異世界魔王様は日本円を稼ぎたい! アニメのグッズ代のため、現代日本にダンジョンを作ります

スノウマン(ユッキー)

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魔王、消費税を知る

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「クハハハ、我としたことが痛恨のミスだ。だが有意義な時間であったぞ」
「いや、笑ってる場合か! 今状況はどうなってる?」

 朝になってようやく本来の目的を思い出した二人、特に勇者は慌てて魔王にダンジョンへと転移させた。無駄に八時からダンジョンに入場可能にしていたため、既に一般人が入場して一時間が経っていた。

「うむ、ダンジョンにやってきた連中が、次々とレッドドラゴンのブレスで焼き払われてるわ」
「状況最悪じゃないか!」
「そうだな、これではポーションが売れまい」
「人命より金か!?」

 こいつ人の心とかないんか? と思う勇者だが、すぐにそいやこいつ魔王だったなと思い出す。普段オタク談義しかしてないから忘れがちなのだ。

「まぁ実際我が塵芥に生き死に興味が無いのはそうだが、この日本のダンジョンで人は死なんぞ?」
「え?」
「セーフティー機能を設置しておいたからな。致命的をダメージを無効化してダンジョンの入り口の隣の部屋に転移するようにしておる。我も日本のダンジョンはえんため? のつもりで作っておるからな」
「それがなんで初手レッドドラゴンになるんだよ……」
「日本には絶叫アトラクションなるものがあるのだろう? 要はそれだ」

 絶叫アトラクションは命の危機はない、と言いかけてセーフティーがあるなら確かに絶叫アトラクションか? と思い直す勇者。絶対に違う。勇者は気を取り直して魔王自作(なお魔法)パソコンでSNSをチェックする。ネット回線? 魔法である。合法かそれ? なおスマホは未所持だ。

「SNSで思いっきり炎上してるじゃねぇか! 難易度バグってる、ドラゴンとかあたおかとか。トレンド一位#初手ドラゴンだぞ」
「よく分からんが知名度が上がったという事だろう? 良い事ではないか?」
「悪名なんだよ馬鹿!」
「我悪名しか縁が無いが?」
「お前魔王だもんな……」

 俺がしっかりしないと! と改めて誓う勇者。それは本当にそう。なおこの勇者聖剣を授かった際に、精霊王に「必ず魔王を倒します」と誓っている。倒すべき相手と呑気にアニメ見るのは誓いどないなってんねん。 

「今からダンジョンを弄れないのか!?」
「出来るか出来ないかで言えばできるが、ダンジョンをいじる間この行列をどうするのだ? 馬鹿みたいに長い行列になっておるぞ?」
「うぐっ……」

 魔王が空中に映してくれた映像により、行列の長さがはっきりと分かる。ネズミの国と比較できない程並んでいる。それもそのはず。今までファンタジーなんて縁の無かった世界にガチファンタジーのダンジョンが出来たのである。興味本位で立ち寄るものは勿論、ずっとファンタジーに焦がれていた者達が有給を使ってまで押し寄せてきてるのだ。魔王が前日撒いたビラだが当然普通のビラではなく、日本中に届く仕様になっていた。そしてダンジョンが出来た事は総理が緊急で開いた会見で認めている。詳細は現在調査中と言葉を濁していたが。だから全国各地から人が集まっているのだ。

「これ今日の営業は終了しますと言ったら暴動起きるかな?」
「まず起きるだろうな。人間とは愚か故にな」
「いや、俺らがやらかしたからの現状だぞ?」
「クハハハ、それは確かに!」
「う~ん、とりあえず明日から改善することを告知して、今日はアトラクションと思ってもらうしかないか?」
「アニメで学んでおるぞ? 掴みが重要なのであろう?」
「まぁ、ある意味掴みは最高だろうな……」

 何せダンジョンに入った瞬間、ドラゴンが『こんにちは、それではさようなら』とブレスを吐いて焼き払われるのだから。トラウマになりかねない体験だが、印象としては非常に強く残る。

「勇者! 勇者! 凄いぞ! この人間ブレスを避けてレッドドラゴンを投げ飛ばしておる!」
「はぁ? そんな人間やめてる奴が日本にいるわけ――ぶふっ!? 霊長類最強の女子レスラーじゃねぇか! なんでこんなとこにいるんだよ!」
「ふむ、流石に残りの四体に囲まれての一斉ブレスでリタイアになったが、ナイスファイトだった」

 当然投げ飛ばされたレッドドラゴンはダメージを受けてないが、投げ飛ばせるだけで凄い。流石霊長類最強と言われるだけはある。霊長類とは?

