62 / 102
忘れていた恋の記憶
(1)
しおりを挟む
見慣れた一軒家のインターホンを恐る恐る押す。
「大丈夫だよ、奏。良樹さんならわかってくれる」
「そう…だといいけど」
隣に立つユウリの言葉が、ヘナヘナになった心を奮い立たせてくれるようだ。
バタバタと外に立っていても走る音が聞こえたと思えば、良樹が勢いよく飛び出してきた。
「バカ奏!来るのが遅いっつーの!」
そう言って抱きしめる良樹の温もりに、またしても泣きそうになっていた。
「で?そこのおバカさんは何か言わないといけないことがありそうだけど?」
「はい…ごもっともでございます…」
馬鹿でかいリビングに通され、ユウリ持参のカモミールティーをご馳走になりながら、俺は身を小さく小さく縮こまらせている。
「まあ、奏だからね?なんでもない時には来るけど、大事な時こそ来ないってのは充分にわかってたけど?でもさ、今回のはさすがにないよね?」
良樹は本気で怒ると、くどくどとしつこく説教をするタイプだ。
故に今も目を吊り上げながら、事の問題点を丁寧に説明しているわけであるのだが、今回ばかりは頭が上がらないと俺はただただ、平伏する。
「まあまあ、良樹さん。奏も大分、反省しているみたいだから、そこら辺にしてあげて?」
「…まあ、ユウリさんがそう言うなら仕方ない」
…全く、イケメンに弱いんだから。
「で?しばらくのホテル暮らしはいかがでしたか?」
前回の出張で頂いたという高級そうなクッキーを片手に、良樹が問いかける。
やはりただでは見逃してくれないか、まあそれが良樹の良いところだ。
だからこそ、申し訳なさが勝つ。
あの日、ユウリが作ってくれた病人用のアクアパッツァを食べ、一晩で熱も下がった俺は、いかにして実は頑固なユウリを店に帰らせるか、真剣に悩んでいた。
というのは、ユウリは懐に入れた人にはとことん過保護っぷりを発揮するからだ。
「奏がここを出るって言うまで帰らないよ?」
「おい、ユウリ…」
「本当はうちに来てって言いたいけど…奏の性格的にそれはまだ無理そうだから、良樹さんに助けてもらおう?」
何故、ユウリが良樹の名前を。思わずまた、妙な嫉妬心が顔を出しそうになるが、同じ過ちは繰り返したくはない。
「大丈夫だよ、奏。良樹さんならわかってくれる」
「そう…だといいけど」
隣に立つユウリの言葉が、ヘナヘナになった心を奮い立たせてくれるようだ。
バタバタと外に立っていても走る音が聞こえたと思えば、良樹が勢いよく飛び出してきた。
「バカ奏!来るのが遅いっつーの!」
そう言って抱きしめる良樹の温もりに、またしても泣きそうになっていた。
「で?そこのおバカさんは何か言わないといけないことがありそうだけど?」
「はい…ごもっともでございます…」
馬鹿でかいリビングに通され、ユウリ持参のカモミールティーをご馳走になりながら、俺は身を小さく小さく縮こまらせている。
「まあ、奏だからね?なんでもない時には来るけど、大事な時こそ来ないってのは充分にわかってたけど?でもさ、今回のはさすがにないよね?」
良樹は本気で怒ると、くどくどとしつこく説教をするタイプだ。
故に今も目を吊り上げながら、事の問題点を丁寧に説明しているわけであるのだが、今回ばかりは頭が上がらないと俺はただただ、平伏する。
「まあまあ、良樹さん。奏も大分、反省しているみたいだから、そこら辺にしてあげて?」
「…まあ、ユウリさんがそう言うなら仕方ない」
…全く、イケメンに弱いんだから。
「で?しばらくのホテル暮らしはいかがでしたか?」
前回の出張で頂いたという高級そうなクッキーを片手に、良樹が問いかける。
やはりただでは見逃してくれないか、まあそれが良樹の良いところだ。
だからこそ、申し訳なさが勝つ。
あの日、ユウリが作ってくれた病人用のアクアパッツァを食べ、一晩で熱も下がった俺は、いかにして実は頑固なユウリを店に帰らせるか、真剣に悩んでいた。
というのは、ユウリは懐に入れた人にはとことん過保護っぷりを発揮するからだ。
「奏がここを出るって言うまで帰らないよ?」
「おい、ユウリ…」
「本当はうちに来てって言いたいけど…奏の性格的にそれはまだ無理そうだから、良樹さんに助けてもらおう?」
何故、ユウリが良樹の名前を。思わずまた、妙な嫉妬心が顔を出しそうになるが、同じ過ちは繰り返したくはない。
2
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
消えることのない残像
万里
BL
最愛の兄・大貴の結婚式。高校生の志貴は、兄への想いが「家族愛」ではなく「恋」であったと、失恋と同時に自覚する。血の繋がりという境界線、そして「弟」という役割に縛られ、志貴は想いを封印して祝福の仮面を被る。
しかし数年後、大貴の息子が成長し、かつての兄と瓜二つの姿となったとき、止まっていた志貴の時間は歪な形で動き出す。
志貴(しき):兄・大貴に長年片思いしているが、告げることなく距離を置いていた。
大貴(だいき):志貴の兄。10歳年上。既婚者で律樹の父。無自覚に人を惹きつける性格。志貴の想いには気づいていない。
律樹(りつき):大貴の息子。明るく素直だが、志貴に対して複雑な感情を抱く。
窓のない部屋の、陽だまりみたいな君
MisakiNonagase
BL
都心の高層ビル、その「内臓」とも言える地下一階のメール室。
そこで働く山﨑智之は、目立たず、期待されず、淡々と郵便物を捌く「透明人間」のような毎日を愛していた。自分は低スペックで、華やかな地上には居場所がない。そう、諦めていた。
そんな彼の静寂を破ったのは、二十二階の住人、若きエース・風巻隼人だった。
完璧なルックス、圧倒的な成果、羨望の眼差しを一身に浴びる彼が、なぜか地下のメール室に足繁く通い始める。
「五分だけ、ここにいさせてくれないか」
一通の郵便物から始まった、五分間だけの秘密の共有。
次第に剥き出しになっていく隼人の孤独と、それを無自覚に包み込んでしまう智之の温度。
住む世界が違う二人が、窓のない部屋で見つけたのは、名前のつかない「救済」だった。
エスポワールに行かないで
茉莉花 香乃
BL
あの人が好きだった。でも、俺は自分を守るためにあの人から離れた。でも、会いたい。
そんな俺に好意を寄せてくれる人が現れた。
「エスポワールで会いましょう」のスピンオフです。和希のお話になります。
ハッピーエンド
他サイトにも公開しています
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21)
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる