく亡くなったのよ。その結果、種は次代を選出した。それも、王家の血を引く者全てから選んだの」
 
 リラはその言い方に嫌な感じを受けた。王家の血を引く者など、末端も加えれば、其れこそ、沢山居るではないか。王子だけが生まれるわけではなく。ましてや、王太子となる王子一人が生まれるわけでは無い。リストル公爵家も元を正せば王弟が起こした貴族家だ。しかし、リラの父も兄も王になどなりたく無いと鼻で笑う。つまり、王がどれ程不便な存在か、しっかり理解している証拠である。
 
「選ばれたのは末端の、しかも、まだ、年端も行かない少年だったのよ。よくよく調べれば、その子は確かに末端だけど、両親が王家の血を引いていたわけ。血の濃さで言えば、現王家の者と遜色ない血筋だったのよ」
 
 雪の花はきちんと血を選別していた。年端の行かない子を選んだのは、教育に必要な年数を考えてか。それとも、事実を受け入れる時間を与えたからなのか。
 
「そうして、こう考えた者がいた。つまり、種を手にし生まれた王太子が亡き者になれば、成り代われる可能性があると。愚かでしょう。だから、私達は考えたのよ」
 
 第一王妃がいい笑顔をリラに向けた。非常に嫌な感じを受ける。そう、リラに何かがあるのではなく、王家の中で何かが計画され、実行された嫌な感じなのだ。
 
「私の子は見事にボンクラに育ったでしょう。私達の教育の賜物よ」
 
 第二王妃はいい顔で言い切った。そう、第三王子のボンクラは両王妃の教育の賜物。
 
「まさか、拐かされて、人妻に懸想するとは思ってなかったわ。陛下も知っているから、謹慎くらいで済むけれど」
「あの子は本当に入れ知恵だけは凄いわ。外面は良いから、騙されてる貴族も多いわね」
 
 あの子とは、第二王子の事だろうか。リラは遠い目になる。敢えてボンクラに育てられた第三王子。だが、第二王子が手を出すと何故言い切れるのか。
 
「質問なのですが」
「何かしら?」
「何故、第二王子が手を出すと言い切れるんです?」
 
 二人の王妃は顔を見合わせ、クスクスと笑い出す。
 
「魔女の言葉は絶対よ。それに、第二王子もボンクラになるように育てたのよ。まあ、育たなかったけど」
 
 つまり、第二王子は思い通りになるような人物ではない。リラは考える。こうなってしまっては如何しょうもない。腹を括るしかないのだ。
 
「母は何処まで詠んだの?」
「結婚式までね」
 
 結婚式とは王太子とリラの結婚式という事か。つまり、これから、何かが起こり、リラは不本意ながら王太子妃となる。
 
「私もドレスではなく、騎士服が良いのですが」
「そう言うとは思っていたけど、今日は我慢して。婚約内定を内外に発表するのよ。その後は、貴方専用の騎士服が与えられるわ」
「王妃、王太子妃は王と王太子の最も近くに居る近衛騎士なのよ。だから、余程でなければドレスは着ないわ」
 
 リラは目を見開く。
 
「婚礼も妃となる者が身につけるのは華やかな騎士服よ。まあ、上着が裾を引く程長いのが欠点だけどね。式の時が一番危険だと判断されている証拠ね。言い方は悪いけど、狙い放題だわ。でも、婚礼を上げ、妃が懐妊し、花が開花すると命の危機が無くなる。花が開花するのは次代が生まれる兆候だから」
 
 次代、つまり、種を手に握り締めた王子が産まれれば、王太子は命を狙われなくなる。言い換えるなら、生まれだばかりの次期王太子が命を狙われる事になる。それでも、母の胎内にいるうちは狙われない。何故なら、種を手に産まれてもらわなくてはならないからだ。それが連綿と続く王家の悲劇なのだろう。だが、雪の花がなければ国は成り立っていかない。
 
「難儀な国だとは思うわ。雪の花が無ければ、この土地で生きていくのは不可能よ。あの花が発する冷気がこの地を住みやすい土地にしている。しかも、その種が生み出されるのは王家の血筋のみ。厄介以外の何者でもないわね」
「今代は初代雪の花の力が無くては持たなかったかもしれませんわ」
 