「うむ、うむ。一発目のブレスを避けておるのは他にも何人か居るようだな。ワンパターンゆえ、対処も安易だったか。残念ながら素材採取まではいかなかったようだが。オリハルコン・ミスリル・ヒヒイロカネと鉱物を設置しているのだがな」
「向こうの世界でも超貴重なやつじゃねぇか! そんなファンタジー素材を一階に配置するな馬鹿! というか配置しててもドラゴン五体から逃げながら採掘できる訳ないだろ!」
「お主ならできるだろ?」
「俺腐っても勇者なんだよ! 一般人を俺基準で見るんじゃねぇ!」
「そうか、人間とは我の想定よりか弱いのだな」

 魔王は人間に興味が無い上、実力がない者は側近が近づけさせないので、知っているのは歴代勇者の実力くらいである。あまりに人類の上澄み過ぎる。そんな人間卒業した奴らと一般人を比較するなという話である。

「ところで勇者。悪いニュースがある、今のところ我がダンジョンでは怪我を負ったものはいない」
「良いニュースじゃねぇか。あ、ポーションが売れないって話か」
「逆だたわけ。ポーションが売り切れているのだ……在庫1000個は用意しておいたのだが……」
「え? なんで……」
「分からん、こわっ」
「因みに価格は?」
「1万円だ」
「う~ん、俺もそういう相場よく分からねぇけど妥当なんじゃないか?」

 瞬く間に傷を塞ぐポーションが1万円で妥当な訳が無い。破格すぎる。だがぽんこつ二人はそれを理解していない。側近がいたら指摘したかもしれないが、彼はまだ転移酔いで寝込んでいる。
 ダンジョンに来た一般人はお土産感覚で一個は最低でも買っていくのだ。そりゃすぐに在庫がなくなる。ちなみに販売機は自販機形式だ。一万円入れたらガチャコンと下から瓶に入ったポーションが出てくる。ダンジョンでも使えるように瓶も強化魔法が掛かっており、簡単には割れないようになっているので安心だ。その為瓶だけでもかなりの価値が出来てしまっているのを二人は気づいていない。

「勇者よポーションの売り上げ1000万とやらになっているのだが、これでグッズ買えるか?」
「逆に買えないグッズがあったらこえぇよ。何でも買えるだろ」
「本当か!? ならば我の作戦大成功では無いか! フハーハハ!」
「ちなみになんだが……お前消費税どうしたんだ?」
「消費税? なんだそれは?」
「えっと……多分100万くらいは国に納めないといけないんじゃないか?」
「一割……だと……!? 何故!? ポーションは我の物だぞ!?」
「そういうルールなんだよ。俺も詳しいこと知らねぇけど」
 
 二十歳で異世界に召喚され、二年間戦い続け、そして一年間アニメを見てだらだらしていただけの勇者に詳しい仕組みは分からない。なんだ最後の一年。

「我魔王ぞ!?」
「別に脱税するならしても良いけど、お前汚れた金でグッズ買うの? 別にお前がそれでいいなら良いけど」
「ふぐぅううう。公式に汚れたお金を献上出来るわけないではないか! 許さん、許さんぞ! 日本政府!」
「いや、財源の為だから。殴りこみに行くなよ? それに900万でもグッズは十分過ぎるほど買えるだろ」
「ふむ、ならばいい」

 あっさりと恨みを忘れた魔王だが、彼にとってグッズさえ買えればそれで良いのである。グッズが買えないのであれば、本気で日本政府を潰していただろうが。消費税無しの新政府が爆誕していた可能性がある。いや、これ日本政府潰れてた方が良かったのでは?

「というかさ、入場可能になって一時間で販売終了って不味く無いか? 悪評版に繋がるぞ?」
「ふむ、そうなのか? だが我は錬金術は門外漢ゆえな……」
「いつもみたいに魔法でぱぱっと作れねぇのか?」

 テレビとかパソコンの時みたいに。

「作れるか作れないかで言えば作れる。が、説明に偽ポーションとつくな」
「何それおもろ。効果は劣化してるのか?」
「いや、同じである」
「それどこが偽なんだ?」
「錬金術で作ってないとそうなる仕組みなのだ。それで良いなら一瞬で量産できるが」
「う~ん、なんか詐欺みたいだなぁ。内容的にはまったく詐欺じゃ無いんだが。この世界の人間からしたら、錬金術で作ったかどうかなんてどうでも良いだろうし」
「うむ。仕方あるまい、側近を殴り起こすか。あやつなら錬金術でぱぱっと作れる」
「やめてやれ!」

 二人はそもそもの話を失念している。この世界の人間に鑑定は出来ないので偽とついてるかどうかなんて分かりようがないという事を。

「とりあえず別に販売機作って、偽ポーションってデカデカと告知して販売しておこうぜ。効果には変わりありませんって。なんかジェネリック医薬品みたいだな」
「よく分からないが販売機を作って、そこに偽初級ポーション五千個入れておいたぞ」
「この一瞬でかよ。相変わらず凄いな。まぁそれだけあれば少なくても今日中は持つだろ」
「クハハハ、これで問題は解決である」
「いや、そもそものダンジョン構造問題が何一つ改善していないが?」

 なお二人は人類を甘く見ていた。善良に見過ぎていたともいえる。開場そうそうに売り切れる物があれば、聡いものは気づく。これは売れると。転売目的で大量購入されて初回よりも早く完売するのだった。転売というものを知らない魔王は転売対策を一切していなかったのだ。なので勇者が気づいた時にはメルカリで5万円で転売されていた。後に全てを知った魔王は転売ヤー撲滅魔王へと進化するが、それはまた別の話である。
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