多分、愛じゃない

ゆきの(リンドウ)

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恋と呼びたいだけだった

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 めちゃくちゃな思考回路を抱えながらの授業に部活、その日の夜はとても疲れていた。

 中学生、しかも三年生の担任となれば自ずと責任がのしかかる。今は五月、あと10ヶ月もすれば彼らはここを巣立っていく。

 テストに進路、夢がある生徒もいればそうではない生徒もいる中、教師としての役割は非常に重要なのだ。

 特に今日はとある生徒の相談に時間がかかり、尚更脳は糖分不足状態だった。

 しかも、その相談とやらが勉強でも進路でも部活でもなく、恋愛相談ときたものだ。

 正直なところ、相談する相手を間違えていると助言したかった。なんせ現実的に彼氏とは上手くいっていない、そんな奴がアドバイスなどできるはずがないだろう。

 けれど、その生徒の眼差しに断りを申し入れるなどはできなかった。好きだけど好きとは言えないそんな気持ちは痛いほどにわかる。

 やはり、今日はジンライムを一杯だけでも浴びるしかないか。

 疲れ果てた身体を引き摺り、今日も良樹の家に帰ろうとしていると、袖を心許無い力で握られた。

 8割の期待で振り返る。瞬間、俺の心拍数が突如として上がり始める。

 デカい身体を精一杯に丸めた克巳が、そこにいたのだ!

「あ、あの、奏。昨日はどこに泊まったの?」

 控えめにけれども俺の目を見て言う克巳に、俺は思わずこう思った。

 なんだろう、このデカくて可愛い生き物は。ああ、もうとりあえず一回は抱きついていいだろうか、と。

 出会った頃は長かった髪も今やばっさりと切られ、顕になった目は茶色く丸く、眉は太くて凛々しい。

 克巳的には茶に染まった色と垂れた目がコンプレックスであるそうだが、俺はそれこそが克巳のチャームポイントだと思っている。

 八の字に垂れ下がった眉と目で俺を見る克巳に、俺の頑なだった足が一歩前へ出ようとする。

 しかし、そこでマイナス思考が叫び出した。

 家出二日目にして帰るのはなんだか癪に障る!
 しかもまだなんにも解決していない!

 裾を掴む克巳の手にそっと自分の手を重ねて、勢いよく歩き出す。

 時計を見ればまだ18時半だ、克巳の性格からして昨日は碌なメシなんて食べていないはずだし、まずこいつは料理が壊滅的に下手だ。
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