多分、愛じゃない

ゆきの(リンドウ)

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恋と呼びたいだけだった

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 たしかに、そいつの言う通りだ。しかし、そうでもない。

 苛つく、何に。わからない、いや、全て。

 恐ろしいほどに理解できない自分の感情を込めるように俺は、両手をそいつの広すぎる肩に置く。

「そうじゃなくて、謝るのは一回でいいってことだよ!」

 まさか、その時はこいつとどうこうなるなんて思いもしていなかった。

 なのに今、俺は克巳と付き合っているなんて、人生何が起こるかわからない。

 まさに青天の霹靂である。

 しかし、何故こいつはあれから何年も経った今でもこうして俺の前でペコペコ頭を下げているのだろうか。

「奏、まだ怒ってる、よね?」

 ビクビクと俺の顔色を窺いながら克巳が再度聞いてきた。

「…ああ、怒ってる。なんでか理由、わかるよな?」

 そう言えばこいつが多分とか言いながら謝ってくるのは目に見えていた、なのにそう聞いている俺はやはり性格が捻じ曲がっているのか。

 そもそも、事の発端は克巳の自分勝手な、あいつからすれば自分勝手ではない行動のせいである。

「じゃあ聞くけど、なんで女といたんだよ、克巳」

「女って…東雲先生だよね。それは、前にも言ったけど、生徒とのコミュニケーションについて相談されてて」

「だから!なんで休日に克巳が東雲先生と会う必要があんの?しかも俺に内緒で!」

 東雲先生とは俺らが勤務する学校の教師。産前産後休暇の井上先生の代打で数週間前から勤務しているふわふわ系の女性だ。

 服装も話し方も雰囲気も全てがふわふわとしている東雲先生が、生徒にも同僚である教師たちにもモテていることは俺も知っていた。

 目はぱちっ、鼻や口は小さくまるでフランス人形のように白い肌、極め付けに手入れの行き届いた柔らかそうな髪。

 彼女を見るみんなが見惚れるのは当然だ、それは決して否めない。

 愛されるために産まれてきたと言っても過言ではない彼女を愛さない人など、きっと捻くれた俺くらいなのだろう。

 もし、もしも克巳が彼女のことを好きだと言う日が来たのなら俺は潔く身を引かなければならない。

 しかし、物事の本質はそこではないのもまた事実だ。
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