 新たな言葉にリラは頭に疑問符が浮かんだ。初代雪の花とは何だ。
 
「あらあら、それも知らないのね」
 
 リラが「第二王妃様。私は王家にも国にも興味はございません」、そう心で思っていても、誰にも聞こえない。聞こえない筈なのだ。
 
「初代雪の花だけ、王となる者と繋がっていないのよ。まあ、見る事が叶うのは国王と王太子を産み参らせた王妃だけなので、私は見た事はありませんが」
「あの花だけは如何にもならないわね。何せ、あの花の主人はあくまで初代様。初代様が奥方と共に見付けたのがあの花なのよ。でも、初代の雪の花は初代様が種を握り締めてお生まれになったわけではないから、枯れないのよね」
 
 新事実発覚にリラは倒れそうになった。いや、ここで倒れるような令嬢では王太子妃にはなれないのだろうが。
 
「でも、攻撃があれから止んだわね」
「そんなに簡単に諦めるかしら」
 
 リラは自身が危険に晒されたままではいない。攻撃された瞬間に結界魔法でこの部屋を覆ったのである。攻撃しようものなら、逆にその攻撃が返っている筈である。
 
「あ……、今頃、自分の攻撃で絶命しているか、悶絶しているかと……」

 王妃二人は目を見開いた。リラの能力が高いのは母親のセラから聞いて知ってはいた。まさか、無詠唱で結界を張れるとは思っていなかったのだ。
 
「あらあら、有能だわ」
「流石、セラ様ですね」
「セラと言うより、この子の能力が規格外なのだわ。まあまあ、フェルナンドは素晴らしい妃を手に入れたわね」
「そうですね。ボンクラも少しは役に立ちましたね。他の者に掻っ攫われずにすみましたわ」
 
 そう言い放った二人の王妃は笑い出した。いや、リラ的には笑いたくない。どうせなら、高みの見物で笑い飛ばしたい。しかし、今回に限っては完全に我が身である。
 
「婚約後は王宮で生活してもらうわ。勿論、フェルナンドと共に行動してもらうわよ」
 
 リラは眉間に皺を寄せる。常時一緒では訓練が出来ないではないか。朝一番で体を動かすのを日課にしているリラには拷問に近い。
 
「何を言いたいのか分かっています。王太子殿下は毎朝、鍛錬を欠かしません。お二人で励まれては如何です。その辺の騎士を相手にするより手応えがありましてよ」
 
 第二王妃がそんな事を口にする。リラは驚いたように目を見開いた。
 
「私達も訓練をしているわ。何だったら手合わせ願いたいわね。貴方はセラより華奢だから、どんな戦い方をするのか楽しみね。何せ、私達はフェルナンドと貴女の戦いを見損ねたのよ!」
 
 第一王妃の憤った声に、流石のリラも少し引いた。思わず脳内で呟いた言葉は、脳筋、である。自分を棚に上げて何と言う事を思ったのか。しかし、リラは間違えていない。第一王妃はリラにも勝る脳筋。日がな一日剣を振り回している変人である。それでありながら、所作は美しいのである。女性の其れとはかなり違う部分もあるが。正に武人である。
 
「お嬢様、時間は沢山あります。焦らずとも、王太子殿下とリストル公爵令嬢の手合わせを見ることは出来ます」
「何も知らない状態の二人の戦いを見たかったのよっ」
「……それは諦めて下さい。まさか、あの場ですぐ手合わせするなど、想像出来ましたか?」
「出来なかったわっ。出来ていたら、こっそり隠れて見ていたわよっ」
「仮にも王妃なのです。それだけはおやめ下さい」
 
 不仲説を如何やって流したんだ、とリラは思ってしまう。どう見ても漫才並みの阿吽の呼吸の会話である。これは王のお手付きになったのではなく、第一王妃が王を拐かしたのではないだろうか。一番近くにいる味方を手に入れるために。お付きの侍女ではいつかは身を固め離れてしまうだろう。流石は侯爵令嬢である。悪鬼が跋扈する社交界で鉄壁の微笑みを浮かべ、更に男顔負けの武術。この国の男は大丈夫なのかと、リラは改めて思ったのである。
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