多分、愛じゃない

リンドウ(友乃)

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忘れていた恋の記憶

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「良樹さんも心配してたよ?奏から連絡ないって」

しかし結局、その一言に甘えるようにここに来てしまったのだから、実は甘えたいと心の奥底で思っていたのかもしれない。

「…まあ、それなりに?」

良樹の追求から逃れようとありきたりな言葉で返すと、「嘘つけ、このバカ奏!」と愛ある罵声を浴びせられた。

「ユウリさんから聞いて知ってんの!奏、お前メシもちゃんと食わないで部屋は荒れ放題だったんだって?」

「そ、れは、その…」

「…それに、大変だったんだろ?いろいろ」

…ユウリが言っていたのか。

じろりと横目で睨むが、ヘラヘラと笑いながら謝るだけで少しも悪びれた様子はない。

だから嫌だったんだ、良樹に言うのは。

良樹という男はチャラチャラとした見た目に反してかなり情に熱いのだ。

以前もバーで知り合ってから克巳と付き合うに至るまで、フラフラとバーにいる男と適当に遊んでいるとこっぴどく叱られたことがある。

「奏はもっと自分を大事にするんだよ」

鬼のような形相で叱っていたくせに、いつの間にか良樹の方が泣きそうな顔でそう言ってくれたんだ。

「ごめん、良樹。心配、かけたよな」

「…当たり前だろ?俺たち、友達なんだから」

…また、あの顔にさせてしまった。

あと数回瞬きすれば零れ落ちてしまいそうな目で俺を見る良樹に、多分俺も釣られていた。

「ごめんな、良樹。ユウリに無理させたの俺だから、許してやって」

ザーッと水道水が流れる音に混じってそう言いながら、馬鹿でかいソファにちょうどよく収まったユウリを見る。

あれから、我慢の限界の如く滝のように涙を流す俺たちの傍ら、和食を作ってくれたユウリはすっかり眠りの世界へと旅立っていた。

「いいよ、ユウリさんだもん。それに最近、心配事のせいで上手く眠れてなかったみたいだし」

「…それってまさか」

「そのまさか。奏、君だよ」

思わず、これまたデカい皿をうっかりシンクに落とすところだった。

「もう気付いてるんだよね?ユウリさんの気持ち」

そしてついに、デカい皿が手から滑り落ちてしまった。

「あっぶな。ユウリさんが起きちゃうだろ?」

「ナイスキャッチ、サンキュー」
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