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それは恋だと思っていた
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けれども今、このタイミングで出なければ多分、いやおそらく、ユウリと連絡を取ることは出来ないだろうとも思う。
電信柱に隠れるように身を寄せ、震える指でスライドした。
「も、もしもし?」
「奏!良かった~電話出てくれた!」
ユウリが電話の向こうでほっとする姿が見える。
「ああ~ごめんな?最近、テストに部活にで忙しくなっちゃって全然連絡できてなくて」
「そんなのは気にしなくていいよ!良樹さんの家から帰ったって聞いたから、心配してたんだ。元気かい?」
元気、元気ではある。でも、元気じゃない。
「…おう、元気元気!心配させちゃってごめんな?彼氏ともなんだかんだ丸く収まったし」
泣きそうだった。ユウリは昔から何も考えていないようで、人をよく見ていた。
俺が周りからの揶揄いに怒りを露わにしたあの時もそうだったと、ふいにこの前は思い出せなかったあの言葉が脳裏に蘇る。
そうだ、あの時ユウリは、こう言ったんだ。
「ごめんね?でも、大丈夫。僕が奏を好きだから」
何で忘れていたのだろう。
確かにユウリはそう言って、怒りや無力さ切なさ悔しさから膜を張る瞳から熱すぎる涙を流させてくれたというのに。
人は自分に都合の悪いことは忘れてしまうというが、まさにその通りだ。
ユウリの「元気かい?」には、それくらいの破壊力があった。
気を抜けば帰り道、住宅街の電信柱の隅で人目を顧みずに涙を流してしまうほどー。
「そっか、それなら良かったよ。じゃあ、あんまり連絡しない方がいいかな?」
「え?なんでだよ」
「う~ん、だって日本人はそういうの、気にするんだろう?」
ユウリが珍しく遠慮気味に言う意味を理解するまで、少し時間が必要だった。
…ユウリってこんな遠回しな言い方をする奴だったか?
俺が知るユウリは、いわゆる日本人特有の忖度やオブラートに包む言い方をしない奴だった。
大学在学時は、そのストレートさに周囲の人間が驚き、時には言われたくない事実に距離を取る者もいた。
だから、ユウリが言いたいことがつまり、彼氏と上手くいっているのに元カレの自分と連絡を取り合わない方がいいのかという至極シンプルなことだというのに、理解が遅れてしまったのだ。
電信柱に隠れるように身を寄せ、震える指でスライドした。
「も、もしもし?」
「奏!良かった~電話出てくれた!」
ユウリが電話の向こうでほっとする姿が見える。
「ああ~ごめんな?最近、テストに部活にで忙しくなっちゃって全然連絡できてなくて」
「そんなのは気にしなくていいよ!良樹さんの家から帰ったって聞いたから、心配してたんだ。元気かい?」
元気、元気ではある。でも、元気じゃない。
「…おう、元気元気!心配させちゃってごめんな?彼氏ともなんだかんだ丸く収まったし」
泣きそうだった。ユウリは昔から何も考えていないようで、人をよく見ていた。
俺が周りからの揶揄いに怒りを露わにしたあの時もそうだったと、ふいにこの前は思い出せなかったあの言葉が脳裏に蘇る。
そうだ、あの時ユウリは、こう言ったんだ。
「ごめんね?でも、大丈夫。僕が奏を好きだから」
何で忘れていたのだろう。
確かにユウリはそう言って、怒りや無力さ切なさ悔しさから膜を張る瞳から熱すぎる涙を流させてくれたというのに。
人は自分に都合の悪いことは忘れてしまうというが、まさにその通りだ。
ユウリの「元気かい?」には、それくらいの破壊力があった。
気を抜けば帰り道、住宅街の電信柱の隅で人目を顧みずに涙を流してしまうほどー。
「そっか、それなら良かったよ。じゃあ、あんまり連絡しない方がいいかな?」
「え?なんでだよ」
「う~ん、だって日本人はそういうの、気にするんだろう?」
ユウリが珍しく遠慮気味に言う意味を理解するまで、少し時間が必要だった。
…ユウリってこんな遠回しな言い方をする奴だったか?
俺が知るユウリは、いわゆる日本人特有の忖度やオブラートに包む言い方をしない奴だった。
大学在学時は、そのストレートさに周囲の人間が驚き、時には言われたくない事実に距離を取る者もいた。
だから、ユウリが言いたいことがつまり、彼氏と上手くいっているのに元カレの自分と連絡を取り合わない方がいいのかという至極シンプルなことだというのに、理解が遅れてしまったのだ。
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