多分、愛じゃない

ゆきの(リンドウ)

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忘れていた恋の記憶

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 見慣れた一軒家のインターホンを恐る恐る押す。

「大丈夫だよ、奏。良樹さんならわかってくれる」

「そう…だといいけど」

 隣に立つユウリの言葉が、ヘナヘナになった心を奮い立たせてくれるようだ。

 バタバタと外に立っていても走る音が聞こえたと思えば、良樹が勢いよく飛び出してきた。

「バカ奏!来るのが遅いっつーの!」

 そう言って抱きしめる良樹の温もりに、またしても泣きそうになっていた。

「で?そこのおバカさんは何か言わないといけないことがありそうだけど?」

「はい…ごもっともでございます…」

 馬鹿でかいリビングに通され、ユウリ持参のカモミールティーをご馳走になりながら、俺は身を小さく小さく縮こまらせている。

「まあ、奏だからね?なんでもない時には来るけど、大事な時こそ来ないってのは充分にわかってたけど?でもさ、今回のはさすがにないよね?」

 良樹は本気で怒ると、くどくどとしつこく説教をするタイプだ。

 故に今も目を吊り上げながら、事の問題点を丁寧に説明しているわけであるのだが、今回ばかりは頭が上がらないと俺はただただ、平伏する。

「まあまあ、良樹さん。奏も大分、反省しているみたいだから、そこら辺にしてあげて?」

「…まあ、ユウリさんがそう言うなら仕方ない」

 …全く、イケメンに弱いんだから。

「で?しばらくのホテル暮らしはいかがでしたか?」

 前回の出張で頂いたという高級そうなクッキーを片手に、良樹が問いかける。

 やはりただでは見逃してくれないか、まあそれが良樹の良いところだ。

 だからこそ、申し訳なさが勝つ。

 あの日、ユウリが作ってくれた病人用のアクアパッツァを食べ、一晩で熱も下がった俺は、いかにして実は頑固なユウリを店に帰らせるか、真剣に悩んでいた。

 というのは、ユウリは懐に入れた人にはとことん過保護っぷりを発揮するからだ。

「奏がここを出るって言うまで帰らないよ?」

「おい、ユウリ…」

「本当はうちに来てって言いたいけど…奏の性格的にそれはまだ無理そうだから、良樹さんに助けてもらおう?」

 何故、ユウリが良樹の名前を。思わずまた、妙な嫉妬心が顔を出しそうになるが、同じ過ちは繰り返したくはない。
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